無情の月。灰色の狼が吠える。
夜は誰のためにあるのか、誰のためにあるのかと。
ひび割れた夜の亀裂から、新しい朝の足音が忍び寄り、
じゅくじゅくと崩れてゆくトマトみたいに、生物の輪郭は曖昧になる。
おやすみ、とおはよう、のはざまで。
断崖絶壁。背を向けて、背で語る。
語り得ぬ言葉を咀嚼する、咀嚼する、咀嚼する、
狼の抜けた毛はさらさら、と銀の砂に変わり、歩く者を反射する道すじとなる。
さ、らさら
さらさ、ら
さら、らさ
地球の中心にある鏡はしずかに、しずかに、色んな顔を知っている
さ、らさら
さらさ、ら
さら、らさ
あらゆる者の頭上に、しずかに、しずかに、無声の種が降り注がれる
無情の月。灰色の狼が吠える。
夜は誰のためにあるのか、誰のためにあるのかと。
爛れた真夜中の穴から、新しい未来の光が射し込み、
くるくると剥かれてゆく果実みたいに、地球のやわらかな襞も引きはがされる。
おやすみ、とおはよう、のはざまで。
音にならない詩(うた)が聴こえてくる
>じゅくじゅくと崩れてゆくトマトみたいに、
>夜は誰のためにあるのか
>じゅくじゅくと崩れてゆくトマトみたいに
>夜は誰のためにあるのか
振り向けば死ぬだろう
鏡の
奥の奥から
山と溢れる 壁
壁の
木乃伊たちは
眉尻を上げている
手当たり次第
女を広げマントに羽織り
十一階を突き破り
勢い駆け上がる
おおブランコ
白いブランコ
おまえは今日も遠すぎる
やや遅れて
大地へ帰る垂直のトルソー
降りくだる冬は
青苦く
アーモンドしている
職場で世話になってる
先輩の家行ったら
やすっぽいCDラックがどかーんとあって
ローリング・ストーンズのCDがたくさん並べられてんやけど
ローリング・ストーンズ好きなんすかって先輩に訊いたら
そや、好きや言われて、よっしゃ、お勧めの曲かけたるわって
よう知らん曲聴かされた
ま、ローリング・ストーンズの曲そんなに知らんから
よう知らんのはおれだけかもしれんけど
そないかっこええ曲でもなかったから
どや、ブルージーやろって言われても
はあ、そうっすねって生返事して
そのおれのよう知らん曲が終わった頃に
先輩のお母さんが部屋入ってきて
あんた、財布から金抜いたやろ、って先輩の頭はついた
パコーンってええ音がして
あんた、なんぼ抜いたんやって歩み寄られて
知らんがな、って先輩しらばくれてるけど、知ってる顔や
かなり居心地悪いな、おれ、やから、もいっかいローリング・ストーンズの
先輩お薦めの曲かけたら
今度は、なんやさっきと違うて
えらいええ曲に聴こえてきた
なんか心にしみってくる
あんた、その金で何買うたんやって言われても、どうせしょうもないことに使うたに
決まうてるから、先輩黙っとるわ
はよ、仕事行けやって先輩足蹴しながら
お母さん追い出して
な、ええ曲やろ、っておれの方振り向いて、ええ顔してんで
先輩、よう金抜くんすか、って思わず訊いたら
おう、金ないと欲しいもん手にはいらんやろって
ああ、ええ曲ですね、この曲なんていうタイトルですか
知らんねん、英語はさっぱりや
でもええ曲やろって
それから、化粧したお母さんがまた部屋入ってきて
あんた、私の結婚指輪どこやったんやって
まさか、先輩って思ったけど
先輩、あっさりと、あれ、売ってもうた
ほんで、それから
よう知らんけど、なんやかっこええローリング・ストーンズの曲を聴きながら
知らん間に、おれ、寝転がってて
隣で先輩、ちっこい寝息立てて寝てんねんけど
起こしたらかわいそうやな
先輩、このCD借りていくで言うて、EJECTボタン押して
CD生でポケットに入れて
部屋出た
ら、お母さんが、ちょうど仕事から帰ってきよって
お邪魔しました、って挨拶したら
めちゃくちゃええ笑顔で、また遊びに来たってな
言われて
なんや知らんけど、おれ、めっちゃ涙出たし
外出たら、とっくに朝で
しょんべんくさい街抜けて、家帰った
月曜日の足取りに シーツに残った日曜日の残り香
四つ切りの太陽に八月の蜜をちょっと垂らして
誰もがネクタイを締めて歩き出す頃
柔らかいほこりの中クロールする
並木道を歩いていくイメージから
ずいぶん遠いところで眠ってた
鉢植えのサボテンに小さな花が咲いたから
ホットケーキミックスに悲しいニュースは聞かせたくないね
ミルクの柔らかさと指先が舐めた甘さ
フライパンの上で陽炎が踊ってる
新聞の折り目から苦い味が立ち昇って
飛行機が落ちるってみんな囁いてた
明日は晴れるって聞いたのに 誰も信じないんだね
立ち上がる気泡の数だけ悲しいニュースはあるって
フライ返しでひっくりかえしたら
香ばしい世界に八月の蜜を
四つ切りの幸せに八月の蜜を垂らして
三枚重ねの朝日にナイフを入れて齧ろう
オレンジジュースにカンパリ垂らして
朝のニュースさえ愛せる八月のホットケーキ
さよならを手首に巻いて歩くひとの群れが
街並みに鳥の声を響かせて
硝子窓はもう眠気を忘れてしまった
蝉はまだ眠ってるのに 蝉はまだ眠ってるよ
まばたきするくらい長い季節に
柔らかな喧騒が世界を愛しくさせた
焼きたてのホットケーキ 四つ切の太陽に八月を添えて
聞こえる寝息くらい街並みを優しくさせた
(白い服の犬が、)(僕をおとしめて、)(死んだ。)
(何もないことになれて、)(何も求めずに、)(死んだ。)
(日の光が、)(緑の葉を照らして、)(死を悲しんでいた。)
(僕の朝は、)(遮光カーテンの隙間からの、)(光で始まる。)
(トーストの味は、)(良くわからなくて、)(ジャムの甘さだけが残る。)
(母の包丁の音と、)(父の階段を下りる音が、)(一番の喜びだ。)
(求めることをやめずに、)(意志を貫けずに、)(生きていける。)
(僕は声が、)(出ないことを、)(望んでいる。)
(言葉なんて、)(必要がなくて、)(核兵器のようなものだ。)
(沈黙だけの、)(いつものような朝に、)(戻ればいいのに。)
(いつも不安を隠したくて、)(下を向いて、)(歩いてしまう。)
(無理をしててでも、)(前を向いて、)(歩きたい。)
(明るい夜は、)(やって来ることが、)(できるのだろうか。)
(僕の不安を、)(取り除いて、)(やってきて夜。)
(今日もまた、)(階段と包丁が、)(危うい。)
特別になりたい、でも目立つのは嫌だ
同じクラスのあの子
少し太って、少し頭が悪いから
いつも虐められている
隣のクラスのあの子
少し暗くて、少し運動ができないから
いつも虐められている
隣のクラスのあの子
少し頭が良くて、少し運動ができるから
いつも虐められている
それをただ見ている僕
虐めはいけないと思うけれど
止めると僕が虐められるから
それに、みんな見ているから
見ていれば虐めないですむし
虐められないですむ
だから、見ている
特別になりたい、でも目立つのは嫌だ
>今決めたあたしは今日は世界一強く優しく楽しく自由
>傷ついたほうが偉いと思っている人はあっちへ行ってください
>つまり「壁に突き当たった」詩ではなく「突き当たった壁を越える」詩を、ということでしょうか
>虐めはいけないと思うけれど
>止めると僕が虐められるから
>それに、みんな見ているから
>見ていれば虐めないですむし
>虐められないですむ
>だから、見ている
愁い そうやってすべてを愁いの中へ還していく。そうすることに、意味があるかどうかはあえて問わない。問うことはつまり、私をまた対立間構造の中へ意識的に放り込むことになるだけだからである。愁いの中に、ずぶずぶとはまって行く自分を見かねた自分が何かを言おうとはするが、あえてその口を閉ざさせよう。どこかへ行き、何かを見る、聴く、感覚器官のすべてが、愁い感じ取るのであるならば、感覚器官のすべてを閉ざしてしまいたいとも思う。しかし、閉ざすことそのものは自分自身の愁いとなる。前者の他者への愁いではなく。自分の問題としての愁い。汗が皮膚の上を伝って、自分に落ちるその現象それ自体が、愁いの原因となる。幾戦もの死体の上に 今 というものがあるとしても、私は私の肉体からは出ることができず、ただただ肉体という殻の中でもがくのみであって、肉体すらも超越し、近代の科学というものを否定する 真正なる自己 とやらを私は信じることも、肯定することもできずに、ただ漠然と、唯識のみを信じるに値するとして、荒廃した大地を踏みしめ、日も沈まぬ地平線へと歩みを進める。その一歩一歩が、私を踏み潰しながら、泣き叫ぶ余地などは到底与えずに、絶え間なく永続的に続くのみであって、世界という脆弱な形骸化した文脈を用いて自らを肯定せんとするその他の者達を見つめながら、私の皮膚は粒子の細かい砂と反発しあいながら、ただただ冴えない明日とやらに向かっていく。肉体が私を拘束して、早二十年。物質が私を見放して早三千年。そして、今は精神すらも私を見放そうとしている。私が、今こうやって語ることの多くは、阿呆であって、近代的な実証主義や、ロマン主義、などのうちには溶け込めず。私は今はもう、失われたつまらぬ言説という名の血液のみでこの空虚として穴の開いた肉体を引きずって、開けてはならぬ扉を開けようとしている。扉の向こうには、恐らく、私が望むものいや、ものではない、無記とされるものが あるともいえない それが待ち構えているともいえないあれがあるともいえのだがあるとして語るしかないあれがあるのだろう。そこには、一切の不安も葛藤も、静寂も安息も、楽も、死も、怒りも、悲しみもない。涙する赤子もいなければ、罵倒する隣人もいない、愛を振りまく聖母も、父としての神も、そして、私という私すらもそこに行くと無記とされるのみである。私は強く望む。この、愁いのを悲しみともせず、喜びともせず、そして愁いを愁いともしない崩壊と融合を。今一歩踏み出せば、そこはもう私が私でなくなる。そして、私は何も語ることもせずに、語る必要性もなく、思考することもなく、行為も行動も一切のすべてが否定され同時に肯定されそして、どちらでもなくなり言語表記を許さないあれへ。
鉄くず工場で
僕らはビックバンに台風の目を埋め込む
ボイラー労働者
まだ幼いコドモをステテコに背負い
女教祖がM字開脚する
その黄泉のつぼみへ
ハートのBボタンを16連射
星でNASAが盗撮した
ジャージ姿の宇宙人の
ハレンチでオーボーなタレこみネガを
金ゴテで焼き
最終兵器を念力で操れる
C組ののぶ子ちゃんの
ブラ姿を見たさに居残る
体操服 黄昏時の放課後
カブトガニの甲らを
やや深めにかぶり
黒電話のダイヤルに
しがない人差し指を鍛える
しろたえのエクトプラズム
ブチックが3軒できれば
銀座通りと名づけられた田舎の商店街の街で
いまものぶ子ちゃんの入れたての
ぬるいスープのバイブレーションを感じる
校庭の楡の木にみんなでのぶ子ちゃんを縛った
僕らはみんながガンダムのようにヒーローで
バッファローマンのキン消しを
国語の時間に後ろ手にまわしあった
生徒会長のまさのぶの
チヤクラを啓くような朝礼の独演
僕らは中間テストに
孕んでいく記憶をカズノコのように
次々と産み
たこ焼きのような整然とした
教室の40マスの一つ一つに
それぞれの飽和を
ピクリとも動きやしなかった
マラソン大会でいつも宇宙と交友するように
先頭を駆け抜けて行ったやすしは
今年も資生堂のアンカーだろう
彼はいまも風のスコラ哲学を両足で駆け抜ける
マンタ
どこかで何かが崩れていた
C組ののぶ子ちゃんのランドセルに入れた
僕らのバイブなたて笛は
今も怪しげな光沢を放っている
あの駅前のインベーダーゲームにためらい
そしてゲームオーバーを叫んだ
のぶおの祈祷のようなベイブな表情が
白痴を噛むような
僕らの表情のどこかで
後ろ側からヘッドロックを
今もしっかりと入れている
日本からアイルランドへ流れる
進化の動きをくいとめなければならない
自慢の前歯にレジスタンスを喰いとめ
赤信号に立ち止まるダチョウの群れの背を押し
唐突な平和への降伏を極限状態へ追いやり
JRの駅長さんが誘導する
中心への無条件降伏の朝を
バーゲンセールの前かごの利他行為を見張り
異端とみなされないための
斜め45℃体温を背に持ち
連合国側の不発弾の眠る
ジョシコーセイの体を
65歳 定年後のにわかオタクたちを
すみやかに
そしてゲンジュウに包囲せよ
>黒電話のダイヤルに
>しがない人差し指を鍛える
>しろたえのエクトプラズム
>入れたての
>ぬるいスープのバイブレーションを感じる
>生徒会長のまさのぶの
>チヤクラを啓くような朝礼の独演
>ゲームオーバーを叫んだ
>のぶおの祈祷のようなベイブな表情
>ハートのBボタンを16連射
バス停
待ち時間
蒸し暑い午後
孤島のように
連鎖を忘れた
時間感覚
僕がいま立っている
この街角
この街角にはまだ
名前がない
短パンの白人の男が
JAPAN と表紙に書かれた
分厚い本に顔をうずめながら
足早に通る
彼に聞いてみようか
どこですかここは
バスが来た
59系統
銀色のコインを2枚
運転手さんに払って乗ろう
59は赤い線で地図を走る
コンビニ 牛丼屋 ATM
NTT UFJ AMPM
59は23の交差点を過ぎた
赤 青 黄色
24番目の交差点で
信号待ちをしていたバスは
46系統
この46は何色だろう
僕はいぶかった
46には
あの白人が乗っていて
まだ JAPAN
を読みふけっていた
運転手さんがバックミラーごし
に僕をちらっとみて
言った
揺れます
つり革におつかまりください
僕はすこし腹がたった
そんなことはわかりきっているじゃないか
床では
つぶつぶみかんジュースの空缶が
ころがって
中の液体がべっとりとした
海をつくっていた
見つめていると目が回りそうになって
あわてて僕は目をそらした
すると今度は目の前に
見慣れない装置がある
赤いカマボコのような
よく見ると車内の壁や
銀の手すりのいたるところに
たくさんのカマボコが這い回っていて
僕は吐き気がした
追い詰められて僕は
カマボコを
力いっぱい叩いた
と、突然
バスの車内のあちこちに
いっせいに赤い光が点灯した
つぎとまります
つぎとまります
僕は愕然とした
運転手は
バックミラーごしに
僕を、こんどは
もっときつい顔でにらんで
それから無造作に
出口を指差した
>コンビニ 牛丼屋 ATM
>NTT UFJ AMPM
ただ君を大切にしたかった 何よりも大切だった
守りたかった 何を犠牲にしても
誰よりも愛してた
何もできなくてゴメンね
ワガママも聞いてあげる事さえできなかった
ただひたすら僕は君を愛してた
まだ幼かった俺たちは
愛という言葉を知らなかった
伝えたかったけど
ざわめいてた街 決して罪はないけれど
伝えられなかった
僕たちは二人きりになりたかっただけなんだ
大 ず こ 一
す | れ 緒
き っ か だ
だ と ら か
よ ね も ら 君に先に言われてしまった
貴方の元で咲いた薔薇 裏切り知らない白い薔薇
貴方の為に咲いた薔薇 神に愛された白い薔薇
貴方を狂わせた紅い薔薇 憎しみ覚えた白い薔薇
それでも信じた白い薔薇 貴方が自分を愛してくれている
見捨てられた白い薔薇 愛しい貴方に愛想を尽かれた
その時嘲笑う紅い薔薇 殺意覚えた白い薔薇
いつか お前を 殺してやる
紅い薔薇の下で それでも白薔薇必死に咲いていた
何時の日か貴方が再び微笑いかけてくれる、と
激しく可憐に咲き誇った白い薔薇に 貴方が気づく事もなく
忘れられた白い薔薇 覚えられた紅い薔薇
貴方のもとで咲いた白い薔薇 貴方の為に咲いた白い薔薇 怒りを知った白い薔薇
紅い薔薇に絡みついて 刺で刺し殺した 白い薔薇
「これで貴方も私だけを見てくれる 愛してくれる」
そんな願いも虚しく 貴方は私から目を背けた
予想外の事態に 地獄から紅い薔薇の嘲笑が聞こえてくる
それでも貴方を信じた白い薔薇 信じて散り逝く 白い薔薇
貴方を見ながら散った白い薔薇
はらり、はらり 流した泪は 透き通っていたのに
ひらり、ひらり 散らした花びら 濁っていて
はらり、ひらり、ふわり
飛び散って逝く声に心に命に 構うことなく
それでも
最期に 白い薔薇は 叫び続けた
「 それでも 貴方が 好きでした 」
>微笑いかけてくれる
This world is not forever...
ここには永遠の世界はない
永遠は無い、、。
何処のもない、、、。
形ある物はいつか壊れ
そこからまた何かが生まれる
生まれた物は喜びを見つけ
怒りを見つけそして最後には
灰になってゆくの、、。
心の何処かで望んでいた
永遠が何処かにあると
心の中で探していた
永遠というものを、、、。
形ある物は全て消えて
ずっと在って欲しいものが離れていくよ、、。
新しいものは哀しみを見つけ
楽しみを見つけそして最後には
無くなってゆくの、、、。
心の何処かで信じていた
永遠がいつか助けに来ると
心の何処かで言い聞かせてた
永遠がきっとあると、、、。
私はいつか永遠を創ってみせる、、、。
This world is forever...
>ここには永遠の世界はない
眠りが浅く、寝ざめの悪い私の朝。躾がなっていない私の部屋は、いつも
物が散乱している。ふと鏡台に眼をやると、昨日の朝に食べたパンケーキ
の欠片に、ぞろぞろと蟻の群れがたかっている。私は、ぼんやりと、その
様子を眺めた。
蟻の群れは一列に連なって、ラグビーボールを後方にまわすように、次か
ら次へとパンケーキの欠片を渡している。その渡す先は鏡台の隙間の中で
、その奥には、どうやら巣穴があるようだ。
私が、このような蟻の行動を、のほほんと見過ごしていたのは僅かで、物
が散乱している部屋に住み、それを許していながら、その蟻の群れに対し
て、気持ち悪さを覚えたのだ。
そう思うと、いても立っていられず、勢いよく口に空気を吹き込むと、蟻
の群れめがけ、ぶぁーっと吹きつけたのだ。ほとんどの蟻は、それによっ
て巣穴に避難したのだが、数匹は鏡台の上で踏ん張り、その後もパンケー
キの欠片を運び続けた。
私はなんだか腹だたしい気持ちになり、見せしめのため、一匹の蟻の尻を
ボールペンで潰してみた。その蟻は手足を、ばたつかせているが、もうす
でに、その場からは動ける状態ではなくなった。どうやら死ね間際、もし
くは半殺しの状態になったようだ。
すると見せしめの効果があったのか、残りの数匹は慌てて巣穴に逃げ帰っ
た。やれやれと思った次の瞬間、一匹の蟻が鏡台の隙間から勢いよく飛び
出して来た。
もしかしたら半殺しの蟻がメス蟻で、その恋人がメス蟻を助けるために、
勇猛果敢に飛び出して来たのではないか。そう思うと少し心が痛んだのと
同時に、美談だな、などと少しほくそ笑んだ。
だが事実は違った。半殺しの蟻の周りを、ニ、三周するだけで巣穴に帰っ
てしまったのだ。私は少しがっかりした。
そうだ、今、飛びしてきた蟻は衛生兵かもしれない。それならば、巣穴の
入口付近に半殺しの蟻を置いておけば、もう一度、衛生兵がやってきて、
仲間と共に負傷した蟻を救出して、巣穴に運んで行くはずだ。私はボール
ペンで半殺しの蟻を入口付近に押しやった。さて、どうなるだろう。
私は少し鏡台から遠ざかることにした。しばらく経つと衛生兵が飛び出し
て来たのだが、入口付近の半殺しの蟻を巣穴に運ぶ様子はない。それどこ
ろか、こともあろうに、再びパンケーキの欠片の方向に走りだし、その周
辺をうろうろし始めたのだ。私は知らんぷりをして、その様子を見つづけ
た。
数分後、また蟻の群れが出て来て、先ほどと同じように連なって、巣穴に
パンケーキの欠片を運びはじめた。ある意味、これが戦争の姿なのかもし
れない。鏡台に映る半殺しの蟻を、そして鏡に映し出された自分を私は虚
ろな眼で眺める。置き去りにされた蟻はどこへゆけばいいのだろう。など
と考えた数分後、私は置き去りにされた蟻を、先ほどと同じように吹き飛
ばした。そして何事もなかったかのように新しいパンケーキに手を伸ばす
。今日のは甘過ぎて美味しくなかった。
>一匹の蟻が鏡台の隙間から勢いよく飛び出して来た
>鷲頭サマは独特な世界観をお持ちのようですね。
>蟻とパンケーキの組み合わせも思いつくようであまり詩では表現されない題材
>だと思いました。
>ふと思ったのですが、この詩は実話でしょうか?
>日常の一齣を拾い上げた、そんな雰囲気がしました。
>俺の勝手な解釈なので、違っていたらごめんなさい。
>戦争について何か十分な感想がしたためられているとは思えないし、
>長々と書かれているのに文章のどこにも驚きを読者に与える所がないのではないでしょうか。
>置き去りにされた蟻はどこへゆけばいいのだろう。などと考えた数分後、
>私は置き去りにされた蟻を、先ほどと同じように吹き飛
>ばした。そして何事もなかったかのように新しいパンケーキに手を伸ばす
>ただひたすらに淡々と味気ない情景を書き記すことはこの作品のあえて選んだ戦略であろうことは解るのですが、
>やっぱ、面白みというものが欲しいですわ。
>一匹の蟻が鏡台の隙間から勢いよく飛び出して来た
>それと流れとして、蟻の一連の動きに対し、恋人だろうか?衛生兵だろうか?という連想が、
>話者の思索としてしか感じられなかったので、置いていかれました。もう少し、
>見せる動きで引っ張れれば、違和感がなくその思索を受け入れられると思う。
長雨が続いて
気持ちが濡れてしまった旅人たちが
何時までも
改札で待っている
行列はどこまでも続いていて
隣の自然保護区の動物たちまでもが
濡れはじめている
どこか遠くの空が開いてくれないかと
その向こうばかりを眺めている
駅
>濡れてはじめている
>鷲頭さん ありがとうございます。持久力がないので、長い作品はあまり得意ではないのです(笑 その分難しさもあると思いますが、詩はそこが面白いところかと。頑張ります。
>光冨郁也さん 感想ありがとうございます。心象風景というか、そういうものかも。そういうものの組み合わせで、何かを感じさせられたらいいなと思います。('05/08/21 16:27:43)
眠れない女は乾いていく
窓辺で泣いてる仔猫の前足に
シルバーリングはめた薬指に
雨が強くなる
バスルームでママが腐っていく
疲れすぎた鉄の壁に覚めていく景色
ラジオから戒厳令 こどもの頃見た冬の夜空みたいに
「ネスカフェがお送りしました」
扉の前で千切り取られた前足と
冷凍庫で分解していく薬指に
部屋の隅で誰かが泣いている
蛍光灯の紐が引き千切れた
ショートピースの缶に星が落ちていく
息を切らせた年寄り犬の匂いがする
それは神々の体臭
あるいはポータブルトイレの底で眠るあなたに
複眼のこども達が並木道を歩いていく
虫の羽根に似た透明さで
くちびるにへばりついた煙草の葉を飲み下すとき
雨が強くなる
月の傾きを数えていた掌に
このまま真っ直ぐ揺らめいていける
水銀の銛を喉元に打ち込んで 彼らは真っ直ぐ歩いてくる
二十一錠の安らぎを連れて
ラジオから伸びた指先が 脳をくすぐる痒みに
こども達は肩車を重ねて月へと伸びていく
喉元から垂れる水銀啜って
雨が強くなる
通り雨が走ってて
うたを歌う雷がいて
その嵐が止んで
天使のはしごが架かる午後
あたしは何を想うのだろう
あなたは何を想うのだろう
空回りも辛いの
どうか同じ想いなのだと 誰か教えて
いつかあなたが言ったよね
「俺とお前はずっと一緒」と
その言葉忘れないよ
忘れたら罰が当りそう
だからそのときは最高の笑顔で
返事したのよ 「うん」と
この世に天使がいるなら
どうして愛する人を運んでいくの?
天使なら知っているでしょう?
あたしがあの人を心から 好きだったこと
「一緒だよ」の言葉
天使は聞いているフリだけだったの?
あたしは一緒に居たかった
あなたは天使のはしごを渡る
愛する人を失ってしまう
こんな屈辱的なことは
この世にそんなにないよ
天使よ
知らせが綺麗すぎて
憎めないよ
天使のはしご
天国で待っててね
あの最高の笑顔で
ありがとう
愛するあなたへ
>通り雨が走ってて
>うたを歌う雷がいて
>その嵐が止んで
>天使のはしごが架かる午後
>天使よ
>知らせが綺麗すぎて
>憎めないよ
ほんのりあまき内在にひろがり
くうかんのふちに輪舞するはもんを
凍ったひとみでいつまでもながめていた
ひるがえす そのひどくやつれた鋭角に
うらぶれる一閃のかぜ 死といわれるものやら
うっすらひとつ灯 なにかの色火がともる
亜響フィトクロム ゆめのあとにくぐらせ
暗いくらい日本歌謡オルゴールがわたしを燈籠にする
なにひとつの あかるいとしるものもなく
ゆるやかな光波の偏光 オリオンが媒介したあしもとに
ほしのかけらを砕いてとかす
とうめいがふれてくる
もしも ゆるされることがあるなら
それはきっとあなたからもたらされた
青い鳥のためいき かわされたやくそく
いくせんのしんでいったおもかげが
あのとおいような 掌にとれるその宇宙から
しんしんふらすエンジェリティーを結晶した
あいをおぼえた あめのあと
こいをうしなったまどべから
ぬれた賛歌のつぎめから
ひかり はじかれ
あふれだし
こえにならぬものがふたたび燃えあがる
はじめてだれかをまもりたいとおもった
あめのやんだ星欠けのテラス
あなたが あなたのこえが
わたしにはすべてだった
>アルファベットのように日本語が置かれた詩
>アルファベットのように日本語が置かれた詩
マリンブルーの海が広がり、
彼方に空がある。
これくらい大きな心が持てれば
僕も楽になれるのかな?
清々しい風が流れている。
思い出も攫(さら)っていってくれるだろうか
安い気持ちじゃ駄目かな
明日に向かってがむしゃらに駆け抜けよう
道草かき分け、丘を突っ走ろう
暑さ振り切り、風を切り裂こう
今日という名の扉を開けよう
夏という名の部屋で走り回ろうよ
扉の向こうには何があるか知らないけど
熱くなれ
無心で走りきろう
夏の暑い決意を胸に、
僕は...。
女はわたしといっしょに海の中に入りたいと言った。女には尾びれがあり、わたしには足があった。わたしたちはあのとき、海に入っていった。女が先に進み、わたしは後ろからついていく。波が胸元まで来たところで、手を握りあい、先に進んだ。波は繰り返しやってくる。小雪はやみ、霧に変わった。
気づけば、わたしはまた病院のベッドの上にいた。
「−−さん、あなたは漂流していたのよ」
看護師はそう言って笑う。
診察室で医師と向かいあう椅子から、外を眺めていた。わたしは島の近くを漂流していたらしい。その話を医師から聞いた。マーメイド海岸から船で一時間ほどの距離。歩いては渡れない。
看護師は、体温計を持ってくる。薬がなくなったので置いていく。わたしはコップの水を飲む。パジャマに水がこぼれる。薬を口に含み、また水を飲む。
看護師は、点滴を打ちにくる。わたしはいつもトイレが近くなる。点滴スタンドを動かしながら、部屋を出る。廊下を歩く。前にも歩いていたような気もする。誰もいない廊下は、長く感じる。
点滴のチューブを血が逆流している。透明な液に血がまじる。霧のよう。わたしは用を足し、ゆっくりと部屋に戻る。
窓からは海は見えなかった。
けだるい。テーブルの上の薬袋。ここの病室にはTVがない。個室のベッドでCDをヘッドホンで聴いていた。誰かの忘れ物を借りた。その音楽を聴いていると、体が揺らぐ。波間にいるよう。
目が覚める。トイレに立つ。汗をかいている。誰もいない暗い廊下を歩く。用を足し、水を流す。蛇口をひねり、水を出し、手を洗う。鏡で自分の顔を見て、部屋に戻る。眠る。目が覚めそうになる。わたしは何かを考えている。何かを話している。でもそれが何なのか、わからない、つかみきれない。そのまま、何かが流れていってしまう。
波にもまれる。何かが消えていきそうになるが、今度は忘れない。女の手がわたしをつかむ。海の中、わたしは、握り返す。波がわたしを押し返す。手が離れてしまう。漂う。わたしは仰向けになる。空を見上げながら、流される。どの位たったのだろうか、頭と背に砂地の感触。わたしは再び、霧に包まれた。
(わたしは漂着したのだろうか、それともまだ漂流しているのだろうか)
>目が覚める。トイレに立つ。汗をかいている。誰もいない暗い廊下を歩く。用を足し、
>水を流す。蛇口をひねり、水を出し、手を洗う。鏡で自分の顔を見て、部屋に戻る。眠る。
>目が覚めそうになる。わたしは何かを考えている。何かを話している。でもそれが何なのか、
>わからない、つかみきれない。そのまま、何かが流れていってしまう。
>海の中、わたしは、握り返す。波がわたしを押し返す。手が離れてしまう。漂う。わたしは仰向けになる。
>空を見上げながら、流される。どの位たったのだろうか、頭と背に砂地の感触。わたしは再び、霧に包まれた。
>(わたしは漂着したのだろうか、それともまだ漂流しているのだろうか('05/08/19 01:11:39)
>女はわたしといっしょに海の中に入りたいと言った。女には尾びれがあり、
>わたしには足があった。わたしたちはあのとき、海に入っていった。
>女が先に進み、わたしは後ろからついていく。波が胸元まで来たところで、
>手を握りあい、先に進んだ。波は繰り返しやってくる。小雪はやみ、霧に変わった。
>�〔椶�覚める。トイレに立つ。汗をかいている。誰もいない暗い廊下を歩く。用を足し、水を流す。
>蛇口をひねり、水を出し、手を洗う。鏡で自分の顔を見て、部屋に戻る。眠る。目が覚めそうになる。
>わたしは何かを考えている。何かを話している。でもそれが何なのか、わからない、つかみきれない。
>そのまま、何かが流れていってしまう。
>��波にもまれる。何かが消えていきそうになるが、今度は忘れない。女の手がわたしをつかむ。海の中、
>わたしは、握り返す。波がわたしを押し返す。手が離れてしまう。漂う。わたしは仰向けになる。空を
>見上げながら、流される。どの位たったのだろうか、頭と背に砂地の感触。わたしは再び、霧に包まれた。
>(わたしは漂着したのだろうか、それともまだ漂流しているのだろうか)
>�,鉢△諒絃呂任垢�、私がきになったのは�,鉢△里弔覆�りです。病室からいきな>り海の中が登場している感じがしました
>でもそれが何なのか、わからない、つかみきれない
>文章で表す場合は、
>もう少し、そこに行く流れがあった方がいいのではないかと思います
>波にもまれる。何かが消えていきそうになるが、今度は忘れない。
>(わたしは漂着したのだろうか、それともまだ漂流しているのだろうか)
>わたしは再び、霧に包まれた。
>そして�,鉢△諒絃呂任垢�、私がきになったのは�,鉢△里弔覆�りです。病室からいきなり海の中が
>登場している感じがしました。前のレスでも書いた映画ではよくある事ですが、文章で表す場合は、
>もう少し、そこに行く流れがあった方がいいのではないかと思います。さらに欲を言うと、読者を
>海の中に連れていくための鮮やか表現があった方がいいと思いますし、
>(わたしは漂着したのだろうか、それともまだ漂流しているのだろうか)
幼稚園のスクールバスには カーナビがない
かわりに
「男か女かわかんねえなあ」
と園児に言うのが口癖の 私という名の運転手が付いている
園児という蛮族を乗せるのに 行き先なんてどこでもいいのだ
いつだって めちゃくちゃなリズムで踊っている君たちの
その軽快なステップのルールを 私に教えてくれないか
バスの車体に描かれた巨大なひまわりは
週末には「じゃあな」と言って 激務で疲れた体を鉄板からひっぺがし
赤羽あたりのストリップにもぐりこむ
ウーロンハイを舐めながら年増女の裸を丁寧に批評し 心のケアを怠らない
「ひかる」という名札をつけた園児のお父さんは私の隣人で
妻と家庭内別居中なので ベランダにテントを張って寝起きしている
ベランダ越しに彼と世間話をしていると
ときどき「ひかる」ちゃんが顔を出し コンニチワ と
私たちに かわいい挨拶をしてくれる
「ひかる」ちゃんが男か女か わからない
彼も知っているかどうか
今日は遠足なので 保母さんの不安は増大している
お弁当を忘れた子供が何人いるだろう?
彼女は園児のトラウマを最小限に食い止めるために
早起きして予備のお弁当を10個作ってきた
ムーンサルトをキメたのに 着地する地面が無い感じ?
と彼女は不安の種類を説明してくれた
彼女も週末には不安を蹴飛ばして合コン女王に変身し
男のたくらみにも体勢を崩さず 自信を持って見事な着地をキメている
「普通の女です」とのことだ
学校法人 きぼう ひまわり幼稚園
この部分を特に念入りに洗うように ワックスもかけてね
君もマーケティングの一翼を担っているのだから
と園長先生から言われている
蛮族には きぼう という不細工な言葉がよく似合う
蛮族=希望 私は希望を乗せて走っているから疲れやすいのだ
それにしても 洗車する週末に ひまわりはいつも留守なので
彼はいつも埃まみれだ
たまには 空っぽのバスで ひまわりを迎えに行くのも いいかもしれない
>めちゃくちゃなリズムで踊っている君たちの
>その軽快なステップのルールを 私に教えてくれないか
>私は希望を乗せて走っているから疲れやすいのだ
言葉に出来ないこの感情
気付いてほしくてあがいても、声無き言葉は届かない…
〜貴方の言葉は私の身体を傷付けて…〜
〜貴方の態度は私の心を荒ませる…〜
〜貴方の見る目が私の目を潰してしまう…〜
『大人』に縋った私は愚かモノ?
期待し、信じ、裏切られ、それでも断ち切れぬこの感情…そんな私は半端モノ?
わかってほしくて…気付いてほしくて…助けてほしかった…
救いを求めるこの感情、たった一つの私の思い
その数は…
貴方にとって大きいか?
小さいか?
溢れた感情を目に宿し、救いを求めたその目を前に、
貴方はまた目を逸らすのか?
私の声は貴方の胸に、私の思いは貴方の耳に、届いているか?聞こえているか?
潮吹く生温かい空の下
砂浜の上に座り込む
顔を上げれば一夏だけ見せる星たち
月の周りで安らかに輝きを帯び照らす
穏やかに波打つ水の母
時に激しく 時に包むように...
はるかはるか夢見た あの時の想いは
今でも私の目を疑わせるの
耳を澄ませば 美しい歌声
左の目から 涙流れ海と共に消えて行く
いつかいつか見つめた あの思い出の坂道
今でも私の心を引き付けるの
静まり返るこの暗黙のヒトトキ
右手の温もりが私を失わないでいさせてくれるの
隣を見れば愛おしい貴方
月の光と花の火で色鮮やかに微笑みかける
幾度幾度願ったでしょう 貴方の隣を
ひらひら舞い散る 一度だけ咲き誇った花の雫
もっともっと願うでしょう 私の心は
ひらひら舞い上がり 咲き乱れ海へ落ちる花の雫
潮吹く生温かい空の下
隣に貴方 右手と左手
顔を上げれば一夏だけの花々よ
色鮮やかに夜空を染め上げる
隣を見れば愛おしい貴方
この想いずっと続けと 夜の花々に願いを込めて
いくつ散っても
いくつ海に帰っても
この恋火は散らないで と
繋いだ温もり 力を込めて
今宵の花火は永遠に胸に残しましょう
>穏やかに波打つ水の母
>今宵の花火は永遠に胸に残しましょう
宙を舞い上がる
砂埃と共に
舞い上がる
蝶の様に舞い
何の様に落ちるのだろうか
飛んだ高さが高ければ高い程
落ちた時には酷い事になるだろう
(ジュルダウネス福音書23章13〜15節)
それはカウキスネルテアーデス
彼の日に私は拳を怒らせ
雷のような一撃を与えるだろう
(ラウシュネルベ書15章3〜6節)
舞い上がれ
風と共に
舞い上がる夢を叶え給え
蝶の様に舞い
何の様に墜ちるのか教え給え
世界に国境がある限り
私達は手を繋ぐ事は出来ない
世界に國がある限り
私達は笑って肩を叩き合う事は出来ない
(シュダルガダク幸福書38章33〜38節)
戦争も争いも無い未来は存在しない
私達は神に挑んだばかりに
永遠に争う運命になってしまった
もし再び神に挑んで勝つ事が出来れば
言語も地球も統一されるのだろう
(バルセクンドリアス書9章29〜38節)
蝶の様に舞う中で
最後に見る物は何だろうか
どんな景色なのだろうか
何を恨み
何を羨み
何を悔やみ
何を満たされ
何を笑い
何を憎み
何を考えるのだろうか
どんな音を聞いているのだろうか
もしも私が世界を去る瞬間が来るのだとしたら
その時までには世界がもっとマシな場所であると思えるよう願いたい
もしも私が世界を去る瞬間が来ないのだとしたら
まだ世界は満たされないままで癌細胞は増殖するだろう
私がこの世界を去る前までに君達がこの世を去るのだとしたら
私は憎しみと共に生き続けるだろう
だがしかし
私がこの世を去った時には微笑みと接吻を与えてくれ
私が世界に幸福の羽を撒き散らせよう
(シャルベルヌンク福音書128章19〜85節)
蝶の様に舞い
物体の如き落下の後
私は私を見るだろう
私は私を見るだろう
知っている
朝を焼く音を あれは
鳥たちの羽ばたき
そして
気づいている
羽を貫く冬を それがきみの
最も正しい姿勢だ
*
屋根に降り積もる 雪
私の中に降り続く 雪
ならば
雪に願いを立て
雨と流れてゆけ
*
いたるところ
息のけがれた雨はある
息を枯らした川がある
北行きの風に
海のありかを尋ねたなら
潮は来るだろう
おお らおお らあ
おお らおお らあ
私はくじらだ
波を伝ってゆけ
*
かつて
海に閉じ込めた 母
母を迎え入れた 海
くじらは鳴いた
救い出したなら
帰ってよいのかと
海はこたえた
星たちとの語らいに
陸の言葉はいらないと
*
時の頂きを泳ぎ
星の海に羽ばたくものは
ふりむかない
冬の最果て
夜よ
白く咲いてゆけ
不安が背中に生えている
メロンパンを食べながら
本当はメロンを食べてるんじゃないか
そんな不安
学校をサボった朝に
世界の通学路の無意味がポロポロと
胸を流れてメロンパンを握りつぶした
甘い香りが付いてしまった手のひらを
ゴシゴシと洗う音だけが
世界の通学路に響いて
指先に鈍い痛みがはしり
涙がポロポロと頬を流れて
潰れたメロンパンを湿らせた
指先の痛みは
世界の通学路の無意味を
しつこいくらいに象徴して
生きている実感を
絶望に喩えた
もう三日間何も食べずに
ただメロンパンを潰して
湿らせてきた
世界の通学路に
自分の存在を
確かめられずにいた
不安が背中に生えている
メロンパンを食べながら
本当はメロンを食べてるんじゃないか
そんな不安
本当は何も食べていなかった
安っぽい不安だった
少しお腹がすいたので
僕は一口
潰れて湿ったメロンパンを食べます
小さな瞳で万華鏡を覗いた
目の中に入っては転がり出ていく 硝子の破片
その一粒に自分の明日が混ざっていたのなら
どれくらい 幸せなんだろう
空からの突然の来訪者
雨上がりの商店街を自転車で駆ける
名も無き黒猫が目の前を堂々と横切った
吸いこんだ風はざらついた味がして
ペダルは窮屈そうに不平を述べる
曇り空の煙を吐きながら
最終電車を街灯に群がる蟲と共に待つ
時折聞こえる車輪の掠れる高音が
誰かの悲鳴のようだ
家路の途中踏みつけた蝉達の死骸
微かに香る火薬の残香
秋月の近づいてくる音が
確かに聞こえる
肩幅ほどの道に
俺は腰をななめにして座っていた
四角い顔したねこが
空を見上げている
ながい横ゆれの穂先がはしょり
俺のひだりの腰にからみつく
白色の虹の中で
白い魚が泳いでいる
肩幅ほどの道を
俺は西瓜のように笑って
あるいていった
だれの制止もきかず
駈けていくユートピアの
光を追って
草木は伸びきり
枯れることもない
日に日に満たされていく土地
あんまり速く
駈けるものだから
家のなかに三人で立っている
何人もの父親母親がわたしたちの頭
を撫でていったけれど立ち止まるひとは
一人もなかった
追いつけないわたしたちを忘れて
どこへいくの
どうしてそんなことを
するの といいながら
わたしたちは許容し組み敷かれ
うずめられて
高揚した
剪定された
庭の光からのがれ
立ち止まったまま
ユートピアの光が
渦となり土地を燃やしていくわたしたちを
忘れて土地は満たされ草木は
いつのまにか枯れて土に
はりつく
もういちど ともとめながら
口に出さなかったことを
とがめた
光の真中で
ぐるぐるまわっている
なにも思い出さない光が
消えてもわたしたちはずっと
残っている
>どうしてそんなことを
>するの といいながら
>わたしたちは許容し組み敷かれ
>うずめられて
>高揚した
>ユートピアの光が
>渦となり土地を燃やしていくわたしたちを
>忘れて土地は満たされ草木は
>いつのまにか枯れて土に
>はりつく
>詩を最後まで読んだ後、タイトルの「後の野で」を目にすると、妙な胸騒ぎを感じます。
痙攣をひっこめようとした
海に雨が降る
遠くから鴎が港へむかう
その仲間もつらつら続く
俺のふるえはまだ納まらない
日が水平線にくぎづけだ
俺の噴水がぶちまけた
死にそうになる
焦燥から不安への滑落
落下から首かせにひっかかりシャツ
シャツは目が血走るよりもはやく、そして乾いて固い
森を歩いても目に石が挟まるようだ
腹につるぎを刺した、引き上げて鼻を割った
血と嗚咽が、黄色の手にとどめをさしたのだ
ああ、海原を漂う巨亀の心より爽快だ!
消え去ろう、太陽の下に
3か月前にあたしをふった
彼氏が旅に出るってんで
40度の熱があるのに あたしはたたき起こされて
着のみ着のまま
葛西シルチスのアマゾン鳥が啼く金町方面
あたしひとり 駅まで彼氏を見送りに
プラットホームには この駅始発の列車がもう待機していて
そのむこうには彼氏がはじめてのデートの時のように
大きく手を振って笑顔であたしを呼んでいた
ただあの頃と違っていたのは
駅の構内が全部トランポリンで
あたしも彼氏もぽんぽん弾んで
彼氏なんか完全な球体で 器用にぽんぽんぽんぽん
あたしはぽんぽん揺られて高熱でうんうんうなされて
彼氏に急いで近づきたくても入場券しか持ってないから
うっかりバウンドがはずれて列車に乗っちゃったら死刑だから
膝とおしりで慎重にぽんぽん
発車のベルが今にも鳴りそうだった
「なんだいそのカッコは」
球体の彼氏はにやけて舌舐めずり
口を裂いて大きな舌から触角を伸ばして言った
そうだ あたしたたき起こされたんだっけ
ベッドでうんうんいってたままの格好だ
髪はぼさぼさ
パジャマの下 はいてなくて
おまけにゴムゆるゆるのパンツで
寝る前にちょっといじった所にシミがついてて
トランポリンが弾むたんび そんなとこがまる見え
胸もお腹も少しはだけて 隠そうと思ってもうまくいかない
ぽんぽんあたしは丸まって 「お前のシリ サイコー」
そうだあなたはあたしのヒップラインが好きだったんだっけ
あなたは触角の先から目を突き出してにやにや
久しぶりに視線が痛い
たくさんの突起を伸ばして あたしをさわって
長い舌であたしのお腹を舐めまわして あたしはのけ反って
高熱で頭が痛いのに あ と小さく呻いてしまう 彼氏の喜ぶ声
あなたとの思い出は 別れる前に交わしたいことばは
こんなんじゃないのに
ほかにもいろいろあるはずなのに
こんなことありえないのに どうして
ぽんぽん がんがん
でもね
あなたとあたしって
同じ高さにちょっとの間しかいないじゃない
バウンドの高さもリズムも まるで違うから
いつもいつも擦れちがってしまって ほんとはね
あたしもあなたといっしょに行きたいんだけど
列車に乗ったら死刑だから 死刑になっちゃうから
しかたないじゃない さよなら
あたしはあきらめたように少しだけ泣いて にっこり笑って
別れのキスも出来ないで
あたしはぽんぽん うまく弾めるようになって
彼氏は突起を下に伸ばして ぽーんと飛び上がったかと思うと
不定型になって窓の隙間からにゅるにゅる
列車にさわやかに乗り込んで
発車のベルが鳴って
でもあたしはそれを見ていなかった
あたしもいつの間にか完全な球形になって
ひとつの眼球になって
ゆっくりとあたしにあたしの瞼が覆い被さった
瞼の内が熱いのは高熱のせいだろうか
あたしの眼を閉じたその瞼をあなたは
いつまでも覚えていて
ください
>ください