君がそっくりパフェを食べきる間に
わたしが考えていたことといったら
バーゲンに出ていたあの指輪を
リボンをかけたかわいい箱に入れて
どうやって君に渡してもらうか
ただそれだけ
グラスの氷をもてあそびながら
どうにかこうにか思考を巡らす
計算でなく 笑顔はかわいく
ちょっと小首を傾げてみたりして
あなたが食べてる姿を見てるのが幸せなの
なんて素振りをしてみせる
ショーウィンドの中を覗いて
同じ顔で振り返れば
君のお財布のお口は開くかしら
ダメ押しに
パフェより甘い甘い 甘ったるい声でお願いしようかしら
君の眼を見つめたまま 少し恥ずかしそうに
それとも 君はそんな安い男ではないと?
ウエイトレスの運んできたクリームソーダは溶け切って
夢のかけらも残しちゃいない
偽って
こんなもの頼むんじゃなかった
君がいなけりゃ ここにあるのはブラックのコーヒーと煙草の吸殻のはずなのだ
お会計の前にトイレに行くのは「お友達」間の常識
鏡に映る顔に嫌気が差しながら
化粧直しでどうにかこうにか自分を飾る
そんなときだけ ふと現実に戻る
あの指輪ほど 私に価値はあるのかしら
カランコロンと扉を開けて君の顔を見た途端
そんな殊勝な考えはなりを潜めてしまうんだけれど
君の腕を取り
なるたけ自然に振舞いながら
目指すのはただひとつ
愛を換金する好意のみ
君がうまくだまされてくれることを望んでいる
指輪の先に見えるものが ネオンのお城でもかまわない
所詮 只々
子供のまま大きくなっただけの私の耳に
真実なんて言葉は届かない
真摯という言葉の存在を
いつのまにかゾンザイに扱っている
きっとそれは私だけではないはずで
結論
この世には愛が満ちていると思えるほど大人でもなければ
欺瞞だらけだと言い切れるほど子供でもない
なにを持って其と呼ぶのか
その定義を私は知らない
欲しいのは
あのショーウィンドで手招きしてる
イミテーションダイヤ
中指に光るリングの向こうで
物欲という神様が
ネオンのお城をバックに手招きしていた
カードを読み取る機械音とともに
君と私のカウントダウンが始まる
私は五分後 中指に光る指輪を夢見てる
その横で
君は数時間後のシーツの海を夢想するのだ
> どうやって君に渡してもらうか
> ウエイトレスの運んできたクリームソーダは溶け切って
> 夢のかけらも残しちゃいない
> こんなもの頼むんじゃなかった
> 君がいなけりゃ ここにあるのはブラックのコーヒーと煙草の吸殻のはずなのだ
> あの指輪ほど 私に価値はあるのかしら
> 君の腕を取り
> なるたけ自然に振舞いながら
> 目指すのはただひとつ
> 愛を換金する好意のみ
> 君がうまくだまされてくれることを望んでいる
>
> 指輪の先に見えるものが ネオンのお城でもかまわない
> 所詮 只々
> 子供のまま大きくなっただけの私の耳に
> 真実なんて言葉は届かない
> 真摯という言葉の存在を
> いつのまにかゾンザイに扱っている
> きっとそれは私だけではないはずで
>一つの話としてキリのつきそうなところまで勢いで書いたっていう感がある。
>全部で一つというには各テーマが順に独立したように描かれていて、演出面での粗さが際立つ印象。
> どうやって君に渡してもらうか
>ここでは“わたし”の注文も“パフェ”の方が演出面の効果としては大きいじゃないかな。
>“わたし”のかなり露骨な思考と“ネオンのお城”という言い方にものすごいギャップを感じて
>あと、ちょっと戻りますが、“指輪”の代償として終盤ながらに出現するキーワード“ネオンのお城”ですが、やっぱり唐突。
>願わくば“わたし”にもっと読者の関心を「くすぐる」魅力があれば、言わずもがななのですが。
>現実からの飛躍感がない
>しかしこれはまったく現実(あるいは現実に似せたフィクションであっても)そのまんまで、出来事の背後に広がっているべきイメージがない。
>現実の出来事(あるいはフィクショナルな出来事)や心理をただ伝えたというだけでは小説等の散文と変わらなくなってしまう。
>意味や脈絡はまったく書いてあるとおりで難解さはまったくない。男に宝石を買わせる女性の手管や心理が細かく描写されていて面白くもある。
>男と女の浅い付き合い、といった感じしかしません
>もっと葛藤している心情を描いて欲しかった
>「君」のおかげで全体的にかわいい印象になってしまい、そこもなんだか中途半端
>どこかのお金持ちのボンボンを騙してるだけのような印象です。
>所々すれっからしの大人の女性の表現とも読み取れるような部分が可愛さから遠ざかっていて、チグハグな感がします。
>彼に買って欲しいという感情をなんの疑いもなく抱くのではないかと
>柚木さん自身の主人公への客観的視線と主人公の感情とが混在
「東京って空気わるいよな」
とっとりの田舎からでてきた僕ら4人組 18歳
いきがってた
エルメスとかグッチの看板を見上げながら
へっ!
「しょせん毛唐の資本でもってんじゃんかよ このマチはよー」
ところがだ
前から歩いてきた
ものすごいミニのモモのおねーちゃん・・・
「オイ この街でがんばろうな」
「うん」
固くコブシをふるわせ
誓い合う4人であった
最初にバンドの夢をあきらめ
リーマンになったのがよーちゃんだ
最初は反対していた3人も
スーツ姿のよーちゃんをみて泣いた
「おまえ アタマ良かったもんな」
良かったといっても
真ん中へんの下の下くらいだ
オレたちの中ではアタマが一番切れた
なにしろピタゴラスの定理がわかるというんだ
「きっと よーちゃんは世界の真理を解いてしまうに違いない」
そのまぶしいスーツ姿を見て
オレらは固くうなずきあった
しかし よーちゃん
そのネクタイの趣味は
サラ金のヤッさんだ
そこで3人はは軽く目を伏せた
一番最初にカノジョができたのは
バンドでもビジュアル系のまこちゃんだ
22歳の春だった
コンビニのアルバイト先でゲット
その晩 オレたちは
「まんこ」とか「ちくび」とかの話を
えんえん語り合った
「グラマー」と「ポッチャリ目」の境目について
ふかく そして激しく
議論がわかれ
エロ本の知識を
総動員しあった
まじモンの裸を
みたやつは
その時 誰もいなかった
22歳だ
最初に東京をあきらめたのは
たくちゃんだ
実家が農家で
急に日本の食文化を支えるなんて言い出した
「食文化」・・・。
オレたちはその素晴らし響きを疑った
たくちゃんはきっと
何かにだまされている
「目を覚ませ たくちゃん」
オレたちは
それぞれの膝のふるえを抑えることができなかった
「たくちゃん!」
オレたちはみんな
たくちゃんの胸に飛び込んで行きたかった
だが たくちゃんは
ハンカチで目頭を押さえ
東京へ来た時のまま
ボストンバックひとつ
黙って出て行った
ひとり残された部屋で固くオレは誓った
まず「永ちゃん」のポスターを
一番目立つところへ貼りかえる
「永ちゃん・・」
彼は魂の反抗を永遠にはんすうし続けるたまげた奴だ
オレはひとり畳の間で
膝を折り テーブルの上で
晩ゴハンにかけるキューピーのマヨネーズを
握りこむ手も自然と深くなる
そして1年まえからぱったりと途絶えた日付けの
かぁちゃんの手紙を手に取り
カエルのお産ののように零す
そして携帯を握りこみ
実家の番号をダイヤル
「現代 この番号は使われておりません」
でんわの向こう側で
かぁちゃんは少し笑いながら
そう言ってた
体全体に激しい揺れを感じた瞬間、全てが終わったと思い、「地震だー!」と叫んだ。
左右に強い揺さぶりを受けながら、都心が崩れ落ちる音を聴いた気がした。
世界が暗黒とも呼べるまでの闇に支配されていく。
広く蒼かった空は暗黒に覆われ、緑だった樹木は炎に焼かれて炭と化し、群青色の海は一瞬で泥水に変えられた。
自然の偉大さを再確認させられると共に、それに逆らおうとした人類の愚かさを悔いた。
その過程の中で、今までやってきたこと全てが走馬灯となって脳内を駆け抜ける。
明かりの一つ一つが数々の愚心・愚考・愚見に思え、人類の各自がそれらを悔いた。
各云う私は、
小学生時代に、同じクラスの、今や名前も思い出せない女の子を仲間外れにしたことに始まり、
中学生時代、当時付き合っていたO君を酷い降り方で振ってしまったこと、
高校生時代、一時期は付き合っていたF君に振られた後で、若干ストーカーとも思える行為に出てしまい、彼を困らせてしまったこと、
大学生時代、N君から逃げるようにM君との略奪愛に応じてしまったこと、
そして現在、O君を愛していながら、知人のIさんにホテルに誘われた際に心が揺れてしまったこと、それらを悔いた。
些細なことかもしれないが、それら後悔の点一つ一つが列を作り、白濁色にも似た河の上で走馬灯と化したのだった。
やがて揺れはおさまり、都内の全ては元通り再開し始めた。
走馬灯の一つ一つは見事に川を流れ切り、やがて水溜りに辿り着いた。
それら後悔の点一つ一つを完全に無くせるとは思わない。
一つ一つの点が全く描かれていない、まっさらな白キャンバスに戻せるとは思えない。
ならば少しでも悔いを無くせるよう、
今後は後悔しないよう、
点を消せるよう、
慎重に生きなおしてみては如何だろうか。
そうしていく中で蒼色はそれと近い色になり、緑色もそれと近い色になっていくに違いない。
群青色もそれを取り戻し、限りなく元通りに近い形になる。
ぎりぎりのところで時間の猶予を与えられた人類、
その中に在る私。
駆け抜けた坂の名前が
吹き抜ける風の匂いが
背中から伝わるその鼓動が
今も、まだ。
狼どもに盗ませてきた
森の盲目の女の絵を
娼婦どもに自慢してやったよ
あまりにも幾度も盗まれるものだから
森の盲目の女の絵は
その独特な静けさの中に
悲しみまでも帯びてくるようになった
俺は娼婦どもに
その悲しみがどこに表れているか
事が終わった後に事細かに説明してやる
実際、娼婦どもは
下手な街の評論家よりも
遥かに美意識に鋭い
おかげで 今では街のどの娼婦も
俺に軽蔑の眼差しを投げかける
>実際、娼婦どもは
>下手な街の評論家よりも
>遥かに美意識に鋭い
>狼どもに盗ませてきた
>おかげで 今では街のどの娼婦も
>俺に軽蔑の眼差しを投げかける
>本人はただただ、「ああ俺は情けないなあ」なんですが。
急に足場が崩れ、空を飛んだ。
落ちた?
そんなはずはない。
なかなか地面につかない。
土は何処だ?
どんどん落ちる。下は何も見えない。
上には光が見える。
金か?
ここには何もない。ここには何もいない。
落ちる、落ちる、落ちる!
更に加速がつき、風になった。
無くなった?
そんなはずはない。
なかなか呼吸が出来ない。
海は何処だ?
どんどん落ちる、上は何も見えない。
下には闇が見える。
涙か?
ここには何かがある、ここには何かがいる。
落ちる、落ちる、落ちる!
そでなしの服で
着飾った女の子
たちが列をなして
あるいて
いきます
いつか
砂地にあしをうずめ
立っていたとき転ぶことも
できなかった
清い流れを
せきとめる中洲のなつくさ
は砂を喰い水を喰い
昼をとめて溢れる
光
女の子
たちははなやかなにのうで
むぼうびに焼けた
ひたい
あしをひたす
ことのできた清い流れ
いやがり泣くわたし
を誰ひとりとして
ゆるしてはくれず遠ざかって
いきます
>いやがり泣くわたし
>を誰ひとりとして
>ゆるしてはくれず遠ざかって
>いきます
>あ、でも、2連めとか、すごい好きでした。
>幼年期の軽いトラウマ感が書かれているのだろう。
わたしは添い寝をする あなたの
あどけないくちびるへと 甘酸っぱいやすらぎが染みこんでゆくように
わたしは添い寝をする あなたの
黒目がちの眼にかぶさるまぶたに 香ばしいほどの夢が降ってくるように
あなたはどこまでもどこまでも透明になろうとして
カーテンを閉めきったり 部屋の明かりをぜんぶ消したりして
誰もしることのできやしないどこか底の底のほうへと
カラダのすべてを使ってしずみこもうとしている そうやって
あなたは眠りこもうとしているのだけれど
あなたの横たわっているベットのまわりが暗ければ暗いほどわたしには
あなたのカラダの輪郭が人恋しさをともなってほの白く
この深いよるに 浮かび上がってくることを知っていのだから
いま、はじめて、
わたしはあなたの輪郭だけをすすり それが 今夜 あなたとちがう夢をみる夜の合図となって
はじける 何かが、はじまるために、まず、
ほつれさせてゆく夢というものがあって、いま、わたしは添い寝をはじめる
もしかしたらあなたの
そのまぶた まつげ 頬 わたしの視線がなぞった先に
あなたがゆるやかに起きはじめてゆくのではないかとの不安はあるけれども
>わたしはあなたの輪郭だけをすすり
>はじける 何かが、はじまるために、まず、
>ほつれさせてゆく夢というものがあって、いま、わたしは添い寝をはじめる
>香ばしいほどの夢が降ってくるように
>最終行の「あなた」はなにかしら冒頭の「あなた」とは変質している感じをうける
>何故か確かな印象として残らないんです。どこかぼやけているんです
>1連を削った形で書いていった方が、訴求力と広がりが出るんじゃないでしょうか
>出来としてはよくない
夏は夏になるのをやめようとする
蝉が蝉の音をどこかへ置き去りにしたのか
足元から広まってゆく冬は答えた
ぼくの中の雪を降らす雪のせいだろうと
陽にけむる
あの真昼の月に触れたい
空と空のあいだに立ちつくしているのは
氷の鳥の群れ
背後をとなりを目の前を
悲しく溶けてゆく
川になり雨になり水になったひとは教えてくれた
地図に載らない海があると
泳いでも泳いでもたどりつかない
永遠と一日の地平線
そこからぼくはまだ許されないのだろう
夏のない氷塊のようにこの夜の果てで
>妙な混じりけを持った平板さを含んでしまっているような気がする
>なにか心が凍てついているようだが、宥されるときは必ず来る
>描き出すことと、書き出すこと。
>映し出すことと、写しあわすこと。
決して望んではなかったけど
くずれてもほしくなかった
僕は永遠と信じていた
ないと思っていた永遠の光が
君と共に僕の心に見えたんだよ
このままいつまでも続くと思っていた
僕はうぬぼれてたのかもしれない
伝えたくても何かでつかえて伝えられなかった
「大好き」が
まだ僕の心にはあるよ 輝きを持っている
空が青くても 海が青くても
君がいない僕の心は何もない
いつも僕の心は白く滲んでいる
伝えたくても 伝えられない
離れてしまった君は もう…
この想いは何の価値もなくなってしまった
伝えれる時に伝えられなかった
もう…ここに君はいない
これから僕は一体何を支えにして生きてけば
いいんだろう
一度別々の道を歩き始めた僕たちは
二度と戻ってはいけない そんな運命なんだよ
君は君の別の世界がある
僕はこの世界を歩んでく たった一人で
これが僕たちに定められた運命だったんだ
本を読む
目が文字を耕す
センテンス
雑草は生える
何度も読む
居場所はない
澄んだ空にも
病んだ雨にも
居場所はない
海岸線を飲み込んだまま
境界の糸に
ぶらさがったまま
トレチア
トレチア
に首根っこを掴まれる
夜の川だ
落とされてしまえば
拾う木のようなイエロウ
ハッとする、細身の悪魔
は
プロペラは
夜の巣を見た
月がふたつ
明日には4つになる
今日をしぼり
明日のたしにする
洗濯をして
性器を洗う
煙草も吸う
等間隔に転がる傘の柄
が、金魚の砂の上、に
暗い色の整列
さめた性器が硬直する
死んだ輪郭を撫で付ける
止まない痙攣のまま地面を蹴った
逃げないように縫い付ける
トレチア
蹴るトレチアだ
トレチアは服の中に手を突っ込む
かみのけのなまえをすばやくゆい
足の裏側を舐める
何も見ていない
瞬きより上下するはやく頭
で描くのは
鮮明過ぎた四角い視界
インタホンが鳴るまで
ピアノみたいな声がビロビロ散って
蟷螂は握り潰され
静かになくなる
止まない痙攣のまま体を蹴って
無口に入れる舌を
いやぁな、ながさ、を
壁を/血の付いた/叩き続ける
木目/意識/薄れ
柄の無い傘を差していた
ビスケットの割れ目
本を読む
目は文字を耕す
雑草が生える
繰り返す
金魚の尻尾を千切り
の
た
炭
十 酸水 、
架字 十 浸
架 け
に
ひ。
>けれど、トレチア、というのがなんだかわからなくても
>難点は侵食される日常世界の側にあまりに多くのイメージがありすぎて侵食
>感がボケてしまう。もっと言葉を絞ったほうがよいように思う。
>言葉によって日常的世界を逸脱していく感じのものが多い。
ゆら ゆら
ゆら
浮遊する、僕
ソーダ水の中
そこは 透明な∞
ゆら
ゆら
窓越しのソラ
青く 映る
ゆら ゆら
ゆら
気泡に包まる体
ゆらゆら
ゆら
無気力に
夏が終わる
> 浮遊する、僕
>無気力に
> 夏が終わる
> 窓越しのソラ
書物に覆われた に違いない兎 の跳躍
その兎は反陰陽 疑いもなく残 酷な緑の中で
再び巡る季節を
やりすごそう としている
自動人形が語る 言葉はぎょっとす るほど空疎で簡素で
瞬きをしてしまう してしまう
不思議なことに どこでもそ れは風景をいつでも瞬間にし
飛ぶ鳥をも 閉じ込めてもしまう
ただ円還の中で 天使を抱えた子 供たちが走り回る
虚無はどこかと 恩寵はどこかと
>虚無はどこか
>恩寵はどこかと
もしもあそこに水溜りが見えるんなら
それは雨上がりの水溜りで、私が周囲に取るべき内面の浅さなんだろうね。
何も望んで「口下手」になったわけじゃない
ただ 自分の考えを人に話せば話すだけ
周囲から反感を買われることが分かるから
私は自らを閉じたほうが良いと思うよ
人からは「暗い奴」とか「詰まんない奴」とか「話題がない奴」とか言われるだろうけど
この社会で生きていきたいなら水溜りに群がるアメンボになった方が良いよ
今更ながら言うけど、約10年前に交通事故で一度「死んだ」時に
私の何もかもが、その形すら失ったんだ
>もしもあそこに水溜りが見えるんなら
>それは雨上がりの水溜りで、私が周囲に取るべき内面の浅さなんだろうね。
わたしたちは小学校のプール跡に住んでいた。
もちろん家に住んでいた。
プール跡に、家が建ったのだ。
ともすれば思い出したように、夏にはテーブルの上にサトウくんが立った。水泳大会直前に溺れて亡くなったサトウくん。サトウくんの事は昔から知っていた。わたしたちはその小学校の卒業生じゃなかったけれど、そんな話はどこでもあるもの(というのは嘘だ。毎朝家の前を通る小学生がおトイレを借りにきたので、聞いた。でも大概は本人が話してくれた)。水泳大会直前に溺れて亡くなったサトウくん、は実は小石川くんという名前で、わたしたちはこの街に水泳大会(しかも小学生の?)があるなどと聞いたことはないけれど、でもサトウくんは立つ。
テーブルはおよそプールの真ん中だったらしい。もう泳げる気がしない、とわたしたちが言ったら、僕もだよ泳げる気がしない、とサトウくんも言った。でも泳げたんでしょう、と聞くと、傾げるサトウくんの白い首筋
サトウくんの好きだった女の子はミチコさんと言ったらしい。内気なサトウくんはミチコちゃんと呼ばなかった。でも本当は呼びたかった。わたしたちが夕飯を食べていると、たまにミチコちゃん、が落ちて混じっているから知っている。夏には落ちていない(サトウくんは内気だから)、かすかな、ミチコちゃん、という名前。やさしいのにからからにかわいている、ミチコちゃん、は野菜の中で不思議なアクセントを加える。食べるととても、
ミチコちゃん、はサトウくんと比べて落とし物だ。そこにぽつぽつと落ちていて、話したりしない、もちろん。人の形もしていない。ミチコちゃん、という名前は例えば、コロッケの衣のかすのようなものだ。やさしいかす。
そういえば、サトウくんは海パン姿で立ってる訳じゃない。服を着ている。白いシャツにカーキ色のズボン、汚れてほつれている。胸に名札と血液型、わたちたちは何度も血液型占いをした。これからの運命。頭は丸刈りだ。のばしてみなよ、とわたしは夏の度に言っている。泳げる気がしない。サトウくんはずっとわたしたちに言わなかった。
お盆までの、北の短い夏が終るとサトウくんは次の夏まで出てこない。一晩でふっと消えてしまう。一年中いればいいのに、と言うとサトウくんは笑う、でもサトウくんはずっと私たちに言わなかった。今年ももう少しでサトウくんは消える。明日は、水泳大会があるから。そう言って消える。14日、未明
そしてやさしく、ミチコちゃん、が降る。
サトウくんが立つところ、プールの真ん中、テーブルの真ん中、サラダの皿の中に。
わたしたちは小学校のプール跡に住んでいた。
もちろん家に住んでいた。プール跡に家が建ったのだ。
プールがなんの跡に建っていたのか、わたしたちは知らない。
>水泳大会直前に溺れて亡くなったサトウくん
>ミチコちゃん、は野菜の中で不思議なアクセントを加える
駆け抜けた坂の名前が
吹き抜ける風の匂いが
背中から伝わるその鼓動が
進みたいのに進めない
先に見える陽炎に いつかの僕が重なる
自動車の列は動かないまま
生憎と今は 助手席も空っぽだ
こんなときはいつだって 美しき過去がちらつく
一番深い聖域に 誰にも触れられないようにそっと
鍵をかけて仕舞ったはずが
いつのまにか全てにそれを重ねて
美化しすぎたようなそれが
実はちょうどいい
進みたいのに進めなかった
残るのは 焦燥感の裏に潜むもどかしさ
君の手を引っ張って 窮屈な箱を飛び出した
逃げ出すように 転がる二つのタイヤ
駆け抜ける坂の名前が
吹き抜ける風の匂いが
背中から伝わるその鼓動が
まるでエンジン
僕らは振り返らない
同じように
駆け抜けるだけ駆け抜けて終わった恋
一番深い聖域に 誰にも触れられないようにそっと
鍵をかけて仕舞ったはずが
いつのまにか全てにそれを重ねて
ハンドルを握り直した
少しずつまた時が動くらしい
それでも
駆け抜けた坂の名前が
吹き抜けた風の匂いが
背中から伝わったその鼓動が
― だっしゅ ― ダッシュ ― 奪取 ―
今も、まだ。
>青春らしさが炸裂していますが、それだけにしか見えません。
とても狭い窓から世界を見てるんだ
飛べない鳥が 首輪を失った猫が 歌を無くした歓楽街の少年が
そしてあの老人が視界に入った時だって 僕には何が見えていただろう
狭い景色にはとりわけ心が映らない 一番見たかったのはそれだったのに
昨日見たバラエティ POPでLightな音楽 他に生存手段は何も無いんだ
ローコストで大量生産される関係性 彼らはどこに繋がっていくんだろう
昇っていく副流煙を愛しげに見送って 老人はフィルター越しに人間を定義した
「それはパンクチュアルであることだ とても悲しいことだけどね」
「下半身の感動を10代で既に失った少年のような」
「青年期に社会主義に一度も傾倒しなかった男のような」
「生まれる前に死んだニヒリストのような そんな高潔さを持って」
「私はただ無感動に 世界を救いたいと思ったのだ」
ようやく少し理解できたよ 煙草を吸える年になったからかな
あの老人はずっと僕らを眺めてた 神様と同じ位置から けれど悲しげに
「君たちは頭上に目があるかのように怯えているね」
ポツポツと小雨が落ちた 神様じゃない誰かが泣いている
少し広くなった窓から世界を見てるんだ
飛べない鳥を 首輪を失った猫を 歌を無くした歓楽街の少年を
もしあの老人がまた視界に入ったなら 今度は何も喋らずに語り尽くそう
だから そうだね 今は一言だけ
「パンクチュアルな意味でさ さようなら」
>「それはパンクチュアルであることだ とても悲しいことだけどね」
>「とても悲しいことだけどね」
>昨日見たバラエティ POPでLightな音楽
>ローコストで大量生産される関係性
>彼らはどこに繋がっていくんだろう
>とても狭い窓から世界を見てるんだ
>「君たちは頭上に目があるかのように怯えているね」
>一番見たかったのはそれだったのに
>「君たちは頭上に目があるかのように怯えているね」
>頭上に目があるかのように怯えている
>「下半身の感動を10代で既に失った少年のような」
>「青年期に社会主義に一度も傾倒しなかった男のような」
>「生まれる前に死んだニヒリストのような そんな高潔さを持って」
>「私はただ無感動に 世界を救いたいと思ったのだ」
>あの老人はずっと僕らを眺めてた 神様と同じ位置から けれど悲しげに
>頭上に目があるかのように怯えている
>彼らはどこに繋がっていくんだろう
中空にいつかの ひかりの鳩が
埋め尽くしながらすれちがい
いちじるしい寂寥やら 俯き凍結した
懐古な木目の直線に 詠嘆なる向日葵の一閃の発火
ゆびさきつれづれ 塵のようなかおに
放心な床をころがす日光更新まで
反復を絶念した窓辺に そらはなんて遠いままだろうか
たそがれがいのちをいぶき
ほかでもない これからの色づく牢獄より
装飾をほどこし 枯れた無窮の力なきうでを
ワインに変える悠久のため息よ
トパーズ爪弾く 柔らかきレッドローズ
銀河軌道に サファイアの星海に
透過したヴィロー
真っしろな雲海 散り散り窘めた造形の幾何学に憂い
あしもとから しめやかな永遠の寥彩
しずのひかりだま
黒夜 淋しそうに氷悧をつみあげ
ふたたびの歩記 ルージュ漆黒を蒼々と燐光する
繊細でながい微熱に
ゆめをみていた
ああ 燦々たる
この宵の星欠けを駆け巡れよ
羽花とかし息づき
すがりついた かもめどうし
消え入りそうな永劫群をながめては
なんてちっぽけな あの日のあかねいろに
砕けた
せせらぎどこか遠く
いつまでも
きえるひのうたをきいていようか
すべてうそでよかった
>いちじるしい寂寥
>俯き凍結した
>懐古な木目
>詠嘆なる向日葵
>一閃の発火
>ゆびさきつれづれ
>放心な床をころがす
>日光更新
>反復を絶念
>いのちをいぶき
>色づく牢獄
>装飾をほどこし
>無窮の力なきうで
>悠久のため息
>すべてうそでよかった
>榊さんは、指を怪我されてキーボードが叩けなくなったんでしょうか?
>ワインに変える悠久のため息よ
>トパーズ爪弾く 柔らかきレッドローズ
>銀河軌道に サファイアの星海に
>透過したヴィロー
>真っしろな雲海 散り散り窘めた造形の幾何学に憂い
>あしもとから しめやかな永遠の寥彩
>しずのひかりだま
>すべてうそでよかった
>哀しくなった。 何故だか解るか?
ベランダの手すりが、染まっている。
鳥達が歩いている。反射する光。金光の中で、影だけが動いている。
僕はそれにむかって歩く。砂の城。
午後に降った夕立ちのあと。僕らが傘をさしたまま
歩いている。みんなが空を見上げている。人々の水位。
彼女はしゃがんでいる。太陽はすでに、砂に、城が崩れていた。
僕は彼女の手をとって、崩れ落ちた十字架に手をのせる。
ゆうべのうちに雨は止んでしまっていた。
十字架の下の、奥深く濡れてしまった砂の下の、
幾度なく通った歩道の下の、
訪れることの無い映像にまで、二人が重ねあう。
歩いていた。歩道の上を、
足元から灰色に戻っていく。誰よりも遠くなってしまう。
彼女は泣いている。いつまでも目をつむっている。
波が彼女のつま先にふれる。僕にはとどかない。
そこには風がある。砂がある。
そうして波の音があった。二人がいた。
下水道からあふれている。水が反射する色に、海。
それは海。
飴色には、あまりにも過ぎてゆく彼方に、海。
それは海。
白い長靴をはいて歩いている。雲の合間、顔をふせる。
彼女は目をつむっていた。
波は、ようやく僕のもとに届きはじめていた。
アスファルトに、波の音だけが残っていた。
そうして二人、傘を、さしかけたままで。
>dさま
>ミドリさま
車窓から 流れるままの景色を見ていた
導線を描くように
角ばった情景は解けてゆき
創りあげられたビル郡は
ひととき 灰色の絵の具に溶けた
止められぬ時が急ぎ足で過ぎてゆく
もうずっと扉を閉じている廃園で
寂しげに揺れる観覧車
極彩色のゴンドラが
鮮やかに視界に溶けてゆく
取り残されるのは
果たして
もう誰も訪れることのない夢の跡
もしくは
乾ききった眼をした私自身なのかもしれない
人恋しさにもたれかかる窓枠の冷たさは
孤独を思い起こさせる
いつの間にか燈された人工の灯りは
薄暗いガラスの向こうに
疲れた現実を垣間見せていた
背けるように眼を閉じ
ガラス越しに空を見上げれば
夕刻が空を染め
反転された世界を朱に染める
夕日が落とした緋の色は
ゆっくりと全てを染め上げ
赤とも蒼ともいえぬ穏やかな優しさで私を包んだ
どこまでも贅沢な時間が
今 空を支配していた
あぁ もうすぐあなたが 群青の夜を連れてくる
霧と秋桜のあいだを
飛んでいる
蝶が飛んでいる
ゆれている
秋桜の白はゆれている
少女のねがいのように
あなたには
英国人のことばで
宇宙がある
あなたは蜜をいのちを許し
蝶が飛んでいる
飛んでいる
海ほどにかなしい
この星の空へ
遠くの空へ
風は羽になり羽は風になり
秋桜のうす紅はゆれている
ゆれている
母のいのりのように
あいつは名高い結婚詐欺師
騙し取った額うん千万
俺の話術にかかった女は
100%仕留めるぜ
ある日男は恋をした
顔も心も醜い女
「こんなに好きにになったのは
生まれてこの方初めてだ」
数えきれないほどの女を
騙してきた男だったが
心から人を好きになったのは
今まで一度もなかったゆえ
どうしていいのかわからずに
悶え苦しむ結婚詐欺師
B級ドラマの真似事を
ただひたすらに繰り返す
貴女のことが大好きです
貴女のことが大好きです
貴女のことが大好きです
醜い女振り返らず
顔も心も醜い女
心のそこから愛されて
それでも心は醜い女
素直になんかなれないわ
「こんなに醜い私のことを
愛しているとほざくなんて
どーにもこーにも怪しいわ
もしやこいつ、結婚詐欺師!!」
疑って止まぬ醜い女
間髪入れずにヒャクトーバン
裁判所で女は叫ぶ
「私はこいつに騙された!!」
「確かに俺は詐欺師だが
君をホントに好きなんだ
信じておくれよお願いだ
心の底から愛してる」
貴女のことが大好きです
貴女のことが大好きです
貴女のことが大好きです
醜い女睨み返す
哀れ名高い結婚詐欺師
牢屋の中で何思う
涙に濡れる鉛筆で
女宛てに手紙を書いた
「10年後僕が出所したら
どっかの小さな教会で
二人だけで挙式をあげよう
それまで待っててくれないか」
手紙を読んだ醜い女
たった一言はがきに書いて
結婚詐欺師に送り返す
「あんたなんか、大嫌い!!」
貴女のことが大好きです
貴女のことが大好きです
貴女のことが大好きです
醜い女振り返らず
夏休みなのに、家にいて
別にどこへ出掛けるとか
そういう予定はない
遊ぶ友達もいない、涼しげな髪飾りもない
宙づりにされた風鈴を
真下から見上げている毎日
南から吹く風はいつもより慌しく
帰り支度をしている
はたから見れば
ひどく退屈な人間だと
唾を吐いて罵られるのかも知れない
はたまた
どうしようもない奴だと
瞳の光沢を奪われて開いた穴に
膿んだ嘲りをはめ込まれてしまってもおかしくはない
実家にも長い間帰ってない
連絡も来ないし、こちらからもしていない
郵便番号が一桁増えてから
住所も一緒に
忘れてしまった
仕方がないので
市民プールに足を運んだ
浮き輪を持っていこうか
どうか
迷ったあげく
息をしなくなった魚にかいすいを
そっと湿らせるみたいにして少しだけ
水深の深いところを泳いだ
足が届かないぶん
生きていることも忘れられた
老若男女が
大小の異なる水飛沫を上げては
それが太陽の光に映り込んで
熱さでキラキラとして
宝石に見えた
望みのある人
それがない人も
水の中では泳ぐことしか許されていない空間で
あどけない夏の間隙を
解けない喧騒がすり抜けていった
人の多さにびっくりした
別に吐き気はしなかったけれど
誰とも合わせないようにしていた視線
を、ろくに洗浄もしないままに
市民プールの匂いだけを
持ち帰った
風はまだ
帰り支度を
している
わかって欲しい
ぼくはシャッタルアラブの星
泳げるヤツは
溺れないらしい
右手の金を掴む、髪の梳かれたギャールの愛
チグリスは栄養のある女性だった
だけどヤツの売りさばく金融商品がハイリスクハイリターンであることを
誰も知らないなんて
ならば奪え!出来るだけ運動をさせたまま
鎮魂を握り締めた左の右は
そんなふうに、シャッタルアラブの星が降る
頭を上手に使えないヤツに告ぐ
逆転のチャンスならさっさと忘れて欲しい
そこのおまえ、ぼくの声が届く場所を知っているか
ケルベロスの首を洗うのは希望みたいなのをゆるく感じた朝がいい
そこには窓があるから
覗かれる窓を剥き出しにして、ぼくたちは
きっと夕方のアニメを見る
母親の帰らない
懐かしいあれを
鮮明に思い出せ!
べつに重たさを感じることもなしに持ち運んできた睾丸が、ふいにくしゃみでもしたのだろうか..一物のほうには、たしかアレは中学に入った
ばかりの頃からだったか、パンツを脱いで、勉強机の上に乗せ、ちょうど手の型をなぞる具合に鉛筆でそのカタチを模し、その成長ぶりをひそ
かにながめてはよろこんでいたこともあって、絶えず気を配っていたわけだが..妙に腰まわりの筋肉がじりじりと小水に涵って、またたく間に
ケツ骨がふやけていき、身動きしたとたん、がさつきながら崩れ落ちてしまいそうな即物感が脚の付け根にかぶさってきた。睾丸も風邪をひく
ことがあるのかと莫迦なことを想いながらも、当たりまえのことだなとうなずきながら触れてみると、たしかに熱をもっているようだ。診ると
剣崎するめのように袋が垂れていて、垢をこすって湿っぽく光った表皮が、露骨に浮き出たきん玉のカーブに肌をもたせながら息をしていたこ
とだった。手鏡をとって玉たちを持ちあげてみると、口紅の跡が尻の毛の生え際についていた。今朝の名残だ。雄の粘膜に浸っていた雌の細胞
が、そのへばりつく隙間に、アラビア糊のむずがゆさとなってぼくを昂奮させるのだが、どうしたことだ、とんとその兆しはお見えになる風で
はなかった。
背中に張り付く薄い生地
鼻腔に流れるぬるい風
暗く淀んだ厚い空
それら全てが告げている
ダレもが気付かぬ振りをして
皆が皆ソレを待っている
誰もが言葉を待っている
そしたら私も口にだそう
やがて雫が落ちてきて
地面を穿ったその染みに
肌に弾けたその震えに
ポッと響いたその音に
ダレもが気付いた振りをする
あっ、
斜めに流れる光線
カーブを切っていま
急行列車のヘッドライトが
直線区間に進入する
曇った空に響く雷鳴
直下降する雨のなかを
貫いて 小さな駅に
林立する人々の足もとを
かすめ
急行列車は光の波を
転送する
飛び去るパンタグラフの群
明滅する信号機の渦
加速する未来への矢印
急行列車は止まらない
枕木の連続は
切れ目のないなめらかな残像となり
人々の願いや苛立ちや
交わす挨拶は
高められた速度のなかで
斬新さを放つ物語として
刷新する
×急行列車に乗ろう
×加速する時間のなかで
×革命的な経路を選び取ろう
×急行列車に乗ろう
×目的地のない旅
×銀色の直線
×ただひとつの経路
急行列車はすべての駅を通過する
街や団地やオフィスビルの灯は
少女のちゃれ合う笑いや
子連れの主婦の
買い物カゴの中身と
席を譲りあい
吹き抜けの客車内で
静かにさざめく
信号機の光の潮を
すべて青にする
急行列車
最高速度のエネルギーは
革命広場で手を振る人々の
歓喜の声と混じりあい
祭りのあとの安息の昨日へと
反転する
僕は偶然だと思った
君と あの日 あの場所
すばらしく輝いてた君と出会った
同じ教室 隣の席
これは偶然に過ぎないものか
ずっと憧れてた君が今僕の隣にいる
今までは考えもつかなかった事
今日会った君はなんだか悲しそう
あの交差点 あの信号
また偶然が一つ・・・
次の日また あの交差点へ行った
君はいなかったね
その次の日 いなかった
教室では隣にいるのに 一歩外へ出ると遠くにいる君
今日は淡いコスモスみたいな可愛い顔した君
あの自販の前 あのチューハイ
僕はここで運命を初めて感じたんだ
今までの出会いは全て偶然だと思ってた
今僕はそれを運命だと思えるよ
次の瞬間僕の目に映ったのは
僕の顔の目の前に ある君の顔
思いっきり泣いている君
でもその腕は僕の身体を抱きしめてくれている
これから僕たちは二人で
歩んでいくんだね そう決めたんだ
モクモクと入道雲が顔を出す頃になると
ジリジリとあの暑さがやってくる
さぁ今年も見事に梅雨が明けたよ
地方によって期日が異なる梅雨明けは 北海道から沖縄へと単身で旅行に出た君には後悔を連れてきたに違いない
「あー本当に僕は暑いのが苦手なんだよ」
7月上旬のある日 沖縄へと飛び立った君から一通の手紙が届いた
「ジメジメした気候の方が僕には合ってる」
――そうさ、僕はナメクジなんだからね
嗚呼、九月の海辺
九月の海辺の夕べ
九月の海辺の夕べの十字路
小さい子が 屋根裏部屋から
じっと よそ者の僕を見る
嗚呼、僕は九月のけもの
九月のけものの姿
九月のよそ者のけもの
九月の夕べと同じ色だよ
嗚呼、薄暗い海
時化の薄暗い海
薄暗い海辺の街
漁師たちが酔い潰れて眠るとき
薄暗い九月の十字路に立つよ
アメリカのポートランドで
夜はバンドでドラムを叩き
昼間はバスの運転手
昼下がりの公園で
君と目と目が合った瞬間に
大事なことが
僕の胸ん中で目覚めたんだ
恋人をつくることも
酒を飲むことも
無駄ではない
確たる結論を
僕らはきっと
生きていたんだ
ポートランドの午後11時
地下鉄でサラリーマンが
長椅子に座って
欠伸をかみころしている
彼はきっと牛飼いで
スラム化した現代の
人々の胃袋にヒレ肉を送り込む
店舗マネージャーにして
スーパー営業マン
鉄筋コンクリート19階建ての
その1階にフックされた店内を
せかせかと歩き回る牛飼いは
時計の真ん中で
まっすぐに12を指し示し
立ち上がる長針たちの
放牧マネージャー
タミル語とイタリア語と
ベンガル語とカンボジア語の入り混ざる
店内の
文明を預かる
まるで梵語研究者
そして僕らはそのミシガンという店で
ブルーノ・ノッリの曲をサラダ料理にして
即興で曲を叩く
まるで街は錆付いた沈殿物を
底で抱えるように変身していく人々の顔は
その止まり木のような店で
音とリズムを南へ運んでいく
人々はまた懐かしがって
アインシュタインというカクテルや
ベートーベンというジンを分厚い手で握りこみ
いかにもクールに
そして突発的に
その手つき口元へ次々に運んでいく
貴方に逢いたくて
ただ ただ 逢いたくて
心が震えて 涙が止まらない
貴方は行った 私を置いて
好きなのに
どうしようも無く ただ ただ 好きなのに
声は枯れても 叫びつづける
貴方に 届くように
ひたすら ひたすら
雨の匂いが 貴方の匂いをかき消してしまう
貴方の匂い 忘れさせようとする
大好きでした 大好きでした
ただ ただ どうしようも無く 大好きでした
貴方に逢いたくて
ただ ただ 逢いたくて
心が震えて 涙が止まらない
そんな 夏の夜
想いは 溶けていった
私が立ち止まっても。
世界は変わることもなく 廻りつづけ
人々は見て見ぬふりをして 通りすぎる。
そんなことは 解っていた筈なのに
目の当たりにすると 受け入れることが出来ず。
私を 見て
私に 気付いて
呼びかけても 誰も答えてくれる筈が無く
ただ ただ
虚しさを抱えた私だけが 取り残される。
私が消えても。
時は止まることなどなく 過ぎていく。
その事実を受け入れることが出来てしまったとき
私は 自分がこんなにも欲している
他人への関心を
持ったままでいられるんだろうか。
>私が立ち止まっても。