文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

5月選考雑感(平川綾真智)

2008-07-12 (土) 15:55 by a-hirakawa

5月は素晴らしい作品が揃っていたとの声が多かったです。
勉強になりました。ありがとうございます。

詩が本人にある方とない方がいるような気がします。詩が本人にある方は、出さざるを得ない情感を自分という輪郭からはみ出させて、読み手の輪郭も溶かし、攪拌して言葉の綴り以上の位置へ達する時があります。詩が本人にない方は、どうも隙がない、減点出来ない、形式的ものを創り出し、新たな場所で大きく伸び上がる方法を取る傾向にあるような気がします。
優良に達した作品にも全く詩が本人にないのではないか、と議論対象になった作品がいくつかありました。直球に見せかけた変化球で、優良に達しているとは言え、もう少し先に行けるのではないか、と思える作品が多いという意見もありました。減点出来ないに過ぎない作品は、そのうち形骸化され、何度でも眼球を脳髄を吸う魅力から離れてしまうので、是非気を付けて欲しいです。
詩がなくても面白い方向性というのも確実にあるので、隙がない、だけではない場所を少し意識されてもいいのかな、と感じます。
様々なことを考えさせられる月でした。

次点佳作作品に触れていこうと思います。

2786 : 赤い川  田崎 ('08/05/26 00:47:07)
は、私は優良に達していると思いましたが、分析に長けた過去にあるものを敷いている印象であり、二次創作の域を出ていないような感覚を覚えさせるという理由から、次点に留まりました。削られた詩情は少し目立つものの、立脚してはいると思います。後もう一歩の魅惑が必要なのかもしれません。

2773 : 星の氾濫  黒沢 ('08/05/20 00:25:23 *3)
は、私は優良に達していると思いましたが、突く想起的ヒダの生物的なぬめり方を三連のリフレインと最終行の僅かな怠りが小さく留めさせている、という理由から、次点に留まりました。丁寧で、技巧に優れた名作だと思う、という意見もありました。しかし、モチーフがこの作品に収まっていない、という意見もありました。私は、三行目のリフレインが無かったら優良に是が非でも推し続けたと思います。短く濃い中では僅かな怠りが致命的となってしまいがちなので、もう少しだけ最終連でも言葉を探す必要があったのかもしれません。

2741 : 「 ムーフールー。 」  PULL. ('08/05/06 18:38:59)
は、独創性がなく、作品が始まりに立った地点で終わってしまい先へと向かえていない、という理由から次点に留まりました。作り自体はシンプルで裏切りもほぼないので、それだけに素直にきちんと残る作品ではあります。丁寧な作品ではあるので、ほぼ借り物にしか思える詩情が気になります。 もう少し放出される情感に独自があっても良いかもしれません。

2784 : カンガルーのポケット  ミドリ ('08/05/24 15:24:01)
は、安心して読めるけれども、それ以上のものへと昇華させるものが足りない、という理由から次点に留まりました。とても良く書けてるのですが、その分欠けているものも欲してしまい、上手い以上のものが作者には求められているのかもしれません。もっとめちゃくちゃでも良いのかもしれません。

2762 : (無題)  んなこたーない ('08/05/12 18:21:18)
は、よい部分もたくさんあるけれども、それを削いでいる部位がしつこく脳裏を覆ってくる、という理由から次点に留まりました。思い込みを謳歌しきる力を持っていて、リズムもいい、という意見もありました。ただ、もっとそれぞれのよい部位をもっと前へと押し出していく方法はあったように思えます。

2780 : あやまち多き人生ですけど  ちんぽけーす ('08/05/22 22:58:57) 
は、良いエンターテインメントではあったけれど書き方の選択次第のぎりぎりの箇所を見誤り、惜しさを感じさせてしまっている、という理由から次点に留まりました。 それなりに楽しめ、悪意との混同的な文末もなかなか面白くはありました。飛びぬけて残る点がないので、あと一工夫必要だったのかもしれません。

2791 : 新婚生活 (ラフ=テフ外伝 パート2)  ミドリ ('08/05/27 23:27:26) 
は、詰めが甘い、という理由から次点に留まりました。力を抜いて書かれていて、力を抜いて読めました。この短さになったのは正解ですね。四コマ漫画を読むような意識で、使い捨てられてしまう感が気になるのですが、優良ではないけれど良い小作品だと思います。傑作を書いて欲しいという思いもありますが。

2739 : プリムローズ  榊 一威 ('08/05/05 17:04:42 *1) 
は、最終連があまりにおろそかだ、という理由から次点に留まりました。最後の綺麗の連発には胸焼けがした、書かずに書ける部分を全部書いてしまっている、など様々な意見がありました。当初、ラストの展開が書けていないと思ったが、たった一文の推敲で大きく変わった、との意見もありました。いずれにしても、もう少し投稿前に練ることが出来た作品に感じられます。

2737 : 砂浜で  まーろっく ('08/05/05 10:40:14) 
は、とても古く冗長すぎる部分が上手く作用していない、という理由から次点に留まりました。力作であることは解りますし、魅了された方がいるこtも事実なので、もう少し整えても良いように思えます。

2774 : 夜を歩く  ともの ('08/05/20 11:58:53 *1)
は、決して巧くはないけれど深度と情感の可能性を感じさせる、という理由から次点に留まりました。軸からズレていかないことと、ほんわかとした誰もが抱えた詩情を今更ながらですが、突いていくのはそれなりのものがあると思います。「拳がひとつ落ちていた。蛙だ。」この辺、は巧妙です。二、三連が良くないのですが、四連のつなぎ方が上手いので、それなりの印象を受けたんだと思います。詩がある方だと思います。これからしばらく伸び悩むと思いますが、書き続けて欲しいな、ということを感じさせられる作品でした。

2755 : お茶を飲む  ともの ('08/05/09 21:02:08)
は、決して良い作品ではないけれども、詩の原点的なものを思い返させる貴重な作品だ、という理由から次点に留まりました。「自分はひとりなんだ、と思う。/人はみんなひとりなのか否か、」など、書かなくても伝わる部位を書きすぎな点が気になるものの、情感がしっかり作者から出されていて、大切にしていきたい過程を上手く見せた作品だと感じます。

2735 : 哀しみの首  草野大悟 ('08/05/03 12:16:14)
は、しみじみと良い小作品だ、という理由から次点に留まりました。優良に達してはいないものの、多くの情感を孕んでいるとは思います。

2745 : 五月 断片  如月 ('08/05/07 11:03:46)
は、原石の強さがあるものの、そこに覗く手慣れてきたところの綻びが気になる、という理由から次点に留まりました。ただ、重力がそれぞれにある良い目線だと思います。語彙の重なりで意味合いを出していく、そこは昔からのものですが、作者へと引っ張っていくそれなりはあると思います。

2801 : 扉のあった空間から見た赤い土地  右肩良久 ('08/05/31 13:01:40)
は、古いコラージュに過ぎないのではないか、という理由から次点に留まりました。硬質なのではなく、ただ硬いことが気になり、それは連鎖が成功していないからで、配列に成り下がりかねない、という意見もありました。「その脂分の致命的甘味。」などなどそれぞれの並べは面白いので、それを活かすだけの作品としての単体を考えなければならないのでは、という意見もありました。「レム睡眠」以外のやりようがあったはず、との意見もあり、もう少し考えても良い作品に思えます。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、

2797 : 彼の歌  緋維 ('08/05/29 20:59:55)

2734 : バイバイカフェ  ゼッケン ('08/05/03 11:48:37)

2752 : いちに…  吉井 ('08/05/08 22:01:40 *1)

2789 : 明るい忌み言葉  祝祭 ('08/05/27 16:47:05)

2744 : 暗い夜の道程  ぱぱぱ・ららら ('08/05/07 05:30:09)

2769 : 椅子  鈴屋 ('08/05/17 21:49:05 *11)

2776 : 世界、  凪葉 ('08/05/21 12:46:58)

2766 : 終電まで  ゼッケン ('08/05/14 22:58:52)

などが注目されていました。他にも良い作品、多くありました。

以上です。

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コラム更新Canopus(角田寿星)

2008-06-29 (日) 00:22 by 文学極道スタッフ

「批評の場というもの(副題:詩のサイトだというのに特撮の話しかしない)」
Canopus(角田寿星)さん、ありがとうございます。 

他にもお願いしている皆様、よろしくお願いいたします。

文学極道の本の件で連絡の無い方々もよろしくご連絡願います。
(あなた方がいない文学極道なんて無いんだよ!)

それからダーザインより伝言
「ミドリさん、連絡ください。ラブ♪(*´Д`) 」

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2008.5月分発表

2008-06-21 (土) 21:39 by 文学極道スタッフ

2008年5月分月間優良作品・次点佳作発表になりました。
5月分月間優良作品・次点佳作

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現代詩手帖6月号で

2008-06-18 (水) 15:03 by a-hirakawa

現代詩手帖6月号でみつとみさんの詩集『バード・シリーズ』新装版から「斜線ノ空」が取り上げられていました。
まだ読まれていない方はこの機会に是非。

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4月選考雑感(平川綾真智)

2008-06-06 (金) 15:19 by a-hirakawa

今月は特に勉強になりました。
ありがとうございます。

作品は(どのジャンルでもそうだと思うのですが)、自分の手から離れていってしまいます。
作品は作者と密接に対話を繰り返し作者のもとで生まれ育ちますが、発表した後は読み手とも対話をしていきますし、やがて自立してしまいます。
一つの対話方法で臨むと瞬時に膨大な内界を曝け出す性格を持った作品もあれば、様々な対話方法で臨むことにより緩やかに尽きない外界を届かせてくれる性格を持った作品もあります。
どんな作品であるにしても、作者よりも高い位置にいってくれればこんなに面白いことはないだろうと思います。

優良に選ばれた9作品は、どれもしっかりと自立していった作品なんだろうと思います。
ただし、どの作品ももっと高い位置にいく可能性を未だ孕んでいると思いますので、是非、今一度対話してみてください。
凪葉さんの「虹」 「無題」、如月さんの「春に流れる」、には構造の妙が足りなすぎる、エッジの立て方をもっと弁える必要があるのではという意見もありました。
如月さんの「春に流れる」は、推敲前「春」の段階では、次点佳作からも漏れたかもしれません(推敲後、点数も良くなり、入選へと推す声も増えました)。付記しておきます。

さて、次点佳作作品に関して触れていこうと思います。

2687 : [栞の代わりに挟まれる]  香瀬 ('08/04/04 16:24:41)
は、私は優良に達していると思いましたが、芯を維持できていない、「維持しない」という済し崩し的な狙いだったとしても、うまく機能しているようには感じられない、という理由から次点に留まりました。ただ、点数的にはとても高く、もう一息で飛び出してくるのではないか、など好意的な意見も多く寄せられていました。ゼロから書いてある深度と読み手との距離感が、全て人工で冷ややかな詩情と混在し、面白い作品だとは思います。もう少し芯をずらしまくって破壊を埋め込んでも良かったのかもしれません。完成はされているので、ここからどう動いていくのか、書き手への期待が高まります。詩人ではない芸術家は今後、どういう作品展開を見せていくのか、実に興味深いです。

2696 : 海とカンガルー  ミドリ ('08/04/12 17:18:43)
は、バランスなど全てが安易に思える、という理由から次点に留まりました。優良へと推す声もありました。ですが、もう一歩対話を進められる可能性を多く孕んでいるように感じます。

2700 : アネモネ  草野大悟 ('08/04/14 21:46:45)
は、単独の作品としては惜しいところがありすぎる、という理由から次点に留まりました。作者の作品をたくさん読んできてその人となりを知っていることを差し引いて読めば痛烈な情感がある、という意見もありました。作者は作品集にまとめた時に初めて到達出来る他の誰もが持っていない大切な位置を持っている方だとは思います。それは無くしてはいけないものだとは思います。

2717 : 宛先人不明  ぱぱぱ・ららら ('08/04/25 20:52:06)
は、斜に構えた仕様の先へと越えていく後一歩が欲しい、という理由から次点に留まりました。どうでも良い馬鹿さは素晴らしく、読み物として非常に興味深い作品ではあると感じました。次回を追ってみたい作家だ、という意見もありました。

2691 : 迷宮体  黒沢 ('08/04/07 23:45:38)
は、各連の一行目が大きく魅力を損ねていて、ありがちな内容へと引込む情感の重力が削がれている、という理由から次点に留まりました。前作までの魅力、重力が、ない、など様々な意見がありました。作品もレスも真摯なだけではなくクレバーな目配りを感じ、非常に近い将来、期待以上のところまで行ってくれる作者なのではないか、という書き手への意見も寄せられていました。

2710 : (むだい)、  緋維 ('08/04/22 11:57:29 *1)
は、二連目に致命的欠陥があるのではないか、という理由から次点に留まりました。それでも、どうとでも読み取れるこの作品は、そんなに悪くはないです。どうとでも読み取れるということに少し悲しさを感じた、すこし文体に磨きをかければ、優良作品まで行けそうなくらいに感じた、などの意見もありました。悪い意味で柔らかい作品なんだと思います。

2690 : 変身  殿岡秀秋 ('08/04/07 18:09:24)
は、いつもとは違う書き方でも惰性が見え隠れしている、という理由から次点に留まりました。構成に工夫がほしい、との意見もありました。ただし、ベクトルでの情感はそれなりに達しているとは感じます。

2693 : 建築  シンジロウ ('08/04/10 02:47:13)
は、作者の「本気」を作品に出し切れていないのではないか、作品が上手く生み出されていないのではないか、という理由から次点に留まりました。書きたいものを書いてそれがつまらなさの破壊の一端だったら、こんなに面白いことはありません。そういう意味では貴重な作品だと思うので、あまり現代詩の影響を受けずに、このままめちゃくちゃに進んでいって欲しいです。

2706 : ギニョール  一 ('08/04/17 05:38:23)
は、内容がありきたりで、衝撃性がなく、魅力を文章が突き抜けるだけのものがない、という理由から次点に留まりました。ですが、文章内の情、あるいは膜が微かに震えていて、そこが少量の良さを加味していることは実に興味深いです。もう少し整えて、あるいは乱しても良いのかもしれません。俳していっても良いのかもしれません。

" title="http://bungoku.jp/ebbs/20080417_335_2708p\">">bungoku.jp/ebbs/20080417_335_2708p"> 2708 : 笛を持つ警吏  殿岡秀秋 ('08/04/17 22:05:28)
は、膨らませ方にも素材の扱い方にも難点がある、という理由から次点に留まりました。器用、不器用では、この作品の良さを語れないのかもしれないけれども、欠けた部分がありすぎるのではないか、などの意見もありました。

2707 : (無題)  鈴木 ('08/04/17 18:49:21 *2)
は、作品も東京というイメージを結構よく捉えていて、読み物として肩の力を抜いてならそれなりの程度にはある、という理由から次点に留まりました。もう少し多くの読み手へ対話する作品だと魅力が爆発したように感じます。

2713 : 本当の蝶はこの世に四匹しかいない  右肩良久 ('08/04/24 02:28:43)
は、主題に振り回されている、という理由から次点に留まりました。作者は、集中力がないのか、後半にかけて、おろそかになっている傾向にあるので、そこにも気を付けて欲しいです。

2724 : (無題)  んなこたーない ('08/04/29 19:45:14)
は、比喩も古く、深度もない、という理由から次点に留まりました。ただ、悪くはない作品です。最終連はあまりに語が唐突で、客船で行く、から想起させていても、言葉の力が少し変に働いているので、そこを気を付けてベクトルからもう一歩進んでいっても良かったように感じます。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、

2702 : 光、呼び覚ます場所  はるらん ('08/04/15 05:06:37)

2709 : お手玉  ポチ ('08/04/21 03:44:42)

2724 : (無題)  んなこたーない ('08/04/29 19:45:14)

2692 : あっかんべー  はるらん ('08/04/08 23:11:36 *1)

2683 : 唯の夢 その二  菊西夕座 ('08/04/01 00:39:24)

などが注目されていました。

以上です。

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