◇ No.121 , '08/04/04 11:48:36 作成

2621 : (無題)  鈴木 '08/02/20 12:37:21

テレビ局の人間が
黒いワンボックスカーのそばでタバコをふかしている
沿道にはグッバイボーイが立ち並ぶ
警察官は声を荒げるが
かれらは少しも動こうとはしない
最大の難関と言われる急な上り坂の手前で
ランナーが続々とリタイアする
白バイが
先頭を快走する英国人ランナーを追い抜いてエス字カーブに
衝突する


バックミラーでかれらの顔を捕捉して
次の中継点へ向かう
奇妙な走法の英国人ランナーは何食わぬ顔で
先頭を走っている
二キロ先の折り返し地点では
友人が
舶来のウィスキーをグラスにこぼし
黄色い声援を送りつづけている
黒いワンボックスカーに仕掛けられた原子爆弾が
爆発する


*

日曜日の今日は全国の学校がお休みだから
グッバイボーイがたくさん駆けつけて
ランナーに向かって
右手を振っている

グッバイ

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2623 : (無題)  んなこたーない '08/02/23 13:40:30

狼は風を喰らって飢えを凌ぐ。
  (夜には、その病んだ牙に磨きをかけて・・・)
ぼくらはたがいに解釈をしあう。
  (あの、上空から墜落してくる光の帯の正体について・・・)

・・・・・・

その日、彼女のボートは炎上していた。
  阿片の煙をはげしくまきあげ、
一晩中、逃げ去る水平線に縋りつこうとしていた。
  (ぼくがそれをわらうのは、はたして紳士的作法だろうか?)

・・・・・・

ぼくの口のなかの彼女の舌は、
  あまりにエレクトリカルに震動するから、
ひどい歯痛に耐えているひとのように、
  ぼくの全神経はそのことだけに集中してしまう・・・

・・・・・・

ぼくらは、もはや衛生学的興味しか持てない
  たがいの身体をもてあましているのだろうか?
どうして、なぜ、知的なぼくらの社交術に、
  いまさら哲学の必要性を説いたりするのか?

・・・・・・

さて、ぼくらは暗闇のなかにいて、ぼくらは平静そのものである。
  (結局、ぼくに彼女をわらう権利はあるのか、ないのか?)
こうした詩情の根拠に、ぼくは仏文の素養を身につけるべきか?
  (それでも、ぼくが手探りでつかんだものは、ただの貧弱な布きれにすぎぬ?)

・・・・・・

はてさて! それでは、もしも、ぼくの空っぽの頭のなかで、
  小石を深い井戸に投げこむように、
Time Is NowがいまだTime Is Nowであるとするなら、
  ぼくは一足に階段をのぼり、太陽氏の呼鈴を鳴らしました、とでも仮定しようか?

・・・・・・

「おさらばだ。おれはアンジェーに立ち去ろう」
  (ぼくらはつかのまスポットライトのなかにいて、ぼくらは平静そのものである)
「ごきげんよう! もう二度とお目にかかりたくないね」
  ああ、またしても、この決定的な調子外れに、狼よ、どんな解釈の余地がある?

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2620 : サンデーモーニング  はじめ '08/02/20 02:47:05

昨日死んだ土曜日の残骸が日曜日の朝の心に残っていて
それが更なる眠気を誘う
一週間で一番最悪な曜日
マルーン5の「サンデー・モーニング」を聴きながら優雅な朝食
この大きな豪邸には自分以外一人しかいない
それに対する空虚感と同等の心のそれ


プールで一泳ぎした後に
君からの着信に気付く愚かな自分
君は太陽のようで
やはり土曜日の残骸と本日の空虚感を蒸発させてくれて
君とのセックスは昨日やるべきだったと後悔
空には陽が焼き付けられ 邪魔な雲と一緒にブラジル人達に引っ張られる
この世界は創造物に満ちていて
昨晩 神様は夜空に星を浮かべられた
ビルに聳え立つ満月は巨大な蜘蛛に喰われ(月食)
海に沈んで蛍光ペンで塗り直した朝日はいずれ猫の子宮内膜に中心着床するだろう
そんな絡み獲られたサンデーモーニング


運転免許証を持っていない二十三歳の恋人とドライブに行く君
オープンカーでは「サンデー・モーニング」をエンドレスリピートで流し
「もう午後よ」なんて微笑む顔
満月は物凄い音を立てながら破片をぼろぼろと零し
巨大な蜘蛛のゲップが雨雲を創って
蛍光が流れ落ちたふにゃふにゃな太陽はブラジルの二次元世界へさようなら
それらを置いてきぼりにして走っていくと神様は星々に次々と射精し
女神は生理の時期だから和式便器型宇宙にヤンキー座りして排卵
それらが混合し地上に降り注ぐが精子はがびがび 腐った甘い血 月の内臓の匂いの雨


一次元のハイウェーでは存在できない当たり前
二次元の夕暮れ 君と手を繋いだシルエット
三次元の音楽と意地悪な人達
四次元の宇宙を映した心に生えた翼で動物アレルギーを引き起こし目と喉がむず痒い

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2610 : 秋子の自殺  pierce '08/02/14 21:54:20


チエは秋子をミスタードーナツに呼び出した
寒い日だったのに秋子はやってきた
チエは陸上部のいじめについて悩んでいたので
死にたいと秋子に言った
秋子は本当に自殺するひとは
死にたいって言う相手もいないんだよって言う
わたしがいるよとチエに言った
チエは前を向いた

秋子が自殺したのは一週間後だった
チエは秋子を友達だと思っている
チエは秋子の言葉の意味を都合のいいように理解していたかもしれない


カトウくんが秋子に夕方の教室で偶然に会った
カトウくんはipodでなくMDウォークマンを愛用している
MDをとりだすときの音が好きなのだそうで
カトウくんが「そういえば佐々木さん(チエ)がこないだ泣いていたね」と言った
秋子とチエは友達のように見えていた
秋子が「たいした理由でもないのにあのこ自分が世界でいちばん不幸だと思ってるのよ」と憤る
カトウくんは秋子は美人だがとても厳しいひとのように思った
きみの言うことは正論だけれどみんながきみのようにつよいわけじゃない
カトウくんはチエが好きだった

秋子が自殺したのはその1ヶ月後だという


秋子は高校生だったが近くの大学に通う男に恋をしていた
それはだらしのない男であった
けれど秋子はその男と袖ふれあうように知り合い
そして魔法のように惹かれた
男は面倒なことが嫌いであった
元来楽しいことしか見ようとしないものである
女の哀しみはさらさらと受け流し
だらだらと生きていた
秋子は「学校に友達いないんだよね」と言った

秋子は自殺するとき男のことを先ず考えた
私が死んだことを男が知ることはないだろうと思っていた
なにせ名前しか知らないような関係であるので
しかしもし男が自分の死を知ったなら
私が彼の記憶の奥底に眠ることが出来るのだろうと思った


朝のホームルームで担任が
「タカサキの母親が大腸ガンで亡くなった」とみんなに伝えた
みんなは可哀相と言った
ざわざわとバツの悪い空気が侵食した
三智子は言い知れぬ感情が染みてくるのを感じた
ああだからタカサキさんは休んでいたのか
ホームルームが終わった
ユキエが「昨日の情熱大陸みた」と聞いた
三智子はどうしてみんながもう普通なのか
いくら考えてもわからなかった

タカサキ秋子が自殺したのはそれから半年後のことである

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2612 : ゆびさき  凪りん '08/02/16 21:07:51

あなたは、そのたおやかなゆびさきをしなやかにうごかして、せかいを、瞬く間に変えてしまうけれど、わたしは、見渡せるせかいからはいつまでもぬけだせないままで、途方もないことばかりを探してしまうから、もう、
遠いところへいくことはできないのだと、思う。 
まわりには、たいせつなことばたちがあふれているから、きっと、この海でおしまいなんだって、そう思うから、だから、ねぇ、あなたはそのゆびさきで、これからもいくつものせかいを変えていってほしい。
遠くに浮かぶ灯台の灯のようなやさしさで、いつか、いつの日か、せかいじゅうの海があたたかいものであふれかえるまで、そのゆびさきを、ふるわせながら、この海をこえてほしい。
 
 
わたしのゆびさきは、あなたのようにうつくしくはなれないけれど、あなたが、あなたがうつくしさを教えてくれたから、この剥がれた皮はじきに固まって、ゆびさきを、いまよりもぎゅっとつよく、
やわらかくしてくれて、そしたら、ほら、だいじょうぶって、あたらしく生まれてきたあたたかいものを、わたしは抱きしめることができると思う。
そのころに、
もし、あなたのやさしさがわたしの海まで流れてきたなら、その時はあなたの仕草で、
ゆびさきをていねいにうごかして、この、
あふれかえる青の中に、あなたへの手紙をそっと、
祈ろうと思うんです。
 

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2616 : 「記されない狼のための観測」  深田 青 '08/02/18 12:12:11  [URL]

動く 心臓の 。祈りの断片
                
―・・・ ・
―・・・ ――― ・―・ ―・




柔らかい色彩の綿布で女の稜線が微睡む、その素肌の上。肌。を滑
ってゆくの は 宇宙、と呼ばれている標題の無い交響曲、それを、
誰も聴いていない、空間は羊水で満たされている、ここに。未だ結
ばれていない、輪郭 を泳がせて、られているのです。
黒い、黒い、ここに。しなやかに伸び てゆく植物たちが咲かせる花
々、は、パチン!と破裂する音のような無音を鳴らして生まれた幾
つもの太陽を愛しながら、呼吸している。あまりにも鮮やかにNGC2
237-9,46 のような星雲(NGC2237-9,46自体もやはり)が咲いて、
またコールサックのようなものも無数に実っている、広大な、ここ
に。流 れている、水は緩やかに(暖かに、というのは確かであろう
か、覚束ない)。それをひどく優しい安息であると感じながら孵化
する、してゆく、あらゆる種の幸 福な魚、の、銀、青、緑青の鱗の
表面にlegato、が注がれている。
動く 心臓の。筋肉の伸縮に微かに震える気泡を稚魚たちが拭って
ゆく。(ひやりとする)そのあとに薄く揺れる曖昧な輪郭、を、観
測さ れ、NGCと数字を振ってもらえたら、やっと。生まれるかもし
れない。月 の、既に発見された膨大な海についての詩(金属的なに
おいがすることがある)の末尾でも、突き刺されば或いは。
動く 心臓の。音はメトロノームの言うが侭に素直に、従順に、響
いている。世界だ!世界だ!と歓喜しながら細胞分裂の著しい連続
性の先端にほのかな面持ちで、ここに。またたいているのが、Flam
steed、もしくは今日のヴァイオリン奏者、の目に留まれば或いは。
女が、眠りに入る。いよいよ太陽が愛されているので、植物たちか
ら綺麗な酸素が歌われてゆきます(叙情的に)。ヴァイオリン奏者
が恋愛をする、視線、を 暗幕の黒い、黒い、黒。に(長いトリル
を使って)侵入させる。と、繊細な曲線、レースのような縁を見る
かもしれない。それは、花、もしくは動物ですか(動物であるなら
ば無脊椎の透明な)。の問いに いいえ、花、そして動物です(ほ
乳類の青い)。つまり狼。と密やかに記そうとしたところでFlamst
eedは死んだ。
遺された天球図譜は楽譜ですから、連なる二連音をスネアが追い、
それはただひたむきに、繰り返されてゆく。主題は、未だ結ばれて
いない、動く 心臓の。まるで祈りです と、魚が語る。語る魚、
はアルビノ・リラテール・モーリーだったので 宇宙、ここに。よ
く映える(尾に至ってはまるで小説だ、寒天菓子だ)。 
動く 心臓の。所有者は、花、そして動物(狼?)ですから、NGC2
237-9,46のように咲く為の、術。技巧。を模索しながら尚、生まれ
ない。  

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2631 :   水恋あかり '08/02/28 14:25:43 *1  [URL]

母は

記憶の中では大きく
気が付いたときには小さい

一番綺麗な母の記憶は
もう十数年も前のことだから

今、
僕の横で寝ている母が
滑らかな彫刻のようで
少し怖い


最近僕は、
母がこのまま目を開けないんじゃないかと
思うようになりはじめた

変に自分の鼓動が煩く響いている
何の抵抗もない母の手首を軽く握ると
僕より弱い動脈が
時計のようにカチコチと疼いている

肩を下ろし、安心してため息をはく
けれど、母の手首から手を離すと
それは力なくパタリと落ちたから
また僕を不吉な気分にさせる

僕の頭には嫌な考えが
めまぐるしく回っている
ふと母が呼吸をしているか心配になって
どうしたらいいのか分からないうちに
冷や汗がまた背筋を伝う

何もできないまま
ただ立ちすくんでいるだけ

母が目を覚ますまで
僕も世界も動かない

ただカーテンの隙間から
差し込む光の角度だけが
だんだん傾いて消えていった

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2628 : [kanshakugirl(s)]  香瀬 '08/02/25 23:16:10




 [kanshakugirl(s)]



   東西線はあたしを乗せても新宿に降ろしてくれなくて
                            (椎名林檎「闇に降る雨」)

   奇想天外 されど安定
   しかたなしに懐かしむわけだ
   ここで即興 これぞ絶叫
   不意の忘却 乱痴気騒ぎだ
                           (石井秀仁「ギャラクシー」)

   「ねえ、なんであなたは上下さかさまなんです? 」
                             (ケムリ「トーキョー」)

              +++


   改札を出て3歩あるくと電車の中に置き去りにされたあたしの影を思い出す
   わすれる?
   握り締めたままふやけてしまった切符はあたしを駅から出してはくれない
   (ねむれないよ)
   夢を見る
   あたしは改札口にハムを無理やり詰め込んだ女の夢を見る
   女はあたしだ
   あたしのハムはとてもやわらかい
   (おいしい)
   やわらかく自動改札機の中に吸い込まれていく
   吸い込まれるハム
   そのやわらかさを夢の中で思っている女の夢を見る
   見るのはあたしだ
   あたしは電車の中に置き去りにされて泣いているのだろう
   (そんなもんだ)
   切符を握り締めたまま目をこする
   ふやけてしまったあたしの手が改札口に吸い込まれる
   幾重にもかさなった手
   あたしの手はつぶされて ハムになる
   やわらかく置き去りにされる
   薄くスライスされるやわらかさ
   むこうがわの自動改札機の出口からひょっこりと顔を出す
   駅から脱出できたハムがつかみ取られる
   (いつかどこかで また  つぶされてしまえ)
   ひょっこりと顔を出せないあたしは改札機械の中で夢を見ている
   夢を見ているあたし
   あたしの夢を見ている女が置き去りにされている
   女はやわらかいあたしの涙でふやけてしまった
   あたしにすら気づけないまま  4歩目にはわすれてしまう


              







                                      .

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2639 : 人魚の煩い  菊西夕座 '08/03/01 19:20:08 *1


   夕暮れに      浮かぶ人魚の砂の声
   聞き逃す      魚の群れは底深く
   蒼黒い       渦に尾鰭を刻まれて
   剥がれゆく     薄紅色した艶のある
   鮮やかな      くびれを描くあの鱗

   岩盤で      ひとりひそかに砂を噛み
   海原の      荒れるしぶきを背に受けて
   黒髪を      滝のごとくに落としつつ
   溜めすぎた    瞳の泡は堰をきり
   下手から     もげる鱗が海に散る

   絶え間なく    潮はもだえて逆さまに
   降り注ぎ     乙女の肩は波をうち
   粉々に      崩れたものはとこしえに
   身を滑る     磨いたばかりの爪に似た
   清らかな     半透明のあの鱗

   遠巻きに     船は嘆きの煙(けむ)を吐き
   沖合に      かすむ姿は悲しくも
   やるせない    流れのままに行き過ぎて
   はらはらと    夢幻の尾鰭は朽ちてゆき
   思いでの     うすき鱗が海に舞う

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2627 : 死者の記憶=世界  いかいか '08/02/25 18:23:36

死者の記憶のほの暗い洞窟、
松明をともして、
夜半に出かける、
首九つの村の中で、
女達が生み出すのは、
まるで顔のない人間たち、
引き剥がされた、
引き剥がされた、
と、
私の友人は悲しく言うが、
それはもうだいぶ前の話、

顔のない誰かの音楽を
僕らはやっている、
彼は百年前に死んだというが、
まるで酸素の様に、
その記憶だけが
世界に満たされている、
神童と呼ばれた頃の顔は、
すでに引き剥がされて、
女たちは
村九つで、
首をひとつ植え替える、

借り入れるの季節、
女たち、
皆、農夫になって、
歩き出し、
田畑を切り開く、
そして、
首十の村で、
八つの顔を挿げ替える、

贈与、
された、
死者の洞窟の奥で、
私が見た記憶の中で、
もっとも鮮明だったのは、
あのおかしな文化人類学者の詩、
彼の顔は引きがされてはいないが、
ひどくゆがんでいる、
闘牛のせいだろう、

首ひとつ、
田畑が三つ、
家四つ、
植え替えの季節、
男たちは、
裸のまま、
サンダルを片方、
そう、昔、あの男がやったように、
岩の上に置いて、

顔なしの祝祭、
皆して、
女たちを刈り取る、
男たちは植え替えられて、
静かに寝静まる、
納屋の奥で、
馬が見届ける、
ぼんやりとした
便器の上で、
蛙が雨を待っている、
鉄の老人は、
胸を締め付けられて、
今にも飛び出しそうだ、
そう森の奥から、
はじめて降る雨が、
酸素をかき消す、
紛れ込んだ野鼠の尻尾が発火し、
水中で炎がともる、
そしてここで、
私は始めてどもる、

今日は
重力が晴れている、
まるで、
追い落とされた
最後の生き物たちが、
簡単な会話をすませて、
家を焼くように、
そう、今日は祝祭、
村一つ
首二つ、

生きている人間はもういない、
皆、死んでしまっているのだから、
あの懐かしい腐臭がする、
そう、まだ私たちが、
野兎を追いかけて、
悶絶しながら、
射た弓が
返し矢となって、
胸をいるように、

腐臭は記憶なのだから、
それをすって、
記憶になるまで、
私たちは何も知らない、

今日は雨が降っている、
世界と切り離された批評家の運命を、
笑うには最適だ
毒を飲め、

首七つ、
村一つ、
刈り取られる、
植え替えられる、
鉢の中で、
にこやかに笑っているのは、
私の知っている人だったり、
私だったり、

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2636 : 野焼き  吉井 '08/03/01 10:09:04  [URL]


 春を待たずにたわけて
 反り返るタンポポ
 地表に枝垂れ固結する植物ホルモン

 この身を外しみずからの骨を焼べる
 ヘリコプターの黒い影
 あなたの眼差しのノイズ

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20080301_617_2636p


2646 : 「 裂けるため、の眼の。 」  PULL. '08/03/03 09:21:46  [Mail] [URL]



前略。

眼を閉じて、
瞼の向こうのあの入り江まで、
ずっと、
裂けてください。




一。

 かわいた夜のあなたは眠れない、寝葉樹の葉で煎れたお茶を飲んでひとり、ベットの上で、いつもの手紙を読み返し、やがて、眼を。



二。

 ぽとり。ぽとり。
 こぼれた雨脚がベッドの上を歩き回り、溺れた枕があわあわと獏の群れを吐き出して、やっとあなたの部屋は、浅い、眠りの波間を漂うのです。机の上の手紙はびしょ濡れで、部屋の、鍵穴からぽたぽた逃げ出した雨脚が、息せき切って階段を駆け上がり、古い、あなたの屋根裏部屋を、すみずみまで満たします。
 そうして、天井まで満たされたあなたの家は、ひたひたと、こぼれ、誰もいない夜を歩き出す。



三。

 天窓からは月が、手を伸ばし、ひと眠り、掬い上げては雲に垂らします。
 うるおった雲は寝返りを打って月を隠し、隠された月はこれ幸いと、十五夜ぶりの居眠をはじめ、眼立ちたがり屋の月のいない雲間ではきらきらと、星たちが舞いひかり、夜を、歩くあなたの家を照らします。



四。

 そろり、そろり。
 濡れた手紙からことばが剥がれ、枕の吐き出す獏に乗り、あなたの瞼に、悪戯をはじめます。



五。

 うなされあなたの家は立ち止まりそのまわりをけたけたと、大股で、雨脚が笑い回るのであなたの家はさらにうなされごぼごぼと、咳き込んで、家中の家具という家具を玄関から、吐き出しました。吐き出された家具たちは次々と、雨脚たちが持ち上げて、近くの夜の水溜まりにけたけたと、投げ入れます。投げ入れるごとに雨脚の笑いはおおきくなり、おおきくなるごとに水溜まりもおおきくなり、ひろがり、激しく、波打ち、笑い、家具のない、やせ細ったあなたの家を揺らし、濡らします。



六。

 ふやけた眼球はぱちん!。
 と、音を立てて弾けたので瞼は窪み、入り江の奥へと雨脚は歩を進め、かわききった浜辺にひたひたと、足跡を付ける。
 天窓からはじりじりと血走った太陽が昇り、足跡をひとつひとつ、消してゆく。



七。

 浜辺に打ち上げられた家具を拾い、部屋を、つくる部屋はどこまでも続き、やがて入り江があなたの、家になる。



八。

 熱く、ゆっくり沸かした湯の中で、寝葉樹の葉はふるくると回り、葉を開く。裂け眼はじっと、それを見つめ、煎れられるように湯の中に、とけ込んで、ゆく。



九。

 雨脚の、かかとを踏んで、あなたは今日も、転びます。眼は雲よりもたくさん雨を含むから、あなたは今日も雨を、降らしました。
 さあ立ち上がって瞼を閉じて、波の音のする方へ、裂けて、歩きなさい。



十。

 眼に入った砂を落とそうと、裂け眼を海に浸けて瞼を開き、眼球を、あなたはなくしました。
 あなたの眼球は海に沈み、朝とともに昇ります。
 だからあなたは朝になると、裂け眼を眼一杯ひろげ、あの太陽を飲み込むように、瞼をおおきく、閉じるのです。








追伸。

同封した寝葉樹の葉、
眠れない夜に使ってください。
くれぐれも、
飲みすぎには気を付けて。




           了。

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2652 : 戦争と色   '08/03/07 03:37:59  [URL]

年齢も性別も国籍も違う十人ほどのグループが 何処かの学校の教室で
輪になるように椅子を並べて 戦争について語り合っている
ある者は宗教上の解釈の違いによって亀裂が生じ
武力で認めさせようとしていると主張し
またある者はそれもあるが結局は自分達の欲望を満たす為だと結論付けた


それらに無理矢理服従させられていたり 戦争に全く興味が無い人間達は
そんなことはどうだっていいんだ ただ幸せな生活を送れればいいと思っている
実際はその通りだけれど 純粋で正義感のある人達は
戦争を止めさせるために戦渦の中に飛び込んで 尊い命を失う
内臓で戦争の恐怖を微かに感じる僕達は やっぱり戦争について関心が少ない


日々の生活で精一杯なのは自分でも分かっている
でもTVの向こう側の世界や新聞紙の表面に滲んだ画や文字は
真剣に関わり合いたいけれど 関わり合いたくないという気持ちにすり替える
本望は乳酸として腹部に溜まり それを解消する為に詩を書かざる終えなくなる
自分の思想を無理矢理武力という単細胞的な行使で押し付ける人間達と同じように
結局は自分の欲望を満たす為だと認識しなから


「昔の日本でそんなこと言っていたら君は確実に処刑されているね」
とグループの一人が笑いながら訛りのある英語でそう答えた
僕の心は青ざめたが そんな輩はとうの昔に死んでいるので彼らには聞こえないし
また実際に世界中で争い事をしている奴らには聞こえないと思い安心した
でも心を見透かされて「僕は彼らの子孫だよ」と言われた時には全身の血の気が引いた


最後に黒人の女子高生が
「どうして私の先祖は肌の色が黒だったからって虐げられたのかしら?」と問うと
「白は正義 黒は悪、悪いもの、醜いものという先入観を植え付けられていたからかな」
と黄色人種のサラリーマンが答えると
彼女は無言で首を横に振るばかりだった
宗教や肌の色のことで争い事をしていないのは日本人だけだと考え
またもや心を見透かされ 僕等は最も欲の深い人種だと隣の国の女の子に睨み付けられた

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2594 : 恋歌連祷  10  鈴屋 '08/02/06 20:42:21 *5

10


岸辺にいると不安なので
内陸へ向かう

わたしが愛するあなた あなたを捨てにいく あなたの
首はなだらかな丘の頂にそっとおく あなたはけっして
ふり向かない木になる あなたの腕と脚は束ねて括って
寂しい駅のベンチに忘れてくる 学校帰りの少年がひと
り美しい眉をひそめる あなたのコスモス色の10の爪は
ティシューに包んでポケットにおさめる あとではじい
て遊ぶ あなたの眸は秋の曇り空に投げ入れる ときど
き瞼をあけては道行く人の背後を見詰める あなたのト
ルソーは湖に立たせる 千年昔の悲しい恋の伝説になる
あなたの唇はポスターにして街中の壁という壁に貼る 
万人があなたの唇を買い求める あなたの血液のことご
とくはわたしが吸いつづける わたしの永い逃避行の糧
とする あなたの女性器は荒れ野の枯れ木に吊るし北風
に晒す わたしはその荒れ野で泣きながら夕日を見る 
わたしが愛するあなた あなたを捨てにいく あなたの
すべてを捨ててしまえばわたしは旅を終え紳士服など買
いにいく

ドアミラーの中の青空
はるかな送電塔の数列  

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- ealis -