◇ No.118 , '08/03/03 07:56:56 作成

2578 : 甘ったるいポエム  映画狂馬 '08/01/29 19:02:24

ラブ ミー テンダー
ラブ ミー ユー
ラブ ミー ラブ ミー ユー
 
とニコラスケイジが
唄ってる中
僕は砂糖とミルクの
たっぷり入った
カフェオレを飲んでいた
 
ズン・チャチャ・ズン
(少なくとも僕にはそう聞えたのだが)
と君が口ずさみながら
部屋に入ってきた
 
「なにそんな甘ったるいの飲んでるのよ」
と君は言った
 
僕はもう一口カフェオレを飲んでみる
確かに甘かった
 
でもこの前
一人甘ったるいカフェオレを飲んでいた時
窓から空を眺めると
赤い布団が飛んでいたんだ
 
布団は本当に真っ赤だった
それは空の青さとの対比のせいかも知れないし
僕は真っ赤に見えても
君は真っ黄色に見えるかもしれないが
 
それでも
甘ったるいカフェオレを飲みながら
真っ赤な布団が空を飛んでいるのを
眺めるのは
なかなか面白いものだよ
 
君も一緒に居たらよかったのに

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2579 : 「 かもなまいはうす!。 」  PULL. '08/01/30 01:53:36  [Mail] [URL]



 玄関がうるさいので「うるさい!」と怒鳴
りつけると「ハウス!」と鳴いて犬が実家に
帰ったのでだから、ぼくはこの犬小屋でひと
りなのだけれどでもぼくは、さみしくなんか
ない、さみしくなんかないから「わん」と「
わんわん」と鳴いていたら、隣のワンさんが
心配そうな顔をしてぼくをのぞき込んできた
ので「わん」と元気に鳴くとワンさんはおお
きな骨を一本くれたので「わんわん」と鳴き
続けるとワンさんは「わん」の数だけおおき
な骨をたくさんくれただから「ありがとう」
と言うとワンさんなぜか驚いてとっても驚い
て「きゃいんきゃいん」と叫びながら隣の家
に入って鍵を掛けてしまった、そうしてほん
とうにぼくはひとりになってしまったので「
わん」と鳴くしかなくて泣くしかなくて悲し
くて犬はまだ実家から帰ってこないわんわん。




           了。

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2582 : バンドネオン  Canopus(角田寿星) '08/01/30 21:44:15  [Mail]


レクエルド。
砂時計が音もなくなだれを成して舞い墜ちる
夜にあなたは迷いこんできたちいさな銀河を
手のひらでつつむように抱きとめる 葉脈を
透かしてみえる地球の裏側では生れながらに
しろい瞳のマリーアが影のまま生きつづけた
腰かけた椅子がわずかに浮きあがりそれでも
なお部屋に壁は在り床が在って誰も知らない
ラピュタがゆるやかな光芒をはなつ雲の濃淡
垣間見えるのはおそらくあなた 忘れられた
歌をうたう バンドネオンのはじまりだった

ハカランダ。
水のにおいがする波の音がきこえる日だまり
にたたなずむギターのように古い三階建ての
事務所あなたは仕事でいそがしく窓をあける
知る人のない並木道を踏みしめた 薄紫色の
花の絨毯をふたり 深く知ることの難しさを
確かめようとかたく手を握りしめる瞬間その
手のひらと手のひらのわずかな間隙を狙って
散りゆく花のかけらが忍びこみ溶けて静脈を
遡る 毛細血管から支流を抜け本流へやがて
心臓ちかくの大血管に到達する あたたかい

オルヴィード。
色鮮やかに縁どられた外壁を持つ建物の群れ
が鳥のように河岸に列をなす折しもあなたは
源流より大河へつづくながい旅程を終えよう
としていた草原を渡りあるいた記憶も誰から
ともなく伝えつづられた物語もたった今この
雑踏でうたいおどられる劇中劇さえも過去の
事象として忘れられた 変わり果てたあなた
にとってあなたは誰なのか思い出せない風が
いつしか体内をめぐりあなただけが持つただ
ひとつの音を響かせる バンドネオン ロカ

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2580 : はぁもにか  リーフレイン '08/01/30 09:41:27


駅前の地下通路に、両足の膝から下がない兵隊が跪いて座っていた
両手を通路にひいた筵につき
古びた歩兵帽子のひさしの中にはぎらついたまなこがあった
音がとぎれとぎれになるカセットの軍歌
前に置かれたアルマイト製の弁当箱には、10円玉が数枚
取り外された足が2本
薄汚れた包帯を巻いた松葉杖が2本

地下通路の端のほうは、乾いた小便の匂いが鼻につく
その匂いがきれるかきれないかの微妙な場所に座る
たよりなく点滅する天井灯は薄黄色い

ひとつ、またひとつ、落書きが壁に浮かび上がる
気がつけば、壁は落書きでいっぱいになっていた
薄い影のような男女が笑いざわめきながら壁にひしめき、
書かれては消されていく

夕方、ハーモニカを吹く青年が階段に現れる
空き缶を踊り場の隅に置いて
明るい音が通路にあふれた
疲れたような兵士は筵をたたみ、ゆっくりと足をとりつけ、
ぼろぼろになった背嚢を背負う
ハーモニカの青年に一瞥を送り、通路向こうへ去っていった

薄い影のような男女は笑いざわめきながら壁にひしめき続け、
書かれては消されていく


深夜、
ハーモニカの音はない
薄い影のような男女は
書かれては消されていく

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2535 : 12月の雨  如月 '08/01/08 23:58:05 *1

どんぐりたちが
屋根を踏み鳴らす遊びをやめたのは
いつだったか

秋の荷物が届かないまま
木々が、ほの暗い空へと
細い腕を伸ばしている

 *

街はいつの間にか
切り絵のような
会釈で溢れ返っている

おはようございます
 おはようございます

そうやって
いくつもの切り絵が
切り立ったビルの窓に
貼り付いていく

 *

12月の雨が、
降ることを止めようとしないから
秋の荷物は置き去りにされている
もう届く事はないだろう

冬の言葉を知らないまま
雨に触れる指先は
初雪の夢を見ている

伸ばした腕の先には
空、ばかりが続いて

 *

街はいつでも
いつの間にか
いくつもの
切り絵でいっぱいだ

お疲れ様です
 お疲れ様でした

そう言って
いつの間にか
私の切り絵が街の片隅に
貼り付けられていた

剥がれる事も
剥がされる事も、
ないだろう

 *

母の手の温度で
染み渡っていく夕日の中
はたはたと舞うコウモリを
追わなくなったのは
いつかの夏、の事

12月の雨が止む頃には
春の歌は歌えない

子供の頃の折り紙が
続いていく、空を
舞っていく
追いかけなくなったのは

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2587 : 地上に眠る恋人たちの夢は  ミドリ '08/02/01 20:49:54

車は夜道を飛ばしていた

明かりの点いたホテルの 初夏の夜のプールサイドに
まばらな人影があり
彼女が視線を窓に移すと
男に言った

彼が事故に遭ったのはここよって
ひっつめたロングヘアーと細い体はまるでバレリーナだ
”彼”って誰だい?
男がそう聞き返すと 彼女は肩をすくめた

仕立てのいいスーツに 撫で付けた髪の男の名は ハジメ
今の彼女の
つまりまなみの恋人だ

まなみがベニグノの教会で結婚式を挙げたのは3年前
”彼”ってのは
まなみの前夫だ

     ∞

まなみの前夫とは会っていた
ぼくはメーカーの人間で 彼はうち代理店で働いていた
ぼくらは
3ヶ月に一回の
会議のあるときに顔を合わせていた

ひょっとしたら2次会で どこかのスナックで
あるいは どこかの料亭で
グラスの一つくらい 合わせていたかもしれない
こんなとき
ぼくの記憶は あまり当てにはならない

     ∞

車ん中で ぼくがタバコを取り出すと
彼女は横で咳き込んだ
”彼”はタバコを吸わなかったって言う
うん
でも俺は吸うんだよ
身体に悪いのに?
まなみは眉間に皺を寄せている
ぼくはスーツのポケットにタバコ仕舞った

     ∞

まなみは時々 ノートとペンを持って
机に向かっている
何をしてるんだい?って
肩越しに覗くと
見ないでって ノートを伏せる
決まってその時 シャープペンシルのパチンっと 弾ける音がする

とにかく変わった女だ
例えばセックスの最中
闘牛の話をはじめる
スペインのか?
石垣島のよ
俺も見たことあるけど・・・
コーフンものなの!
うん わかるんだけどさ

     ∞

昨日はバスルームで
鋭い呼び出し音が3度鳴った
まなみの携帯電話だ
ベルは3度鳴った
でも会話は聞こえない

心配になって覗きに行くと
まなみはバスタブの中ですやすやと眠っていて
彼女の膝の中で 携帯電話が
ゆっくりと沈み込んでいくのが見え
ボイスメール・メッセージが ディスプレイに表示されていた

まるでそれは
彼女の世界の中にあって 入り口と出口とが
あべこべになっているようだった

     ∞

その日はいつもように
彼女は週末の仕事に出かけた
音楽を聴いているぼくのイヤホンをむしり取り
行ってきます!
なんて
耳元で大きな声を張り上げる
何を聴いてるかとおもいきや なんだ!? ツェッペリン?
まぁね
終わってるわね・・・
何がやねんっ!

そうよ
あなたのそういうとこ
私 結構好きよ

ロングのひっつめた髪をほどいて
まなみは唇を寄せてきた
ぼくはそっと抱き寄せた彼女の肩越しに見えた
脱ぎっぱなしになっているまなみの
ジャージを 片付けなきゃ 
なんて
その時ぼんやりと 思ってた

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2583 : 「くりのをり けはいをのをり」  藻朱(喪主) '08/02/01 00:35:01


すま、すめけめけ められ 
すめ ののしすからん 
すり すらろをり だまのめ つめり 
てろり すかりろりてるし 
けけけけめ けろっり。

るぅ るくっす 
るっす かろっす くくくっる。

あいかてろり なりけりられ まれで
そのこての すきつ このて のめり 
そめられ めしたっすかっり すろっし 
てをりたり をりのこのり 
てられめっし めりらっし 
めっさり れっれ めっれ 
そんのり やらんり てんり をりられり。 

かくぐの のこのあり こりりりて 
こだまのねく をめねこかい 
かとりでりとり すけあうれめれに 
をこのりあのり くろりては 
ひかなのこの すわられて 
まじられゆて ののこのちらに 
すかに からり 
てはひ けはひ 
もゆすすめく あやくをそく 
すくゆめに ゆかゆられ 
すめたはののしの そのつみちに 

てまり てまりてらひつつ 
かつっつ かかられ 
てはひのそのに あやかせし 
しかせたる ひわせゆりに 
すられ つちっちちっちか 
やられ 
てはひの をのひはひの 
そつに あゆぬろれ 

とんねっちろっち 
ちちっすっからんが すらんが 
とんとんち 
もたらし てはひのめのこの 
ものつのすのをの ものすめし 
すのをみみちっち 

をやあやややめ そのそそその 
あゆめられ やめのこの 
ものちらちっち つかつちらっち 
すからもあひのこら。

くりをすかの をのくりの 
かからすの 
をのあひのこり すかのをのをり。

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2542 : 練馬区  軽谷佑子 '08/01/12 15:58:50  [Mail]

ふしあわせな
作品をかいてとても
嬉しそうに笑っている
あのひとは疲れて
話しことばをひとつも
みつけられない

霜ばしらを踏む
ために水を浴び陽を
浴びて

平穏の光が射し
もうなにも残っていなかった
夢が来た

町のうえにある
ほのおが垂直に落下する
ブロッコリー畑を焼き
家を焼き学校を
焼いて電線の鳥が
くちばしもあけず
こちらをみている

何度も目をあける
熱のこもる部屋にいて
隣には、
隣には、

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2585 : ヒューストン、テキサス、2008年  コントラ '08/02/01 02:19:46



5年前に、この町の、植え込みがある曇り空の、小さな赤い花々が揺れる路地を、傾いて停止しているフォルクスワーゲンをファインダーの端にとらえながら、僕は、歩いていた。そこは雲につつまれた、ほんのひととき安息ができるような場所で、大都市の一角の、静かな街路樹の隙間にひらけた、小さな木造の家。僕はヘッドフォンで、コロンビア人のポップ歌手が歌う、甘いバラードを聴いていた。「この大陸には、草が生えていて、それは尽きることなく、大地を湿らせている」。ファインダーの隅っこの、道幅の広い植え込みの先のほうで、黒人の男がよれたシャツを着たまま角を曲がって消える。そして、スペイン人が、先住民が、アングロサクソンが、それに続く。僕は夢中になって路地の先を見つめている。街のあちこちの、道路わきの溝にはタールのような黒い液体がゆっくりと流れている。

ヒューストン。街の一角にあるエリート大学の図書館前は、ゴミひとつ落ちていない。この大学の人類学部には、名の知れた教授がおり、彼の本は何冊が僕のバックパックに入っていたが、彼の文章は鉄屑でも噛んでいるかのように読みにくく、いつも頭を痛くさせた。僕はその教授に会うのをあきらめて裏門から外に出た。裏門の石柱には蔦が絡まっており、それは湿り気を含んでいた。曇り空の、傾いたファインダーの端を、スケートボードに乗った少年が白いシャツをはためかせながら横切る。思い当たることがあった。彼の書いた本はいつもカバーがピカピカ光るオレンジや青で、それは新手の商売を予感させた。それらの本はこの大陸のあらゆる街の、大学の図書館に配布され、サンパウロでも、カラカスでも、ベリーズシティでも、きっと本棚を埋めていくに違いない。そのとき、誰かが気づくだろう。僕らはどこでも椅子に座らされ、本を読まされ、そしていつまでたっても読まされるだけなのだ、ということを。

湿気をふくんだ曇り空が僕は好きだった。それはこの街の半円の空をいつも満たしており、僕は傾きながら歩いていた。傾いていたのは、右手にたくさんの本を抱えていたこともあるけれど、かなり弱ってもいた。僕はしばらくのあいだ、逃避していた。理論などはどうでも良かった。しかし挨拶をするとなると問題だった。教授たちは部屋に閉じこもり、決して出てこようとはしなかった。かれらは4ヶ月に一度真ん中のホールに出てきて、僕らの研究発表を酒のつまみを品評するかのように聞いたあと、何気なく後ろから、「なかなか面白いね」などと突然声をかけて僕を驚かせた。僕は、ほんとうは、あなたたちと酒が飲みたかった。酒を飲んで、殴り合いをしたかった。だがそうは行かない。僕らはいつも行儀よく座らされ、本を読まされる。そしてその本は、世界中に分配されている、あの表紙がピカピカした本だった。5年前に、僕はヒューストンで、エリート大学のキャンパスを足が痛くなるまで歩き続けていたが、意外なことにそれらの本はすべてこの街を出払っているらしく、どこにも見つけることができなかった。

ヒューストン、2008年。街路樹の覆いかぶさった旧家では、酒を飲んだ男たちが階下のホールで、大声で怒鳴り合っている。入り口の公衆電話には国際電話用の、色とりどりの国旗のシールが貼ってあるが、もう長く使われていない。僕は5年前にこの公衆電話から、午前3時、ずいぶん会っていなかった友達に電話したことを思い出す。夜半、僕は外に出て、寝静まった3車線の住宅街を散歩する。オレンジのランプがどこまでも点しつづけ、僕はずっと前からこんな道ばかり歩きつづけていた気がしていたけれど、実はもうずいぶん前に、汗にまみれた住宅街で、視界の片隅に貼りついて消えない、黒い鉄の塊におびえていたのだということも知っていた。その鉄塊はいま溶けて液状化して、ヒューストンの町の、あちこちの排水溝をゆっくり流れていた。それはこの街に住む黒人たちの身体に繋がっているようにも見えたし、ショッピングセンターのきらびやかなネオンサインにも、目を凝らしてみると、そんな黒い灰塵の一粒一粒が、うっすらと含まれているような気もしていた。

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2590 : 岸辺  りす '08/02/02 23:10:18

母が岸であることをやめ
誰も橋を架けなくなった

水が溢れそうになる日は
父が対岸に先まわりした

父が見逃した水があれば
息子がその隙間を埋めた

母は岸に背を向けて
自分の醜さを恥じた

醜いから遠くへ行くのだと
母は岸であることをやめた

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2557 : 声の洪水  殿岡秀秋 '08/01/19 20:48:27

眼にも口にも扉があるのに
無防備な洞穴の耳

突然侵入し
外耳道を滑り
鼓膜に音の波が当たる

増幅された振動に
あわてて中耳の骨が収縮しても
洞窟の柱の間をすりぬける

内耳の迷宮を
音速の波は
渦を巻きながらくぐりぬけ
出口で脳の底に激突する
脳は衝撃の半分をはね返す
反動で
大波は胸を急降下して
鳩尾あたりでバウンドする

大声が
奔流となって
洞穴の耳をくだり
胸から全身にひろがる
までの一瞬

ぼくは身動きできないで
打たれた金属管のように
鳴りながら震えている

半世紀も前に
父が母を怒鳴った
家が震え
ぼくら子どもは身を硬くして
波の静まるのを待った

耳の洞穴を修復しながら
くねる壁に残された傷跡に
声の洪水の歴史を発見する

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2596 : 幻想領域  ためいき '08/02/06 21:43:08  [URL]


わたしたちは
わかりあうことが
できない
互いに未知な
存在であることも
できない
何ひとつわからない
そう叫ぶことすら
できない

夢の円周に
黒い風がめぐっている
丈低い草が乱れ
泥川が丘のふもとを濡らす
鉛のように垂れる雲
枯れ始めた木々
あなたの追憶

わたしの十字架は
あなたの骨片で
できている
あなたの喪服は
わたしの頭髪で
できている

青く凍った乳房に
木の男根が枝を伸ばす
開かれた唇の奥
赤い咽喉に蜜が滴る
遠い空は
永遠の灰色
陸橋から小学生の見下ろす
銀色の線路の上に
あなたが

  星ノ光ニハ
  潮ノ匂イガスル
  ススキガ波ウチ
  金ノ人形ガ
  浮カンデハ消エタ

見失われた歳月から
こぼれおちる砂
いったい
誰が孤独なのか
誰が愛されているのか!

・・・夜明け
死児を抱いた
あなたの写真が
霧のように燃え尽きる
透明な風が低く吹き込み
時間はいくつもの層にわかれ
まだ目を閉じたままの夢のために
まだ眠りを許されぬ震える指のために
一滴の光が・・・

わたしたちは
愛しあうことが
できない
心を閉ざし雲を追うことも
できない
わたしはただ
見つめる
なすすべもなく
見つめ続ける

今 生まれおちようとする
あなたを

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2589 : 居間の遠景  殿岡秀秋 '08/02/02 11:10:50

夕食のあとでテレビジョンを観る家族
小学生のぼくの襟首から
侵入する影がある
何が起きたのかわからないままに
背中から胸の空に
黒雲が広がる

柔らかな影が
からだをつつみ
やがて
ぼくを消しさっても
なお残るものがあるのだろうか

晴れた空の下で
ぼくは気体となって漂うのか
それとも
影につつまれた瞬間に
別の宇宙に移って
冷たい星で震えているのか
そこでどんな姿に
変形してしまうのか

何もわからない
ぼくは口を手で抑える
氷の粒が飛びだして
部屋中に鳴り響きそうだから

テレビジョンを観る父や母は
目の前にいるのに
幕の向こうで
役者のように座っている
ように見える
雲のような影が
二人の襟首から入る機会を狙っている

いつか父も母も
それにすっぽり
包まれてしまうだろう
それは自分が消えるより恐ろしい

居間が遠景のように遠のく

夕食のあとテレビジョンを観る家族
ぼくは父親になっている
小学生の娘が
急に立ちあがり
首を振りながらつぶやく
どこへ行ってしまうの

死の影が
娘の襟首からはいったのだ
ぼくは答えることができない
忘れていることしか
だれもそこから逃れる術はないから

その娘も母親になり
ぼくは生き物としての任務を果たした気分で
夕食のあとテレビジョンを観ている
ぼくの生の影は
身の丈ほどに育っている

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2603 :   KiMERA '08/02/09 22:34:08  [Mail] [URL]

1
 私は光である。
 光を放つ主体、身体である。
 この光が絶え入るとき、
 私は始めて死の恐怖を抱くのだ。

2
 あなたは光である。
 光を放つ主体、身体である。
 この光が絶え入るとき、
 私は始めて死の恐怖を理解してあげられるのだ。

3
 すべては光である。
 光を放つ主体、身体である。
 この光が絶え入るとき、
 私は始めて孤独の「私」を理解できるのだ。

4
 光に満ち溢れていた君は幸福だった。
 だが、あの時はよかったなと、
 思うその時には、もはや
 明日への光を灯す力もないのであろう。
 

 今の自分を見給え、
 「光」溢れだす現代社会、
 強すぎて、眩しくて、
 「私」も「あなた」も霞んでみえるよ。
 

 
 

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20080209_216_2603p


2602 : 記されない狼のための観測  深田 青 '08/02/09 21:35:21 *1



柔らかい色彩の綿布で女の稜線が微睡む、その素肌の上。肌。を滑
ってゆくの は 宇宙、と呼ばれている標題の無い交響曲、それを、
誰も聴いていない、空間は羊水で満たされている、ここに。未だ結
ばれていない、輪郭 を泳がせて、られているのです。
黒い、黒い、ここに。しなやかに伸び てゆく植物たちが咲かせる花
々、は、パチン!と破裂する音のような無音を鳴らして生まれた幾
つもの太陽を愛しながら、呼吸している。あまりにも鮮やかにNGC2
237-9,46 のような星雲(NGC2237-9,46自体もやはり)が咲いて、
またコールサックのようなものも無数に実っている、広大な、ここ
に。流 れている、水は緩やかに(暖かに、というのは確かであろう
か、覚束ない)。それをひどく優しい安息であると感じながら孵化
する、してゆく、あらゆる種の幸 福な魚、の、銀、青、緑青の鱗の
表面にlegato、が注がれている。
動く 心臓の。筋肉の伸縮に微かに震える気泡を稚魚たちが拭って
ゆく。(ひやりとする)そのあとに薄く揺れる曖昧な輪郭、を、観
測さ れ、NGCと数字を振ってもらえたら、やっと。生まれるかもし
れない。月 の、既に発見された膨大な海についての詩(金属的なに
おいがすることがある)の末尾でも、突き刺されば或いは。
動く 心臓の。音はメトロノームの言うが侭に素直に、従順に、響
いている。世界だ!世界だ!と歓喜しながら細胞分裂の著しい連続
性の先端にほのかな面持ちで、ここに。またたいているのが、Flam
steed、もしくは今日のヴァイオリン奏者、の目に留まれば或いは。
女が、眠りに入る。いよいよ太陽が愛されているので、植物たちか
ら綺麗な酸素が歌われてゆきます(叙情的に)。ヴァイオリン奏者
が恋愛をする、視線、を 暗幕の黒い、黒い、黒。に(長いトリル
を使って)侵入させる。と、繊細な曲線、レースのような縁を見る
かもしれない。それは、花、もしくは動物ですか(動物であるなら
ば無脊椎の透明な)。の問いに いいえ、花、そして動物です(ほ
乳類の青い)。つまり狼。と密やかに記そうとしたところでFlamst
eedは死んだ。
遺された天球図譜は楽譜ですから、連なる二連音をスネアが追い、
それはただひたむきに、繰り返されてゆく。主題は、未だ結ばれて
いない、動く 心臓の。まるで祈りです と、魚が語る。語る魚、
はアルビノ・リラテール・モーリーだったので 宇宙、ここに。よ
く映える(尾に至ってはまるで小説だ、寒天菓子だ)。 
動く 心臓の。所有者は、花、そして動物(狼?)ですから、NGC2
237-9,46のように咲く為の、術。技巧。を模索しながら尚、生まれ
ない。

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20080209_208_2602p


- ealis -