◇ No.126 , '08/05/13 00:57:26 作成

2702 : 光、呼び覚ます場所  はるらん '08/04/15 05:06:37



小鳥たちのさえずりで僕は目が覚めた

雨戸を開ければ霧の向こうに霞んでいる
山の麓の冷たい空気が僕の町まで降りてくる
零れ落ちる春の光は野の影や川面を揺らし
命の輝きをあらゆる植物は思い出すだろう

故郷を離れ季節も忘れた働き蜂たちは
家族の顔さえ思い出せずに孤独な更新を続け
僅かな眠りさえも許されない僕らの命は
ハンバーガー1個や1枚のICチップと交換される

僕は願う
あの山へ帰りたいと
高い木々の梢から小鳥が
死に絶えた僕の胸に降りてくる
「おかえりなさい、よく帰ってきたね」と、
嬉しそうに僕の体を仲間たちとついばむ

そのとき僕は初めて春の光になって
あの山の麓まで帰れるのだ
そうして僕は君の家の雨戸を開けるだろう
君が忘れかけていた懐かしい景色を
呼び覚まし光を届けるのだ

あの山の麓の冷たい空気と一緒に

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2700 : アネモネ  草野大悟 '08/04/14 21:46:45

よっつのかぜが
なかよく
てをつないでいる
あおぞら

たいようが
にこにこと
かがやいて
ひかりのなか

ぼくたちが
どこからきて
どこにゆくのか、など
うみにほうりこんで

ただ
ただ
くもとあそんでいる
いま

よっつのかぜは
きゃんばすのなかで
あのころとおなじように
よにん、てをつないで
うみをわたってゆく

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2701 : さてと  吉井 '08/04/15 01:44:00 *1  [URL]


  さ

 三匹の猫はマグカップの絵付けのように
 まばたきもせずネメシアの花の遥かむこうを見ている
 語りつくした言葉のあとさきに長い行列ができ
 需要と供給の曲線が幾重にもよじれてしまった
 ――かじきまぐろのコトレッタ美味しゅうございました
 ――それはようございました


  さて

 むかえのベランダの柱が一本折れていて
 雨にろ過された水のにおいがする薄青緑のブラジャーが干してある
 みちのくの大物産展と春の聖火リレーをはしごして日本海に出た
 あっ当選応募はがきを忘れて来てしまった
 ――バンホーテンは粉っぽくていけない
 ――さようですか


  さてと

 電線に止まろうとした烏がこけて
 照れ笑いしながら鷹になりすまして滑空している
 突き出された言葉の穂先が160キロの硬球を刺し
 わかってるくせにと言って少年は頭を小脇にかかえて通り過ぎた
 ――豚しゃぶに使うお野菜キャベツではなくレタスにしてね
 ――はい奥様

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2703 : 星遊び   ポチ '08/04/16 00:03:09

彼

 汗だくのアフリカで、裸になった友人から手紙が来た頃、僕の机の上では、数冊の本が同時に開かれたまま文字たちが飛び出している。友人の手紙が僕にこう言う「星に上がるのさ」と。彼が一緒に送ってきた人形はマヌケにも「Eureka!Eureka!」としか言わない。僕の祖父は、そう叫びながら家を焼いたんだよ、と彼が口にするまで、僕の部屋の扉は開かない。これはまじないなんだよ、ずっと昔からのまじないんだよ。
 
 星へ上がる

 星へ上がった人たちの瞳は青いから、とてもきをつけないといけない。僕がずっと昔に祖母に言われたことを信じていないから、青い瞳は、その人が死んだ後に、固まって青いものになるんだよ、と、静かに友人に語るけど、友人の瞳は黒いままで燃えているのさ。燃えたものは、白く冷えて土に上がる。上がってから、下がって、また黒くなるのさ。

 まじない

 まじないはいつも夜に、そして昼に、朝にはできるだけ控えて、そういう君はいつまでたってもそれをやめようとしない。まじないは、いつだって聞き分けがないから、耳をつけたまま走ったあの人のように、砂浜で首をかられるのさ、かられた首は笑ってアフリカに落ちる。落ちた首を君が拾って、またまじないをかけたら、それは星へ落ちるんだろう。君はそうやって何度も何度も夢を見た。


Eureka

名前を与えられなかった、
あなたや、わたしが、
くだけちったまま、
たまげる、
たまげるってのは、魂削るって書くんだよ、と、
知らない人が言付けて、
わたしは旋舞し、
あなたは戦舞し、
何度も何度も、
同じようにして、
見たままの、
開かれたもので、
同じように、
そしてや、また、から、
引き出された、
退きだされた、
靴や、
帽子を、投げ打って、
廻っては巡るままの、
呼吸の仕方や、
知らなかった、
場所に、
かえる、
そして蛙が、
帰らない内に、
私たちが
帰らない家に、
ことづけをして、
わたしたちや、
わたしは、
ゆっくりと、
渡っては、
渉り、
口笛を吹きながら、
屋根を葺いて、落ちた、
と、言われるままに、笑ったり、
下がったり、
転んだままで、
転ばないままの、
いしを、いしを、
渡して、
わたしや、
わたしたちの、
あおいままの、
ことばで、
いえへ帰るまでに、
孵らない、そして、
やっぱり返らない、
はだしで、見て

星へ上がらない、まじないを、
何度も、

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2699 : 「 ぼくと勃起とお尻の穴と、考えるおちんちん。 」  PULL. '08/04/14 18:44:26  [Mail] [URL]



朝。

 目が覚めるとぼくは勃起していて、ぼくのおちんちんは勃起してから考える。目覚めてすぐの勃起は何だかもやもやとしていて、少しおとなしい。もちろん血はどきどき充満していておちんちんは芯から勃起しているのだけれど、やっぱり何だか自覚がなくて、自覚のない勃起はわがままじゃなくて、おしっこをしたらすぐに萎びてしまうので、おちんちんの考えはまとまらない。



昼。

 お尻を見ると、おっぱいよりもお尻が好きなので、ぼくのおちんちんは勃起して考える。お尻は大きいお尻の方がいい。おちんちんは大きいお尻とよく似合う。引き締まった筋肉質のお尻も大好きだけど、タイトスカートにぱつんぱつんに包まれたちょっぴりだらしないお尻も、おちんちんは大好きだ。大好きなお尻を見て勃起したおちんちんは何だかわがままで集中していて、少し手に負えない。あまりに手に負えなくて手にあまった時は手で、処理をする。手は、ぼくのおちんちんの手であることもあるし、ぱつんぱつんのお尻の手であることもある。狭いトイレの中でお尻と絡み合い汗とお尻の穴の匂いを嗅ぎ、おちんちんはさらに集中して、考えを出す。
 触られてすぐに飛び出したい時はすぐに飛び出すことにしている。



夜。

 お尻の唇で吸い取られて空っぽになったおちんちんは考えると、勃起する。勃起する前のことはあまり覚えていない。昼間は見知らぬ誰かとお尻の穴の匂いを嗅ぎ合ったような気もするが、ひとの顔のことなどは尻たぶよりも印象も匂いも薄いのでやはり、覚えていない。
 今夜のお尻は匂いもきつく叩くとよく、ふるえる。ふるえるとお尻は堪らなくなるので、また叩く。叩くとお尻はほんのりと赤くなり照れるので、またさらに堪らなくなり叩く。叩くごとにおちんちんは明瞭になり、赤くなるごとに充実して朝よりも昼よりもかたく、考える。噛み付いたお尻は「ひぃっ!。」と悲鳴を上げるので愛おしく、なおのこと歯形を付けて隅々まで舐め尽くして味と、匂いを確かめる。やがて唾液とお尻から分泌されるものとが入り交じり匂いはくらくらとして、おちんちんはますますかたく、考える。
 考えがまとまるとまんまるのお尻の穴を見ながらおちんちんは侵入する。時間を掛けてなめらかになったそこはあたたかくて、お尻の穴はきゅっとすぼまって、おちんちんは射精したくて堪らないのにこのままずっと射精しないでいたいからずんずんと、確かめながら侵入する、お尻は声を上げて叩いてとせがむのでふるえ腫れ上がり愛おしく歯を、立てる。

 仄明るい窓の外では真っ赤に充血した月を、勃起したおちんちんが押し揚げているもので夜はまだ長く、深く考えもぐり込み答えを、出さない。




           了。

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2697 : chocolat noir  meLt '08/04/12 23:28:07  [Mail] [URL]

口に入れれば
ほろり、と苦い
その色はまるで、
そのことを暗示しているかの様
甘くないのは、純粋だから
隠せない根本
消せない本心
chocolat noir

この感情は、甘いものだとばかり
思っていたけれど
そうでもない
一筋縄ではいかない色んな味の
chocolatの様に
大勢の人の感情で、味付られている
人の感情だけでも十分なのに
時の悪戯、神の気紛れまで
トッピングされている

言ってしまったら、砕けてしまいそう
冷蔵庫の片隅に残されて硬くなった
chocolatの様に
心の奥底に仕舞い込んだ
凍結した気持ち
そっと触れただけでも、割れてしまいそう
常温に晒しただけでも、溶けてしまいそう

noirの空に
思いを馳せても、願いを掛けても
星は流れてくれない
noirの空は
心を映し出す鏡だから

純粋な思いは辛辣で
今迄は逃げていたけれど
chocolat noir
本心は消せない
例え表面が傷ついて、壊れてしまっても
何処かに残っている
悲しいのは、無かったことにすること

chocolat noir
甘くない思い
切なる願い
曇り無いその黒色の様に
素直になれたら
まだ見ぬ未来に踏ん切りが付ける

この思いと向き合ったら
貴方は応えてくれる
noirの空みたいな純粋な瞳で、心で
真っ直ぐに想いを受けて入れてくれる

chocolat noir

noirの空の下で、貴方を待つ
臆病でも逃げない
怖くても突き進む
この思いは、本物だから

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2706 : ギニョール  一 '08/04/17 05:38:23  [URL]

 星が点在する夜空の下、僕は巨大なテントの中へ入っていった。この星にはまともな人間は僕しかいなく、テントの中に組まれた劇場の中にも、僕以外誰もいなかった。僕はその為か、入場料を払うのを忘れて、入り口のカウンターに戻ると、「入場料は無料です。ですが、催しが終わった後に、あなたの中の何かが失われると思いますよ。それが入場料の代わりです」と羊皮紙には書かれていた。
 劇場の椅子に座ってじっとしていると、突然暗くなって、ぱっと舞台の中央にスポットライトが暗闇を切り抜いて奇妙なメイクを施したメタボリック症候群の中年男性を照らし出した。「いらっしゃいませ。私がこの劇場の支配人です。此処では、貴方の望み通りのものを観ることができます。宇宙がホクロのように見えるこの惑星にはもうずっと前から居座っていますが、お客様は貴方が初めてです。見たところ、貴方は世界旅行者のようですね。さて、何をご覧になられますか?」僕は突然そんなことを言われたので頭が真っ白になって戸惑っていたが、支配人は僕の心を見透かすように不気味に微笑み、「分かりました。たった今ご用意させて頂きます」と言って、指を鳴らすと彼に当たっていた照明が消えて、静寂が訪れた。
 その瞬間に、今度は三つの照明がステージ上に点り、最近視力の悪くなった目を懲らして見てみると、白いワンピースを着た君が立っていて、僕の鼻腔に君の肌と照明の熱と渦巻く空間の幻臭を感じた。僕は衝動的にステージに上がり、君を抱き締めた。
「私、貴方にずっとずっと会いたかったのよ」
 僕もだよ、と込み上げてくる涙を我慢せずに流し、更に強く抱き締めた。君も涙を流しているようで、大きな泣き声で、�猖佑梁翹楪未蠅離札螢姚瓩魃筺垢斑�り続けた。それは存在しないはずの観客達を魅了した。良い雰囲気を壊すように、支配人が、観客席で手を叩いた。僕が支配人に振り向き返ると、「いいですよ、いいですよ、その調子」と彼は不気味な笑みを零して劇の進行を促した。
 暫く、あたかも本当に役を演じて第三者に見られているようにこの空間の隅にまで響き渡るように声を大にして感情を吐露していたけれど、何も喋る事が無くなり君をじっと見下ろしていると、君は同じように僕を見上げ、僕の次の一声が出るまで沈黙した。僕は先程のように再び戸惑い、頭の中を整理していると、支配人が「おい、どうしたんだ! 早く�犒爿瓩鯊海韻蹇�」と突然性格を豹変させて、野次を飛ばした。支配人は、既に観客の一人と化していた。僕はそのことにびっくりしたが、ずいぶん間を置いて、感情を何の変換も無しに言葉にして、「死んだ君といつまでも一緒にいたい…」と支配人を見返すように、大きな涙声を観客席に届かせるようにセリフを発した。
 しかし、君は無言で首を振った。そして、静かに背伸びをすると、僕の唇にキスをして、キラキラと輝いて消えていった。その瞬間、スポットライトが消えた。
 再びステージ上にスポットライトが点くと、僕は元の客席に座っていた。照明の下には支配人がいて、僕は拍手をすると、彼は丁重にお辞儀をした。「ご観覧、有り難うございました。確かに貴方の中の、�猯�人の死による喪失感�瓩歪困�ました。またのご来場をお待ちしております」と言った。僕はテントの外に出て、船に乗り込み、この星を立った。

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2682 : キリ子さん  平川綾真智 '08/04/01 00:02:48  [Mail]



浮かんだ枝の合間から漏れる直射は薄く伸ばされて、透かし落とす清涼を一つ、頬へと裏
打ちしていった。根本に繁る小草が葉の裏、跳ね付いた泥をこびりつかせ、あえいで響い
た額が奥まで、ほんのり痛みを歩かせる。小草の名前を調べたいと、覚えていても忘れて
気付いて、少しだけ自分に、笑ってオーナーに挨拶をする。後は待機するだけだ。握る携
帯に湿って今日は、ゆっくり話せるかもしれない。指先に残る、合間の感触が映えていく

あたしなんかはそぎゃん心配いらんだろうし
ね、働きだしてこの部屋で意外と 
大丈夫でも意外とね、ほんとう 驚かんかったんよ

髭の先まである欲求を、さ、集めて濾して、
出来たのがこの部屋。
あたしの部屋だよ 5時間42分かっきり、世界一不自由な浴槽に、屈んでみて、さ
自分の出した声で額、痛くしたり 生理の血、専用綿詰め込んで止めたり
まぁ全部、気合でなんとかなりよるし、ね ブっさいくなよがり顔笑わんようにつたい
気ぃつけたり練習したりで、さ、
私は私が、ね 好きで好きで堪らないんよ

だけん泣くのもニヤツクのも昔っから 風呂場しかそれしか無かったわけじゃん
ここなら誰も嘘ないだろうって、来てみて
やっぱり嘘なくて、ね、30万とか上出来だん
化粧で塗り固めたら立てるし、余裕なんよねヨユウ
小さいこと、隙間も圧迫もなく、両手にさ
持てるだけを抱えて軽いや
全部が軽すぎるから重いや
うん、つまり雄大とか あたしだけんね

頬が乾きを小さく抱える。瞼の上に残った直射が伸びきる薄さを、まだ置いている。指先
へと絡み付く声は透かされ途切れ、途切れに笑んで、巻き戻される感触に涼しい。話し溢
した、時間は確かだ。それだけが緩み濃密だ。タイルの壁で響き合う霞みが、綿の量を微
かに握る。繁り、戻り、濾された髭を、挟み、湿り、小草を張って、合間へ重ね、密やか
にやはり、持てるだけを持ち、浮かべた枝は、すぐにも朽ちる。浴槽に屈む丸まりは近い

額だけだん痛いのは、ね
たまに嘔吐はするけど、やっぱ ブっさいくに喘ぎまくってさ
ほら結局、葉に跳ねるのは、泥だけだん
いくら映えても小草の名前は 誰も目を凝らして見ないし、ね
嘘なく雄大さに甘えてたい
この部屋では、皆が、
みんな、とってもいい子、

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2704 : みかん  木戸 '08/04/16 15:19:57 *1

雹が降った
がじゃがじゃ降った

農夫は畑へ慌て出た
畑の地面は
一面黄色で
農夫は膝をつき
頭を抱えた

嫁にあたり
息子にあたり
娘にあたった

秋の雹が
農夫の一年を奪った
安穏を貫いていった

翌朝
農夫はひとり
畑に落ちたみかんを拾った

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20080416_296_2704p


2709 : お手玉  ポチ '08/04/21 03:44:42

(よく目を焼け、その肌で日差しを焦がせ「ここは私の映画」)


アメリカ、戦慄するアメリカ、
赤いのは、青い、
黄色い内に、収穫祭、
謝肉祭に盛られるのは、
黄、
黄は、混ざらない、
混ざらないものは描けない、
今、まさに、水盤の半径が、
どっぷりと、
言葉に浸っている、
もう半分は、
皮膚の上で、
葉緑体を温めて、
緑、
緑は、
白い、
白いものは、
黒いもののなから、引かれた、
線から、
いちように、
いえ、消えないうちに、
降り注ぐ粒子、
粒子の一粒一粒が
涙だ、
涙は、ばかげてる、
馬鹿げているものは好きだ、

苦い、
君やお前は苦い、
苦いものは、
甘い、
甘いから、
紫だ、
紫が、
夜を走る、
君が、
すべる、すべって、
打った、
その壁から、
ドロリと、
髪をたらす、
ちんたらしてるんじゃなぁいよ、
そのスピードじゃ、
僕のスピードについてこれやしない、

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2637 : 沼地  殿岡秀秋 '08/03/01 10:10:51

沼地に足をとられるように
気分が沈むときのあなたの眼に
昔のままのぼくの姿が
浮いているのではないか

末っ子だったぼくは
いじめることができる
妹を得たおもいで
姪のあなたを泣かしたり怒らしたりした

三つ編みをした幼女のあなたと野原で遊ぶ
小学生のぼくは草の茂る窪地に隠れる
突然ひとりにされてあなたは
泣きながらぼくの影を探す

あなたは小さな手で泥団子を
投げつけてきた
握り固めた怒りをぼくは受けとめたが
会うことが少なくなって溶けてしまった

ぼくは忘れそうになった宿題を届けに
大人になった
あなたの元へ行く
子どもの頃のことを詫びに

「意地悪をしてごめんね」
「そんなことないわよ」
その言葉であなたの記憶の沼に棲む
ぼくの面影が消えるわけではない

沼地に入れた足を引き抜くと
残ってしまう靴のように
あなたは三つ編みの幼女のままで
ぼくの記憶の沼に棲む

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2705 : (無題)  んなこたーない '08/04/17 02:20:10

黒塗りの棺がゆるやかな速度で落下してくる。
上昇をつづける地殻に耐えて、
われら、迅速に円陣を組む。
円陣を組むわれらの頭上を、
神経質に揺れ動く空が、
空には謎の信号機が。

フラッシュバック、手を叩け。
シンバル奏者のタイは不調さ。
死ねないアスパラガスの黒点移動。
ああ、それもまたイデオロギー。
われら、365日、イデオロギー。
しかし拡声器は警告を発する。
饒舌なウニは猥褻である、
貴様ら即刻解散せよ、と。

澱んでいるぜ、
くさっているぜ、
リゾームは愉快なスポーツじゃないぜ。
ハードコアポルノは幾何学精神の産物である。
いまさらどうにもなるもんか。
なげやりに乱れた呼気と吸気で、
このまま、思い思いに突っ伏して、
われら、ひといきに泣き崩れるさ。

「あいつは鰐のキャタピラだったね。
 脱げないブーツとぬらぬらの抗議。
 性感帯の背中でせっせと
 どぶろくの夜を掘り起こしてたね」
指示対象の、志向作用の、ピューリファイ。

すなわち、10年はただのバカ騒ぎ。
壁にこびりつくタールは褪せて、
そのまた5年、10年と。
笑うよ、別れの熱烈な抱擁のあとで、
ああやってタクシーに乗車拒否されたのならば。
なのにあいつは、
不法にもわれらの鳥籠のなかにまで侵入しやがる。
あいもかわらず、泥の目はわれらを窃視しやがる。
空には謎の信号機。
ああ、あれは
何というアヴァンギャルドの概念装置か。

語りたいやつらは死んでゆき、
ゾンビーのようなゾンビーたちの
散文がわれらを虜にする。
やつらの魂は、二足歩行か、四輪駆動か。
これは爽快な現象じゃないか、
われらの時代にもまだモノローグが存在するなんて。

いまや抵抗感は希薄になり、
円陣を組んだわれら、
とりもなおさず運動を欲する。
肉体の健康は最上の美徳である。
気品と純潔の証左である。
ほら、見てごらん。
いまや流体機械は回転を始める、
手の鳴る方へ。
そうさ、あいつは阿弥陀如来にくれてやれ。
パスカル流の嘲笑を浴びせて。
恐竜どもが蘇生するぞ。
われら、不純なる持続に耐えろ。
うんざりだぜ。

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2713 : 本当の蝶はこの世に四匹しかいない  右肩良久 '08/04/24 02:28:43  [Mail]


 僕が郵便局から振り込みを終えて出てくると
 コンビニの前で中年の黒衣僧が三人、立ち話をしていた
 三人はみな妻帯者で
 一人は草刈り機の事故で右足の小指を失い
 一人はヘッジファンドへ投資して資産を倍増させ
 一人は幼女へ性的暴行を働いていたが今は改心している
 赤すぎる唇が三つ、蝶が羽ばたくように動く

 僕が今から四年後に
 吐き戻したカツ丼の飯粒の中に顔を突っ込んで死に
 翌朝隣人に発見されることを知っているのは
 この三人だけで、僕もそのことは知らないが
 彼らが話題にしているのはそんなことではない
 胃液の、少し酸っぱい匂いは漂うものの

 彼らの横に燦然と桜の裸木が立つ

 「私らの生得のイメージの中には、
  完き紺碧というものがありますよね」
 「それそれ。もの凄い流れが
  髪の芯まで染めるほどの冷たさで」
 「阿弥陀浄土はいわば角張った玄武岩の欠片だから、
  紺碧の奔流から眼を開いたまま拾い上げなきゃな」

 この世は僕の知らない秘密で充ち満ちている
 やがて三人は西友の前にある地下鉄入り口の階段を降りていった
 僕は誰にも告げられない悲しみに縛られたまま
 背中に広大な面積の翅を開く
 言葉にならない呟きで唇が震えるように
 二枚の翅が少しづつ動き始め
 やがて大きな開閉を繰り返し始めると
 僕の足は徐々に透水舗装の歩道を離れようとする
 翅の下を、吹きこぼれた悲しみが煽られて対流し
 圧力差が不安定ながら徐々に浮力を産み出すのだ

 誰の心の中にも完き紺碧というものはある
 遥かに離れてみると、そもそも地球が紺碧の真球なのだから
 そう思ってみても僕にできることは
 きつく目を閉じてみる、ということ。それだけだ

 なぜだろう、それは?
 ふと気を抜くと、つい
 この詩を読んでしまったあなたに問おうとしてしまう
 そんな破滅的な展開があっていいはずはない
 それでは僕は涙すら流すことができなくなる
 そうではないか?

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- ealis -