白がゆを炊いて拇指を浮かせてみる
台所が低いのでいつも裸足
捨てたはずの自転車が戻ってきた
10月だというのに
うちではまだクーラーをつけている
昔ながらの中華そばを茹でる。泡にさそわれて踊り狂うタピオカを追いかけまわす竹製の菜箸が折れる。急に振りかえると耳茸が落っこちそうで、母は言うのだった。
秋桜か尾花かまよったが
白いコスモスを折って
お萩と一緒に供えた
いまにも津波が襲ってきそうな朝方
碧い牡丹の刺青をした毒雲が太陽を叱っている
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20090930_189_3824p
>いまにも津波が襲ってきそうな朝方
>碧い牡丹の刺青をした毒雲が太陽を叱っている
道路に置かれた、ひとつのひし形のライン
ひとつの家庭の灯に照らされて―
猫が目を光らせながらそっと
鼻を擦り寄せても
身じろぎもしない
私はひし形の意味を知らない
白線の内側にお入りになる私を
ひし形は受け入れるだろうか
私はそっと
足を差し伸べ
白線の内側へ―
ひとつの家庭の灯と、
照らされないもうひとつのひし形へと目をやった
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20091002_260_3838p
>(内側ってどっちなんだろうか)
>内側志向の蛾
>(内側ってどっちなんだろうか)
>ひとつの家庭の灯に照らされて―
(終わる世界、)
(青い鳥が空へと流れた。)
ようすいに集まった子供は暗くなるまえに家に帰る
こころのかたち、人のかたち、
雪を知らないアマリリスを神さまと見間違えたと知らずに何人かは
海のなかに沈んでしまう
嘘と沈黙、
/のなかで
黒い雲から祈りの雨が降って
星の海で漂流するわたしの目をあなたが食べてしまえば、
鳴らない、電話、
/に、わたしは祈る
あなたを見つけなければ百の名前は意味を喪ってしまうのだけど
わたしはただもらうばかりで
月の光がいまも
みえない、
子供たち、
沈んでしまった子供たちは知っていた、
見間違えた神さまを追いかけていたことを
わたし、
忘れてはならない
アマリリスは沈んでゆく子供に言葉を渡していたことを、
夜の霧で見えなくなった神さまのことを、
あなた、
終わりを願うのをやめてください
最果ての空に雪が降る、
ひかりは
夜にあかいあかいアマリリスを視た
太陽の欠片、
死に至る病、そして、
あなたは
星に生まれた子供を知っていますか
わたし、
空が死んでしまった悲しみから
あたらしい誕生を拒絶して落ちてゆく、
わたしは時計の針を進めたいので
ちくたく/ちくたく、
誰かが遠くで沈んでくのをみていた
それは神さまではなかったらいいねと、
子供たち、
私の願っていたまぼろしの通信をする
さよなら/またね/ばいばい、
いくつもの夜を経てもあたらしい朝は
やってこない、
(動かなくなった子供は海のなかで
創りだそうとする
新たな言語を、
消えてゆく時は上昇する水位に怯えて逃げた大人たちへ、
Air、
太陽が見えなくなってから咲いたアマリリスが忘れられない
あなたは永遠ばかりさがしている、
静止した闇の中で、
子供たちは流れるひかりを飲もうとしている自分に気付く
堆積する負の感情に
ひかりをうしなったあの星の名前を、
見知らぬ、天井、
/を眺めては思う
みんなみんな忘れてしまったと、
溺れてしまう子供たちもやがて何も遺さず消えてしまうのだけど
あなたもいつかは沈んでゆくものだと知ってるわたしは、
せめて、人間らしく、
/と願う。)
マグマダイバー、
奇跡の価値は、
夏に降る雪のなかで音もなく育っている
追いかけてきていた時間の終わりに
あなたが眠り続けてた理由を問う
最後のシ者、
生きているわたしたちの言語の終わり
わたしは落ちる
青い鳥と離れ
星の海へと、
*
「つよいかぜのうしろでうまれたちいさなあわがいます。
あのこはけさそらへとのぼっていくゆめをみたそうです。」
(きえていくあわをとおくにみながらのぼってゆく。)
生きているあいだにどうかこのせかいを崩して下さい
少女は名前を喪ったあと人形の背中に凭れながら呟いた
少女はこれから終わってしまったせかいいちめんに
あとがきを書かなくてはならない
僕はきっと星のかずを数えながら自分の名前を忘れてしまうまで
此処にいるのだろう
音のないせかいに光がひろがっていく夢を見たのだけど
すでに存在を失った何ものかの声がきらきら光っていた
(陽のない泉に流れているあおいろの名前をした誰かさん、
あなたは生きるという行為を何よりも嫌っていますね。
少女はとても元気ですよ。
せかいがなくなるまであの子はあとがきを書きますから、
双子のいなくなった双子座の宮で眠っていてください。
目を覚ますまでにはきっと明日をむかえていますから。)
ひかりがない
いつの間にか雨が忘れていった光が消えていた
僕が首からぶらさげていたあの子の名前もなくなって
またひとつせかいの足音がとおくなってしまった
人形の右足は砂にさらわれて暗いところに消えてしう
時計台に立ったかぜが三度目のあくびをするのを待って
時間どおりにはじめる
約束されたせかいの結末を
下から上へ
喉から唇へ
親から子へ
あの子の終わりを決める為の合図を僕は待っている
ちいさなあわは露の降りかかった小さな木々の中から空へと
のぼってゆく
僕が少女の横顔をながめると
少女はせかいの夢をみていた
**
「――僕は、生まれるまえから窓のない部屋に住みたかった。
落日の骨は終わらない記号のなかに消えてしまった光の海へとかえってしまう。」
君は自分を求めない問いが何番目にあるのかを知っていたのだと思う
双子のいない双子座を光が通り過ぎて
上昇を始めた水位のなかで泳いでいた魚を
君が愛した男が見つめていたのは偽りの記憶であって
夜になるとそれが証明されてしまうから逃げなければならないと君は言っていたけれど
遠くから流れてくる記号の成分は落日の骨にちょうどあてはまり
生きていた人間たちが並んで待っているあいだは
帰れないという答えに向かって
問題を解き始める
何処からが記号で何処までがわたしなのかはわからないと
独り言を言ったあと
君は僕を拒絶した
双子のいない双子座という新しい記号のなかには水がなく
溺れている人間がいない
僕の部屋に窓がない理由を僕は知っているのだけれど
この部屋を出ていっても流れてしまわないで
君にかえってきてほしいというのは僕のわがままだろうか
/
君をうしなってから一年が経つのだけれど、僕は君を失ったのか喪ったのかまだわかっていない。当たり前という言葉がどの記号よりも大きくて、僕は何も考えずそれに甘えてしまっていたのだと思う。またがないことをわかっているのだけれど、僕は君との、またという時間を計算することをやめない。
だから教えてほしい
別れという結論に達した落日の骨が放っている光に
違和感がなかった理由を
僕は一人の夜に目を覚ましては後悔している
僕はなんだって窓のない部屋なんてものをつくってしまったのだろう
扉が開かれた時に侵入する光は窓のない部屋にすぐ散らばって
廊下では
上昇する水位に逆らいながら魚が深く深くに沈んでいる
***
ひとつのメルヒェンが世界を往復するあいだに
路地裏の女はひらがなで大きく書かれた
しなないという文字を
街の中心地へと押し出そうとしている
(光の海で星と泳ぐ少女の物語も日が暮れる頃には薄れていく
六月に生まれた少女は冷たいという感情を
知らないまま大人になるのだろう
毎日僕は誰かに送る最後の言葉をさがしているのだけれど)
一言目にはしなないと言ってください
路地裏の女は目を伏せて言った
仕組みなんて誰も知らないと続けたあと彼女は祈りを捧げた
まっすぐに切り取られた世界の上では少女の種子が芽を出している
ひかりがきえる
ろうそくのひがきえるとみんな
しんでしまう
まるでえいがみたいだとおもいながらぼくは
しにんのやまからあるきだしてかみさまのみきにもたれかかる
ろめんをはしるでんしゃをささえるしょうじょといっしょに
ひをけさないようにおわりをみとどけましょう
一人ですか? 此処にいるのは僕一人だけなのですか?
廊下で目を覚ました僕は世界の神さまに訊いたのだけれど
しがもう過ぎ去ってしまっていたことを僕はすでに知っていた
またがもうないことも僕はすでに知っていた
(酷く眠くなってきた
六錠ほどの睡眠薬を酒で飲んだ僕は良い気分になって
しさくを中断することに決めた
まるで子供みたいに少女に抱きしめられて僕は少しだけ眠る)
これで終わりだよ
風が白く見えるところ
世界という負の堆積の崩壊が始まる
通りに雨は降りしきり
終わりの終わりのそのまた終わり
そして僕はゼロになる
終わりをむかえる
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20091001_201_3830p
>凪葉さん。
>サキエル
>mさん
>だいちゃん。
>イモコさん
>サキエル
壁の裏側にいます
私は
いつもその壁の裏側にいるのです
あなたが生まれた時
片眼をひらいた時
まちがって 立ちあがった時
歩きはじめた時
戸口から薄い光が
さしていたあの時
夏の午後
小暗い台所の
こぼれた油の中で しずかに
蟻が死んでいた時
誰かが叫んだ時 血の流れた後に
女がやって来た時
みぞれの日
子供の泣きじゃくったその夜
ありふれた翌朝
皿が割れた時 ふたたび みたび
皿が割れた時 低く
咳のひびいていた週末
誰もいなくなった時 からっぽの部屋でラジオが
鳴りつづけていた時
途切れなかった時
十二月
あなたがまだそこにいて
寝床が軋んだ時
しばらく軋んでいて
やがて
もう誰の息もそこから
聞こえなくなった時
いつも私はその壁の裏側にいました
そしてもちろん 今も
ただひとつ これまでと違って
これからはあなたのいるそちらが
裏側なのですけれど
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20091002_225_3832p
>あなたが生まれた時
>片眼をひらいた時
>まちがって 立ちあがった時
>歩きはじめた時
>戸口から薄い光が
>さしていたあの時
>夏の午後
>小暗い台所の
>こぼれた油の中で しずかに
>蟻が死んでいた時
>あなたが生まれた時
>片眼をひらいた時
>まちがって 立ちあがった時
>歩きはじめた時
>みぞれの日
>子供の泣きじゃくったその夜
>ありふれた翌朝
>皿が割れた時 ふたたび みたび
>皿が割れた時 低く
>咳のひびいていた週末
>ただひとつ これまでと違って
>これからはあなたのいるそちらが
>裏側なのですけれど
>小難しい現代アートでも目指すかのような能動的に読み込まなければ意味も分からない詩ばかりの中で、
>端的いうと、もうフレーズを羅列しているに過ぎないというこの一点に起因するもので、
雨の水滴が髪の毛先から落ちる
雨宿りしに入った橋の下
自動車の行き交う音を聴きながら
髪の毛の水滴はまだぽたぽたと一定の間隔を保って落ちている
雨はきっとすぐに止むだろう
錆び付いた自転車のチェーンを
ペダルを反対漕ぎして回しながら
橋の下を通り抜ける風の音を聴いている
予想に反して雨は一向に止まない
そして脈拍よりも速いテンポで毛先から滴り落ちる水滴は
一向に止まない
悲しいことはないけれど俯いた頭は
このまま帰ろうかそれとも留まろうか
たった2つの選択で困っている
濡れたブレザーが体に密着して寒い
火でも誰か起こしてくれないかと思ったが そんな人は誰もいなくむしろこんな所で
火でも熾したら警察が飛んで来るだろう
もういい加減鬱陶しいので髪を掻き上げた
背後に勢い良く水飛沫が飛び
手に大量の水滴が付いた
濡れていないが埃っぽそうな草の上に座り 防水用の腕時計にちらと目をやった
家ではもう夕食の支度をしている頃で
その匂いが既に頭の中に漂っているような気さえする
雨は次第に激しくなり
携帯電話の電波も圏外になった
空気の匂いだけが
遮断された
長方形の宇宙のように濃密に充満していて
ひんやりとしている
もうこれは僕の雨宿りの域を
超えてしまっている気がした
帰るに帰れなくなった僕を
雨の隙間を縫ってきた風は
頬を優しく撫でてくれて けど寒いから
冷え切った体の中には入ってくるなとYシャツのボタンを1番上まで締め 拒んだ
ネクタイを緩め ブレザーを脱ぎ
雨の隙間を掻き分けて見入った遠くの空に浮かぶ白い雲は
僕に強い憧れを抱かせた
あの向こうの山のようになりたいと
空が暗くなって雨粒をいっそう際立たせた頃
暗闇もまた一緒に落ちてきそうな気がした
今日1日の出来事をなんとなく思い出して
早く帰ってシャワーを浴び ベッドでぐっすりと眠りたいと思った
完全に暗闇に包まれて 川が増水し
自分がその中に飲み込まれる想像をした
川面は暗闇に負けずに泥色に光っていた
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20091002_227_3834p
>雨は次第に激しくなり
>携帯電話の電波も圏外になってしまった
>もうこれは雨宿りの域を
>超えてしまっている気がした
>完全に暗闇に包まれて 川が増水してきて
>自分がその中に飲み込まれる想像をした
>川は暗闇に負けずに泥色に光っていた
>雨は次第に激しくなり
>携帯電話の電波も圏外になってしまった
>もうこれは雨宿りの域を
>超えてしまっている気がした
十七年も前の、夏祭りの夜
祖母に連れられ、幼い私は手を引かれ
祭りの光の中に溶け込んだ八歳の姉を
捜し歩いていたのだ
途中、祖母に駄々をこね
一匹の紅い金魚をすくってもらった
二人と一匹は急ぎ足で
人々の群れの中を
掻き分け進みながら
姉の名前を呼んでいた
邦恵ちゃぁん
邦恵ちゃぁん
お姉ちゃぁん
邦恵ちゃぁん
…大気の振動と地響きと共に
夜空に大輪の花が散った
私たちの声は
他の無数の声によって
掻き消された
あ、紅い金魚が跳ねている
ね。
淡い提灯、橙色の明かり
揺れている ゆら(ゆら 咲き―
―乱れる アジサイ柄の着物を着た少女の黒い髪の毛の匂いやら
ムラサキ色の口紅の
季節はずれの桜たち
あ、紅
い金魚が
口
をぱくぱくと…
人々の群れの中に
屋台の小父さんの掛け声だけが際立って
(さぁ寄ってらっしゃいいらっしゃい
(射的ー えー射的ー えらっしぇい
見渡すと皆一様に口をぱくぱくと…
ぱくぱくと…
太鼓の音が鳴る
ダンダン、ダだん。だん
―歩いていた…。私たちは、八歳になる姉を探していたのだが…。空は夜なのにまだ蒼さを残していて、私は、雲が流れていくのを眺めて立ち止まる。手を引く祖母の手の、乾いたシワの硬さを、感触を、未だに覚えている。私に何かを伝えようと喋っていたのだが…
ぱくぱくと…
ぱくぱくと…
太鼓の音が一層強まっていく
ダダン、
狐のお面をかぶった5、6人の少女たちが通り過ぎ、一斉に歓声が聞こえ、轟音と共に七色が宙に舞う
ぱぱら。パラ
(そんな金魚
(すぐに死んでしまうべ
(もっと粋の良い金魚
(今度買ってきでやっがら
遠くで、赤が明滅していた
祖母が青ざめた顔で何かを喋っていた
あいにく私には聞こえなかった
金魚が苦しそうに空を仰ぐ
夜空に向かって口をぱくぱくと…
邦恵ちゃぁん
私の手を強く引いて
人の群れを掻き分けて
祖母はどんどん歩いていった
邦恵ちゃぁん、邦恵ちゃぁん
紅い金魚は
水色の袋の中で夜空を仰いでいる
太鼓がダンダンと鳴り止まない。糸のように夜を流れ落ちていく火花。次第に蒼ざめていく空。流れぬ雲。花と散る夢。姉は、まだきっと何処かで踊っている。一心に踊っている。祭囃子が、鳴り止まない。いつまで経っても…。
邦恵ちゃぁん
邦恵ちゃぁん
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20090928_143_3820p
どこか隠れたところで
話をしているようだった
ずっと
機械仕掛けの小さな箱に
積まれた言葉は
なかなか話してくれません
僕は知り合いの
機械検定士1級の女の人に
ゼラニュウムのその箱を手渡すと
その人は
オルゴールをかけるように螺旋を回した
すると
機械仕掛けの小さな箱は
キュルルと音をたてて
夢のような光を発したのです
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20090904_613_3765p
>小さな機械仕掛けの箱が、キュウルルと夢のような光を発した。
>どこか隠れたところで
>話をしているようだった
朝がくる
今生きる日を照らしながら
遠いどこかの仄めく闇から
篝火の列びが灯されるように
それを私は今日と呼ぶ
それが晴れでも曇りでも
朝は今もどこかで
夜の間に澱した人の哀しみを
綺麗に振り払いながら
それを私は、今日と呼ぶ
*
木漏れ日の中を落ちる金色の葉が風に口づけ悦びに回る
川の流れに身をまかせる少年の鞄でおにぎりが冷えてゆく
地雷の上を鳥が渡る行き先の国で扉がバタンと閉じられる
老人の背中が真っ直ぐしていた頃の手紙が机の奥でひとり開く
色褪せながら卵を産み落とした蝶からこぼれた鱗粉の付いた蜜柑がテーブルに転がる
*
全ての物には
時が訪れる
花に雨が降る
雨が花になる
街の上に街が築かれ
静かに砂漠が拡がる
男が銃を構え
暗闇に光る瞳に狙いを定める
女が菜箸で
大根を返す
・
時は自分の心に気づいたあの日
見えない筈の真昼に流星を見る
時は君の子どもの名前を共に探した
私達を名付けた親が流したなみだの意味を気づく
あの日空に返した風船の赤も
途中どこかに落ちたとしても
時がくれば
いつかまたこの空に帰ってくるのを私は見るだろう
人にあしたがある限り
あかるい結晶になって
夜毎祖母の夢となって枕に滲む時は
予期しえぬ報せで誰かを傷つけた時は
時に自信を失い立ち尽くし
しかしその時に屈することなくまた歩みはじめる
・
時は破壊を司りながら
愛のことばを囁く
鏡の中で向きも変えず
それを私は今この瞬間に例える
まだ見ぬ笑みの子
着床する卵
星の生と死
神々が兆す
遠く拡がる
雨垂れのね
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20091002_245_3837p
>川の流れに身をまかせる少年の鞄でおにぎりが冷えてゆく
>木漏れ日の中を落ちる金色の葉が風に口づけ悦びに回る
>
>川の流れに身をまかせる少年の鞄でおにぎりが冷えてゆく
>
>地雷の上を鳥が渡る行き先の国で扉がバタンと閉じられる
>
>老人の背中が真っ直ぐしていた頃の手紙が机の奥でひとり開く
>
>色褪せながら卵を産み落とした蝶からこぼれた鱗粉の付いた蜜柑がテーブルに転がる
>
> *
>
>全ての物には
>時が訪れる
>
>花に雨が降る
>雨が花になる
>
>街の上に街が築かれ
>静かに砂漠が拡がる
>
>男が銃を構え
>暗闇に光る瞳に狙いを定める
>
>女が菜箸で
>大根を返す
>
>地雷の上を鳥が渡る行き先の国で扉がバタンと閉じられる
>それを私は、今日と呼ぶ
>時は破壊を司りながら
>愛のことばを囁く
ある年の夏
ダンボールいっぱいに
Tシャツが送られてきたことがあった
送り主の名はヘンドリック
送り状には
そう書かれていた
ヘンドリックがぼくの元を去り
5年が過ぎ去ろうとしていた
ぼくたちの別れは
あっけなくやってきた
懐かしさにぼくは
しばらくそのダンボールを
飽かずにながめていた
陽射しが強く
窓からは心地の良い風が入り
すぐに開梱する気にはなれなかった
妻がキッチンで
昼食の準備をしている
何を作っているんだい!
ぼくは少し大きな声で
彼女に訊いた
何か言った?
いや・・
いいんだ!
住所を見た
それを見たとたん
目頭に熱いものが滲んだ
彼と過ごした日々が
脳裏に次々と浮かんだ
熱いシャワーが苦手だった
ヘンドリック
彼を無理やりバスルームに押し込み
タワシでごしごし背中を流したのも
ちょうど
こんな日だった
今だから言える
ぼくは彼が好きだった
さよならヘンドリック
もう少し
きちんと彼と向き合っていれば
ヘンドリックがあんな目に遭うことも
なかっただろう
ぼくは妻が用意してくれた
サンドイッチを頬張りながら
胸の中に
ダンボールを抱え込んだ
さよならヘンドリック
君と過ごした
夏の日々よ
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20091002_230_3835p
>熱いシャワーが苦手だった
>ヘンドリック
>彼を無理やりバスルームに押し込み
>タワシでごしごし背中を流したのも
>ちょうど
>こんな日だった
>人民の人民による
>そこが帰る家なんだ
>学生演劇
>終わらせてしまいたい
>「日常/非日常」は、ぼくはあんまり意識してませんね。
>こんにちは。起承転結の起がないので、最後の結の部分がなんだかとても居心地が悪く感じます。
>大好きです
>余韻を感じました。
草花が生い茂る堤防の斜面に座り
光り輝く川の淀みを見ている
堤防の上のサイクリングロードを
無垢な女子高生達が自転車で通り過ぎる
穏やかな春
鳥や虫達が草むらの何処かで鳴き
遠くから微かに車の音が聞こえる
川の流れの音がそれらを邪魔しない程度に マイペースで流れ続けている
自然に音楽が聴きたくなり
ボリュームをいつもより高く上げて
一瞬で変わった景色に身を浸しながら
ワンリピートで好きな子が好きな曲を聴き 生暖かい風に吹かれて自分の存在を感じる
草木が揺れおじいさんタンポポの
綿毛が飛び散り
その他の花々も身を任せている
必死に生きる束の間の休息として
全く違う景色に慣れてくると
川に焦点が絞られてじっと見つめる
その流れは時の流れを感じさせない
太陽が頭上に昇ってきて
初夏のような日差しを照らし続ける
その光は暖かく
曲を聴いて浮き立った心もぽかぽかさせる
授業があったが
こんな欠席日和には
ゆっくりするのが1番だと
寝転がり両手を組んで頭を載せた
モンシロチョウが何処からともなく
やって来てぱたぱたと花々の周りを
飛んでいる
それは可愛らしい人間の赤ん坊のようにも見えた
音楽の音で音は聞こえなかったが
お腹が鳴ったので早弁をすることにした
強い風が吹いて弁当を身に隠したけど
中身は飛んでいくことはなく無事に済んだ
ここから見渡せる
街のシンボルの空色の橋が綺麗だった
その橋まで走るように桜並木が続いていて 夜のライトアップは最高に美しい
午後からはやっぱり授業に出よう
そして好きな子を誘って橋を見るんだ
ロマンチックだろうなと思いながら
のんびりと過ぎていく雲の群れを見ていた
気が付くと午後を回っていて慌てて
下に停めてあったオートバイに乗った
桜並木の日陰の中に入ると甘い香りがした
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20091008_364_3849p
エレベーター付きの新築のこの家で暮らすようになってからずっと
それ、は、4年前のカレンダーの「1日」だけを見ている
カレンダーは、手術前、10月になると毎年
妻がどこからか買ってきていたインドのもので
官舎の中で確実なステイタスを築いていた
12月8日に「赤丸」
12月30日{新聞取材」
12月31日「おせち受け取り」
自信に満ちた妻の書き込みがある
赤丸をつけた日に
自分が自分でなくなることなど
もちろん、妻は考えてもいなかったし
ぼくは、新年を妻と娘ふたりとで
「おせち」を食べてのんびり祝うつもりでいた
本棚の片隅で
妻が連れてきた鉄のきりんが
首をいっぱいにのばして
その日を丸飲みしようとしている
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20090928_126_3817p
>鉄のきりん
>それ、は、4年前のカレンダーの「1日」だけを見ている
>自信に満ちた妻の書き込みがある
八階の部屋の
鳥が事故死する
壁面に 鉄が浮き
割れた
排水塔に
水が満ちていく
正午の折被さる入道雲が
幾枚もの透明硝子に乱反射し
わらうともなく眼を細めた あなたの
心臓を街に投げたい
壁紙に私達の呼吸が刺さっている
灰になって白磁に積もる言葉は微動だにしない
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20090911_760_3781p
>凪葉さん
ああ、
熱が、咽の奥に
ひれをうねらせて
はいりこむ
自然な涙は、薄明かりの
呼吸のようで、
ねじれたドアノブを、
私に回させる
だが私には、ないのだ
誰の扉でもない
押し通す力、は
予測さえ、遮り、
眠りは、やり込められ
再びその姿を見ない
追いかけていく、
湖は、
溺れていく、彼の息
には血が溶けて、
私の顔の、
福笑いのようだ
ひとりの、私を
失ってから
初めて気付いたのだ
あなたが、
扉を開ける、直前に囁いた
陰翳の、中で
“先駆者”を
語る、
妖婆性を知れ!
オルガスムスを、
押し当てて、失神した
右腕の、喪失を
訝しい、
扉は閉じた
待っている、
湖の中から
ふやけて、右腕が
戻ってくるのを
一緒に待つ、
もう一人の男は
私の父親
を見ることが、
できなかった
新しい右腕のため
に賜った男の言葉
はオーケン石の肌触りだ
思わず、蹴飛ばして、
杖もない、盲目の、音
輪ゴムのようで、
沈まない波紋は湖の中
に奪われた右腕
を括りつける、
さかなたちが、引っ張って
サルベージした言葉たち
に私は口を添えて啜り、
薄らいだ、
(その頃、彼の骨たちは湖のほとりで、人知れず佇んでいた。)
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20090910_745_3779p
>新しい右腕のため
>に賜った男の言葉
>はオーケン石の肌触りだ
>思わず、蹴飛ばして、
>杖もない、盲目の、音
>
>輪ゴムのようで、
>沈まない波紋は湖の中
>に奪われた右腕
>を括りつける、
>さかなたちが、引っ張って
>サルベージした言葉たち
>に私は口を添えて啜り、
>薄らいだ、
>
>(その頃、彼の骨たちは湖のほとりで、人知れず佇んでいた。)
>ああ、
>熱が、咽の奥に
>ひれをうねらせて
>はいりこむ
>自然な涙は、薄明かりの
>呼吸のようで、
>ねじれたドアノブを、
>私に回させる
>陰翳の、中で
>“先駆者”を
>語る、
>妖婆性を知れ!
>
>オルガスムスを、
>押し当てて、失神した
>右腕の、喪失を
>訝しい、
>扉は閉じた
>ああ、
>熱が、咽の奥に
>ひれをうねらせて
>はいりこむ
孕まない
二重に孕みはしない朝
の秘匿され/た、鈍色の広がり
の向こう岸で
あまりに
荒れ果てた赤の地表を
産まれたての彫刻刀
のボロボロッ
と転がり
湿った
市場から
密せられた 潜航
の いま
(始まる!
「あたらしい跫音を
背後から踏み、砕いて。
*
(噴流
の河口)
灰色の瞳
の静か、に
横たわり わたしたちの生を
宥めている
///混交。
してもいいですか
(一昨日の小夏と背面の危機を!
*
折り、曲げたのです。
その先端で
斜め
に露光する雷魚
の、(千の!)
重ねられた
少年の足指
は決して 倒立することはなく
対岸の
薄い、
緑の陽光のなか
一度も死んだことのない(という
黒青の馬たち
と並走している
草上の
誓われた
途切れがちに
最奥の
突/風。
ていねいに
鎮まった
地表の
捲れて
漏れだした
赤、に
隣りあった
千の、雷魚よ
明るい両の眼 その
数を 想うというの/
なら!
*
白い、泡の降り注ぎ
計量もされた
わたしたち、の
欠けた尺骨をひとつひとつ
掻き集め
ただひたすらに
食んでいくのか、おまえは!
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20090914_848_3790p
>言葉の意味とイメージの断絶と飛躍。それでも言葉を追っていくと、おもしろさもあるので、わたし的には良かったりする。
>それになんだか、この作品、DNAさんでなくてもいいんじゃないかって、思ったりもする。
園芸部でも
ないわたくしが
やつれたビニルホース
でぶっぱなした冷水を
ひと月おくれて
のみ干し
てゆく
あの、向日葵が
憎い
水中の庭園では
再会だけを禁忌とする
なつかしい授業
がハジマリ ときには、
甘い小夏の夕暮れ
哀しい生徒の
匂いが裁かれ
「すべての氷花は今日、
いっせいに枯れました」
黒く、濡れた
路面に伸びる
あの、向日葵の影が
憎い
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20091002_226_3833p
>「憎い」という言葉が女の人のされる化粧のようなものに見えて、蠱惑的でもある。
あなたの手に 握られたときから
捨てられると いう契約に
わたしは サインしていた
あなたの手に取られ
ライターで 火が触わる
熱い、という痛みが走り
吸われる、という甘い裏切りに
わたしは 短くなっていく
毒の煙を 吐き出し
ささやかな毒を
あなたの体に 残し
裏切りが 繰り返されるほど
わたしは 呪っている
あなたの体が 毒に犯され
蝕まれていくことを
悪魔になって
天使のように 微笑んで
そうして わたしは捨てられていく
小さな皿に あるいは人ゴミの雑踏で
くちゃくちゃに 壊され
何もなかったように
雑音だらけの言葉の響く
コンクリートで 乾燥した足跡に
踏みにじられていても
また あなたの前に
有害物として 生まれてしまうのだろうか
捨てられている わたしに気づかず
あらゆる人に蹴られていく 吸殻は
塵か埃になって 舞いながら
息を凝らして あなたを睨んでいる
裏切ることが愛だった
そんな呪いを 唱えながら
あなたと心中しようと
復讐を企てていた わたしは
ハルマゲドンで負傷した 悪魔と同じ
報われない犯罪者でしかなかったね
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20091009_383_3852p
>また あなたの前に
>有害物として 生まれてしまうのだろうか
朝に、草の上に置かれた光る露を食み“いってきます”の言葉もなくあの子は出かける。
どこへでかけるのかは、誰にも解らない。
“いってきます” の言葉を置いていかないのは、それを受け取る人がいないことをあの子は知っているからなのかそれとも、置いていく言葉を知らないのか。
知っていても 知らなくても 置けば露に溶けて昼になるのも待たずに空へきえていってしまうのだから、それならいっそ何も置いていかないほうがいい。
あの子はいつも自分が持って歩けるもの以外、何も持たなかった。
振り還る思い出も持たなかった。あれらはとても重過ぎて。
言葉は、大事に持って隠していたのか、それとももとより持っていなかったのか。
それはあの子も解っていなかったんじゃないだろうか。
ある時 あの子はどこから拾ってきたのかぽそりと“ただいま”と言った。
そしてはっとしたように口を押さえ、静かに頬を光らせた。これ以上なくおそい流れ星、朝に食べた露よりも塩気を含んだ光が口に触れてやっと涙が流れていることに気付いたのか、涙を止めた。
“ただいま”は空気に溶けて、すぐに発したのかどうか解らなくなってしまった。
あの子も解らなくなったのだろう。また、言おうとして唇を少し開けてまたすぐにつぐんだ。
また、わからなくなるから。
あの子はそれを知っていたのに、知っていたのに。
あぁ、かわいそうに。
私には、、、
どうすることもできない。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20091010_401_3857p
>“いってきます”
>どこへでかけるのかは、誰にも解らない。
>“いってきます” の言葉を置いていかないのは、それを受け取る人がいないことをあの子は知っているからなのかそれとも、置いていく言葉を知らないのか。
>知っていても 知らなくても 置けば露に溶けて昼になるのも待たずに空へきえていってしまうのだから、それならいっそ何も置いていかないほうがいい。
>どこへでかけるのかは、誰にも解らない。
>“いってきます”の言葉もなくあの子は出かける。
>あぁ、かわいそうに。
>私には、、、
>どうすることもできない。
>ある時 あの子はどこから拾ってきたのかぽそりと“ただいま”と言った。
>そしてはっとしたように口を押さえ、静かに頬を光らせた。これ以上なくおそい流れ星、朝に食べた露よりも塩気を含んだ光が口に触れてやっと涙が流れていることに気付いたのか、涙を止めた。
>“ただいま”は空気に溶けて、すぐに発したのかどうか解らなくなってしまった。
>あの子も解らなくなったのだろう。また、言おうとして唇を少し開けてまたすぐにつぐんだ。
>振り還る思い出も持たなかった。あれらはとても重過ぎて。
一筆書きにした昨日に雨粒が積もり滲んだインクが進路を変えた。念入りに摺った墨で今朝を描いたのに雨が側溝に流してなくなった。
カットしすぎた眉毛をペンシルで増やし、目の輪郭をアイライナーで縁取る7時、衛星放送の足の裏、ロンドンの日本人が渋谷の今朝の様子をうかがう。大きな風は自転車少年よりもゆっくりとしか進めないと、道路交通情報センターの藤田さんが教えてくれる。首都圏のJRとそのほかの主な鉄道各線はほぼ平常どおり動いているけれど、確実に2分遅れている大雨の朝。
ランチパックをくわえたままでピアスをはめる。1個、2個、3個、4個。「新潟県の良寛牛乳」を使用したクリームのフィリング。パサつくパン生地をゆるくするミネラルウォーター。
今日を悲しまないことが悲しみなのだという禅問答、おやすみを欠かさないのに君におはようを言わない。
平坦な道を歩けることは幸い、抑揚のないことの不幸、さちあれかしと祈らない自分の人生に。
手のひらをかざせば寝息のあたる夜の闇よりも、隠匿の使命を帯びた雨雲の朝の闇が怖い顔をしている理由を探しながら進む朝の商店街で前を行く女の太すぎる脚を見た。レギンスのふくらはぎ。きれいなからだをつくる努力をするまえにきれいなこころを作りなさいという人とは、絶対的に相違しているはずの価値観、古賀政男が日本の音楽を潰えさせ、ユニクロは日本をファッション後進国へと変えてゆく。
乾燥した秋冬物の指、滑り落ちそうになる指輪を根元まで差し込んで、パスモを改札に押し当てて、
雨のホームでi-podの電源を入れる。
書き順を間違えた線路が電車を迷わせる。揺らいで揺らいで酔うように。窓に無数の水滴、「猛烈な」台風がそこまで来てると平井さんが言った。何年か前「史上最大の台風が近づいています」と言っていた平井さんが。史上最大の台風は来なかった。だから猛烈な台風もきっと来ない。
わたしは習ったとおりに鋒先をまっすぐにし、ビルの壁に向かって思い切り、下手くそな楷書を書いて逮捕される。
落ちたi-podからTRFが流れていたら、誰かはきっと嗤う。
落ちたパスモが無記名なら、誰かはきっと使う。
寒い夜は熱いお風呂に入る
髪の毛を乾かしているうちにお湯の熱さを忘れる
日々の段差は中厚の紙1枚分くらいしかなく
喜びも悲しみも幾年月もは続かない
もしも覚えているなら
殺すしかない煮こごり
忘れかけているから
死んだらいいのにねっていうだけで
とどまっている峰打ち
史上最強の台風が来なかったのでわたしたちは煮こごりにすぎない鱶鰭を食べ熱すぎるお風呂に入った。秋の夜は一筆書きのように無理やりな潔さを誇っていた。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20091009_388_3854p
>はなびさん
魚の骨を父のように綺麗に取りたいと思っていた。
親指と人差し指と中指。
その箸使いで半分にぱっくりと割れる、脂ののった白い身。
乳色の光の下、私の手は油と黒く割れた尾で汚れ、母が隣りで汚くほぐしていた。
持ち方が不器用で、中指で上の箸を動かしていた。
カチャンカチャンと箸が交じる。
父はそれを見ながら、お前の頃にはグーで持っていたと話した。
中指と親指で割れた尾を砕いた。べとついたそれで髪を梳かした。
鈴虫の耳鳴り、車の過ぎる音、酔っ払いの鼻歌、隣りの部屋で母が泣いた。
パイナップルの缶を開ける。
グコ、グコ、グコ。
シロップをすする。
「ねえ怒る?怒る?」
甘い匂い。
指を舐めたら苦かった。
いつか父の骨を抜ければと思う。
黄色の輪を掴む。白い線がないのが好ましい。
噛むと繊維が歯に詰まる。
中指が長いのは父親ゆずりだろうか。
頭が痒い。
枕元に羽虫が付いていた。
夢を見た。空中をさまよって紐を引く。
壁に目をやると3時を過ぎていた。
知らないふりをしていたが、
股が濡れている。
甘い匂い。
母の匂い。
頬が熱い。
指をしゃぶる。
先程から母が味噌汁を作っている。
出汁は取れているだろうか。
昨日捻った煮干しの頭を思い出す。
遠くで雷鳴。近くで天気予報。枯れた朝顔の絡まる簾越し。
私は箸をグーで持ち、背骨の横に溝を入れた。
かふぅ
あさりの開く音がした。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20090921_985_3807p
>蛾兆ボルカさん
>右肩さん
>べとついたそれで髪を梳かした。
>遠くで雷鳴。近くで天気予報。
>甘い匂い。
>母の匂い。
>頬が熱い。
>指をしゃぶる。