文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

2009年1月選考雑感

2009-03-02 (月) 14:20 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございます。

選考の際、印象的な意見がありましたので、ここに特記させてください。

・冒頭を大事にしていない作品が多い。インパクトという意味ではなく、詩の入り口で魅力ある香りをただよわせようと意識しているだろう作品がほとんど無かったように思う。詩は全体だというのはもちろんだが、それでも玄関は大事。もっと読む者を惹きつける言葉の力が欲しい。

・熟語の多用により、詩の言葉が説明に成り下がっている作品が少なくなかった。言葉で綴る限り、詩の魅力は内実だけでは足りない。これは本当に声を大にして言いたい、便利なものに安易に、もしくは無意識に頼りすぎるなと言いたい。

文学極道は誰でも作品を投稿することが出来ます。投稿することは推敲前に反応を見るための手段に過ぎないという方もいらっしゃるかもしれません。ただし、忘れないようにしないといけません。推敲していき段階を経て最終的に作品として立脚するとしても、発表した時点でそれは取り返しのつかない現代詩です。
合評の前に今一度の覚悟を作品に作者に負わせてみましょう。自戒も含め記しておきます。
(もちろん気楽に大傑作を書いて気負いなく発表しても構わないと思います。また、ネットだからといって最先鋭である必要はありません。媒体の可能性を広義的に解釈して何でもありで臨んでも良いのかな、と感じています。)

さて、今月は、

3291 : 給水塔の上で  鈴屋 ('09/01/27 00:15:33)

3246 : 夏の隙間で  草笛 ('09/01/07 23:38:08) 

3245 : ホーキンスさん  一条 ('09/01/07 19:26:52 *1)

3240 : まるで魚のように(PCで見てください。)  水瀬史樹 ('09/01/05 18:22:30) 

以上、四作品が月間優良作品に選出されました。

3291 : 給水塔の上で  鈴屋 ('09/01/27 00:15:33)
作者の意識の働き方は戦後すぐの現代詩から変わらない部位もあるように感じられますが、それを時代の中にある自己へと調弦している確かさへ結び、つながる作品の魅力は流動的に濾過され加味されているように思えます。不安の表層として死せる生として女を燃やしている、この超現実の完全なる内外界は塩梅が良く、昇華されていて、読み手の意識を摘んでいるぎこちなさの巧さがある、という意見がありました。漫画では比喩的表現が進化し、「おやすみプンプン」などストーリーの新鮮さよりも魅せ方にこだわる作品が台頭してきたが、詩ではその方法はありふれている、その上で、筆の使い方、やり方、素材の活かし方が上手い、という意見もありました。着目はいいと思うが印象の先へ向かえているかというと今一歩なのではないか、という意見もありました。

3246 : 夏の隙間で  草笛 ('09/01/07 23:38:08) 
この作者の登場が今月の収穫かもしれない、という意見がありました。父のえくぼの引力が大きく働いています。甘い卵焼きは一方的な愛情でまちがった表現の仕方の表層でしょうか。拙いところがまた味わい深いです。事象と心象がうまく絡んでいて、このギコギコとした愛と、情と、他者との隙間にただよう闇、圧倒的な、わからなさともいうべきもの、余白ともいえるものがよい、という意見もありました。

3245 : ホーキンスさん  一条 ('09/01/07 19:26:52 *1)
は、さすが一条様式の妙は魅力的で有無を言わさず掴まれてしまう、という意見がありました。ただ推敲前の方がすきだった、という意見もありました。一条さんの作品を読むと、突き放しかたが痛快だなーといつもおもう、自身をも突き放してるんじゃないかと時々おもうほど、音読するとなぜか気持ちよかった、という意見もありました。

3240 : まるで魚のように(PCで見てください。)  水瀬史樹 ('09/01/05 18:22:30) 
核ではなくひろがりを味わうものとして、成功しているとおもう、という意見がありました。
少しありがちな作品形態であり、さらに、期待しないで読んでしまうだけの作品の見た目であり、ハードルを下げに下げて読ませて、少しの良さを大きい良質さへと転換していく不思議なヘタウマな作品だと思う、という意見もありました。このヘタウマさは貴重で、この枠組みの作品としては最も追究されている印象を持ちもし、
 なまあ さひに 
など、少し無理があるものの、
 なまあ  くびに  

 しろい  くびに  
などの語彙を変えているところが良質さをもたらしているのかもしれず、完璧に作られていないところが作品を高めたのではないか、という意見もありました。
偶然の産物かもしれないけれども貴重な作品だと思います。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3287 : la respiration d'un dormeur 寝息  はなび ('09/01/26 06:06:06)
は、私は読める域に達しているだけでもラブポエムとして凄いのかもしれないと感じ、誰でも出来そうでなかなかできないことをやっているという理由から優良へと推したのですが、”できそうで、未だできてない”というくらいの完成度であり、ちょっと心許なさが作品の立脚を引っ張っているという理由から次点に留まりました。悪くない、草を食む牛の夢を見る男を「ゆめのないおとこ」とするあたり的確で面白い(作者のコメントを読むと“無邪気”という言葉が出てきたりして、作者の真意は感じた方向とは違うものかもしれない)、反芻ばかりする者の、後ろ向きなさま、「とりになったゆめをみてる/わたし」と、自分を鳥に見立てたところはいまいちイメージをとり難い、ただ、この詩のバランスだとそれ以上を書き増すと説明過多になってしまうだろうし、バランスとしては現状がギリギリの線かとも感じる、これは私見ですが、女性が自身に鳥をイメージするとき、男性のそれ(解放、孤高)と比べて滑稽度や醜さが増す傾向を感じることが多い、という意見もありました。もう一歩という気もする詩、ここから突き抜けるとなると台無しになってしまう気もする、漂っている単体です。

3249 : 冬の散歩道  ゆえづ ('09/01/12 01:02:22)
には、十代の通過儀礼というでもいうべきありふれたテーマだが言葉は作者のものにしっかりなっている、という意見がありました。2連1行目に違和感を感じた、「私達は十六」ではあまりに説明的、それを想像させるものを別の言葉運びで作中に溶け込ませたほうがよいのではないだろうか、という意見もありました。作者の詩人としての可能性と力量、萌芽が見事でありこれからの作品も楽しみになった、という意見もありました。

3263 : 今日、私の日本語から一切のかなしみがほろびる  祝祭 ('09/01/15 10:51:50) 
かなしみに対する祝祭さんのまなざしを買いたい、「もう言葉しかそこにない、という悲しみ」という視点、その消滅をさらに言語化するという試み。幾重もの層を見るようで興味深い、という意見がありました。なんだかんだで残る作品、雰囲気の異質さから来るものなのか、こびりつく点、粘着力には目を見張るものがある、という意見もありました。

3238 : 見出された室内  午睡機械 ('09/01/03 20:52:14) 
澄んでいる作為が前面にあり、意識を掴んでいきます。とても良質だが、作者の他作品を考えると習作感が強いのではないか、という意見がありました。

3268 : ミクララムラハウスのこと  はなび ('09/01/17 08:13:24)
単純に悪くない、作者の伸び方と共に馴染んでいる作品の伸びしろが残されている部分がまた良いのかもしれない、という意見がありました。面白いが、本人がつくりあげたい表現の過程というか、途上の作品であるように思え、実験的印象が勝る、という意見もありました。

3252 : 砂漠の魚影(或いは「父のこと」)  右肩良久 ('09/01/12 09:58:17)
作者は詩人ではないかもしれないが最後まで丁寧に書れている、
  二、人々が魚を食し、僕が魚を食する
は特に印象的だが、
  三、命題
でラインが落とされていることが残念、という意見がありました。

3285 : 罪滅ぼし  丸山雅史 ('09/01/24 03:24:05 *8)
作品内で自分を殺していき、救済していくことは自己肯定でもあり、それをダサく非常にダサく行えていることにより感情へと訴えるものが出てきていて、これは貴重なのではないか、という意見がありました。

3273 : 闇よ  小禽 ('09/01/19 16:35:26)
未だにこの形式の作品を書いている作者に拍手したい、新しさはかけっらも無いけれどその分真実はあるかもしれない、という意見がありました。小禽さんは過去3作とも短詩で文体もさほど変化がないが、どれも別人が書いたような印象だ、文面以上に深度を測りかねる位置で、もがいている、そんなことを感じる、この作品は佳作には届かないようにも思える、けれど、どう動いてくるか、あと10作くらいは作者として先行きを見続けてみたい、という意見もありました。

3269 : 幸子ちゃん  しょう子 ('09/01/17 17:10:29)
前を見て羽ばたこうとしている子どもの姿を書くには、歯車が回らない激するものをもう一点入れても良かったように感じる、これはこれで良い作品であり、書かないことでの哀切さがある、という意見がありました。(自閉症という)存在を最後の二連が綺麗にまとめ過ぎているように思える、けれどもそれでも良いのかもしれない、裾がある作品に感じる、という意見もありました。

3274 : 「またね」  ミドリ ('09/01/19 19:10:52)
旬が過ぎた後の上質さがあり、素直に良かった、という意見がありました。

3260 : ラオ君  一条 ('09/01/14 17:52:48 *2)
適当さのように感じられるものが悪くない方向に進んでいるのは不思議であり、作品として強い、という意見がありました。「空虚」の深度に違いはあれ、”ジャンル一条”は健在、という意見もありました。

3271 : A Daydream of Jumpin' Jack  午睡機械 ('09/01/19 13:05:38)
丁寧に紡がれている、あまり面白い内容ではないが、それはそれでまた別の話だ、という意見がありました。作品を作ることに苦悩することが前に出てしまう作者の作品よりも、詩が匂いたつ作者の作品に期待したい思いがある、という意見もありました。

3297 : クマのヘンドリックの「才能」  ミドリ ('09/01/29 23:49:44 *1)
差別の悲しさあり、下ネタあり、と、ミドリさんの作品はBL系の上質な作品の作りと通じるものがあるような気がする、という意見がありました。
 鋭く毒を吐いた
これを書いてしまうのはこの作品上どうだろうか、という意見もありました。

3239 :     冬  吉井 ('09/01/03 23:26:45)
作者は上手い、無意識の中の非合理が隠遁する超現実の萌芽を、なんて言葉はどうでもよくなる列製された配置からの乾いた息に惹かれる部分がある、という意見がありました。床を這う湯気が倒れている妻の背中を濡らす、背中を濡らしているからこの素朴な筆致は成功しているように思えた、一連、というか一作品、短い中に盛りだくさんで、しかし決して読みにくくなく、小腹をすかせていくように突いていく印象が幻想をつかませ、満腹にはなれないし、ここからもう少し読みたいような気もするが、それはそれで魅力がある、という意見もありました。 IIの精神病みはありきたりだが、そこに魅力もある、惹かれるが、惹き込まれはしなかったように思える、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3283 : 走馬灯  時渡友音 ('09/01/23 16:03:07)
これからの作品に期待を抱いてしまう作品であり、作者だ、という意見がありました。悪い背伸びをすることなく自身の言葉を探し、等身大の言葉運びで書かれているだろうことは伝わってきて、その点では好感があるが、まだそこ止まりではないだろうか、という意見もありました。タイトルの時点で内容や進行のほとんどを予想できてしまい、またその点で良い意味での裏切りもないので、そういった面から読後の充足感に対してもっと疑ってもよいのではないだろうか、「走馬灯」という言葉の古さだけが理由ではないように思える、という意見もありました。気になる作者だという意見では一致していたので、これからの作品に無理せず臨んでいって欲しいです。

3253 : 無題  京 ('09/01/12 10:09:10 *1)
ラストの失速がもったいなかった、随所にひかる表現があり今後に期待、パソコンで詩作する人特有の漢字表記がやや気になった、その漢字を、その文字を使うことが本当に適切か、否か、もうすこし意識的になってみるといいと思う、という意見がありました。悪くない、方向性は良質、他者の死を境に生が掘り起こされて自らと自らを作った時間の流れを空間の隙間隙間との記憶に見つめている、[]の言葉の重複をもう少し補ったり、語の付きを定かにしたり、 []の良さを深めたりしても良かったかもしれない、[]、[]で作品の緊張感というか高さが変わる、本筋からの昇華だからといって油断しているように感じる、最後の締めの文章はありきたりすぎる、[]も[]くらいの熱量を見せても良かったかもしれない、という意見がありました。

3299 : 断編―骨の魚  田崎 ('09/01/31 02:12:22)

3281 : ゆらぎ  ともの ('09/01/22 00:10:33)
内実は大いに買う、一貫して作中に続く揺れも、そういった揺れを形式でも試みたのだろうか、もしくは、この形式での緩急は朗読を強く意識して作られた文字列だろうか、ただここは散文でいくか行分けでいくか、どちらかにしたほうがよかったように思う、という意見がありました。「呼吸をする」の連からは良いが、それまでの冗長さはあまり突かないのではないだろうか、作者の魅力である素朴な感性、素朴な純とした作品は無為に壊されてきていて代用が利くものになってしまっては悲しいのではないだろうか、視点の素朴さを日常の狂気に晒してそれを作品にするには代用の利くスピードでは難しいのかもしれない、という意見もありました。

3272 : (無題)  薛茵('09/01/19 14:13:39)
切実さとそれらしさの間にある印象、読み進めるための魅力がもうすこし欲しい、という意見がありました。暗喩であるにしてもないにしても途中までは面白く、感情的に切れをなくしてしまう尾が気になる、という意見もありました。

3236 : うまれるまえに  ひろかわ文緒 ('09/01/01 06:34:08)
もうすこし読み続けたい、うまくいけば化けるタイプだと思う、という意見がありました。悪くない、書きすぎのところをどうにかしてほしい、一・二文、削れば優良でも良いかもしれない、という意見もありました。作者に惹きつけられるけれども予感にまだ留まっている感触でしょうか。これから先が気になります。

3250 : (無題)  桜井 ('09/01/12 04:23:01)
閉じるにしろ、豊かな閉じかたがあるとおもう、これはまだそれに遠い、もうすこし書きこんでほしい、と淡い期待とともに感じる、という意見がありました。無題ではないほうがよいかもしれない、兎は月を想起させていく、暗喩の作品にも取れるが、作者は素直に書いているようだ、短い中に同じ文章が何度もある点など、拡げられなくなっていってしまい、小さく留めているところが気になる、という意見もありました。

3237 : 無題  雨宮 ('09/01/02 09:57:30 *1)
緩やかなこと自体はそれでいいと思うが、それならそれで静かに訴えるために言葉の力が欲しい、この詩にはそれがない、という意見がありました。

3259 : 約束の地  はるらん ('09/01/14 01:34:39 *4)
日本の茶の間から、爆撃戦の被害者という立ち位置で綴ることの意味、作者の普段からのストーリー気質が悪い意味で表出したように思う、この題材で挑むべくする意義が作者にあったのだとは思うが、立ち位置が間違っているように感じるため上澄みにもなり得ていない、という意見がありました。四連が書き変えられても、もう一歩の感が否めない、という意見もありました。

3251 : 黒猫、土鍋、レコードプレーヤー  ぱぱぱ・ららら ('09/01/12 09:27:42)

3294 : 「姥捨山日記」抄2 〜雨水の日の夜〜  右肩良久 ('09/01/28 02:01:43)
惹きこまれる有精の打点が鈍い、前回に比べての失速感は否めない、という意見がありました。

以上です。

現在、年間各賞選考中です。
発表までしばらくお待ちください。

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1月分月間優良作品・次点佳作発表

2009-02-20 (金) 22:01 by 文学極道スタッフ

1月分月間優良作品・次点佳作 発表になりました。

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アクセス障害について

2009-02-02 (月) 22:42 by 文学極道スタッフ

昨日発生したアクセス障害では、長時間にわたり皆様にご不便・ご心配をおかけし、申し訳ありませんでした。
一部ではお知らせしましたが、原因はレンタル サーバーのシステム障害などではなく、当サイトが登録しているドメイン 「bungoku.jp」 の更新手続きに問題があり、一時的にドメインが凍結状態となったためでした。
ドメインは昨日のうちに復活し、現在は平常どおりの運営にもどっています。

今回の件についてお詫びするとともに、今後はもし同じようなことが起きた場合でも運営を維持できるような体制をととのえておきたいと考えております。
これからもどうぞ文学極道をよろしくお願いいたします。

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12月選考雑感(平川綾真智)

2009-01-28 (水) 16:20 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございます。

さて、私は、文学極道とは、異なる筆名で投稿している方の過去の筆名を当てるゲームに一喜一憂することが本質ではない、場だと思っています。一月に二編という規定を破っているなら困ったことですが、そうでないなら、どの筆名は誰だ、とかは、どうでも良いことです。
ゲームに熱中しても良いかもしれませんが、それで精神を摩滅したり、感情的に人間を否定してしまったり、詩作品への詩への思いを邪険にすることは悲しいことです。
芸術としての詩を発表し、合評することが本質だと、私は、思っています。誰がどんな作品を書いても良いと思いますし、誰がどんな評をつけようと良いと思います。ただ、評が作品へのものと大幅に外れてしまうことは大問題だと思います。
文学極道は改善点も多々あるかもしれませんが、それだけ、進んで行ける成長していける伸びしろのある場所なのでは、と思っています。
皆で創っていけたら、と私は思っています。
今月の選考でも多くのことを学ばせていただきました。

今月は、

3232 : 「姥捨山日記」抄  右肩良久 ('08/12/31 11:19:42)    

3235 : 愛情  泉ムジ ('08/12/31 23:13:54) 

3182 : 国道沿い  寒月 ('08/12/01 14:26:14) 

3206 : (無題)  DNA ('08/12/11 08:05:48) 

3222 : 時折の笑い声が、そして  Canopus (角田寿星) ('08/12/23 01:05:01) 

3189 : 新宿三丁目で思うこと  黒沢 ('08/12/04 01:50:17 *1) 

3184 : 無題3(六月の海)  プラスねじ ('08/12/01 21:12:00) 

3231 : オフィーリア  黒沢 ('08/12/29 23:40:26 *5) 

以上、八作品が月間優良作品に選出されました。

3232 : 「姥捨山日記」抄  右肩良久 ('08/12/31 11:19:42)    
は、作者の良い面が炸裂した作品だ、という声がありました。作者は頭を使われるよりも、心のままに書かれたときのほうが、傑作が出てきているような気がする、という意見や、最後に何度もどんでん返しがある手品の出来そこない的作品よりも印象の感触を含んで飲む今回の作品の方がずっと面白く、作者に向いているのではないか、ここからもっと伸びあがる傑作が生まれるのではないか、などの意見もありました。

3235 : 愛情  泉ムジ ('08/12/31 23:13:54) 
は、美麗に作品へ昇華しきった作品です。選考の際、巧妙に酔わされながらも仕掛けに醒めてしまった、という意見もありました。綺麗な作品であり、綺麗さが愛情を薄めているようにも思えてくる、背理がないというか違和感が付き纏った、という意見もありました。愛情という漢字は少し硬い、内実はもう少し柔らかいので高めあえていないのではないか、という意見もありました。しかし、掬おうと尽きない端麗さは秀でています。

3182 : 国道沿い  寒月 ('08/12/01 14:26:14) 
には、なんだこれは、と不思議な隙を突かれる感触があり、感触だけが輪郭としてある不思議さが詩情の醸しだし方の面白さへ直結している魅力に溢れている、という意見がありました。内実だけが伝わる作者の感性と素直な対話が出来る純な位置から書かれた作品のように感じる、という意見もありました。よくまとまっているけれど、字面以上の、言外の、勢いがもっとあってもよいかもしれない、という意見もありました。

3222 : 時折の笑い声が、そして  Canopus (角田寿星) ('08/12/23 01:05:01) 
には、一種のサンプルのような佇まいではあるけれども、成功している、という意見がありました。良質な作品に育ちそうだけれども一作品としては弱いのではないか、という意見もありました。

3189 : 新宿三丁目で思うこと  黒沢 ('08/12/04 01:50:17 *1) 
には、饒舌で説明的であり、主義主張が鈍さを持っているように感じる、という意見がありました。連で異常なまでに突き刺さる、震撼させる部位は非常に印象的だ、という意見もありました。

3184 : 無題3(六月の海)  プラスねじ ('08/12/01 21:12:00) 
作者の作品はポスター的なデザインという感覚で、より大衆的に魅せていく引力がある、という意見がありました。根は一からの創造ではなく、文学を地盤に敷いたそこからの創造で、凄まじいエンターテイメントだけれども、消えない消費性をもう少し弾けさせても良いのでは、という意見もありました。

3231 : オフィーリア  黒沢 ('08/12/29 23:40:26 *5) 
オフィーリアは名画だけれども、この作品は、ささくれだっている印象がある、という意見がありました。もっと整理された文脈を用いて欲しい、もしも整理されていないということを示そうとしているならば、なおさら整理された文脈が必要に感じる、仕上がっていないのではないか、という意見もありました。力作であり、今月随一の作品だと思う、という意見もありました。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3218 : ハイプ  ゆえづ ('08/12/22 00:46:02)  
は、選考委員全員が賛辞の目を向けていました。優良に推す声もありました。けれども、きっぱり優良に推す気には足りない微妙さがどうしても目立つ、最終連でまとめ過ぎ小さくなってしまったのではないか、という理由から次点に留まりました。素直で優秀な文章であり、今後も期待させる、期待に応えてくれるのではないか、と膨らませられる作品だ、という意見もありました。生活をしているだけで悲劇が叫びに転換し脳内麻薬を分泌していく現代に不快と快のつながりの同じ肌として立たせた見事さがある、という意見もありました。部屋での狂気を覗かせる作品はいくつもあるけれども作る顔の皺が浮かんでいて一歩先を描こうとしていることが伝わる、という意見もありました。感触だけで未完成に過ぎないのかもしれない、という意見もありました。

3228 : 詩  祝祭 ('08/12/29 00:40:29 *1)  
言葉というものとの向き合い方、力の抜き方も去勢というよりは別種のものだと感じられる、単にベクトルとしても興味深い、という意見がありました。

3227 : gloom2  5or6 ('08/12/27 21:05:05 *1)  
悪くはないけれども、後半もう一展開欲しい、後半が弱くこぼれていっているのではないか、という意見がありました。優良へ推す声もありました。

3198 : あの日のブタと  ミドリ ('08/12/06 19:03:48)   
ブタは自分自身なのだろう、話し手がブタという自分の影を見ている悲しさがうまく出ているように感じる、という意見がありました。すごい作品だと思う、ただ、作品のスタンスには肝心なところでの「逃げ」が見えてしまう、演じきれていない、という意見もありました。

3210 : 記憶  ミドリ ('08/12/13 22:41:38 *4)  
誤字や軽さが作品を追い越していけていないのではないか、という意見がありました。

3213 : 宇宙始まるお☆  ケンジロウ ('08/12/17 13:45:21)   
女性的な文章が印象的だ、悪くない、消費されるだけの消費性があるような気がする、揮発性では今月一番に感じる、などの意見がありました。

3204 : 冷製の夜  りす ('08/12/10 16:10:38 *1)  
見紛うことなき、過去傑作を綴ってきた作者の筆だが、鋭さと鈍さと淡さとがマッチしていない、バラバラな印象を受けた、という意見がありました。何も感じない、という意見もありました。良質な小作品であり、透けて見える作者の姿が妙な味わいを出している、という意見もありました。

3226 : ショートムーヴィーを中古印刷機で踏み躙るまで、家を失った少年に告ぐ(矛盾するすべてのものへ)  ふう ('08/12/27 02:33:35)     
端っこに引っかかって重心が位置を変えながら対象を囁いて行く良質な作品です。タイトルが嫌に説明的であり、それが詩の内実を高めたりしているかどうか疑問だ、抑えつけてしまったのではないか、という意見がありました。

3216 : エスマヌール  はらだまさる ('08/12/19 23:22:23 *2)  
美しさを湛えているけれども、作中の言葉を拝借して言うなら、薄い(というよりは具の少ない)味噌汁のような、もの足りなさがある、という意見がありました。

3190 : イエネコ  ゆえづ ('08/12/04 14:59:35)  
書いていて楽しかった感触が存在を豊かにしている、意外と上手く言えているような部位も気になる、ただ、猫が癒しというところからは少し離れた方がもっと広がったのではないか、という意見がありました。

3199 : 女神  ともの ('08/12/06 21:08:36 *2)  
一部、固いなあと感じる部分があって、その部位が作品の魅力を損なっているのではないか、という意見がありました。作者は、もっと主観を肯定して、その上で自作を客観的に観ていく必要があるのではないか、消化されずに進んでいる部位が多すぎ、勿体無いのではないか、という意見もありました。

3208 : 空き室  鈴屋 ('08/12/13 13:18:23)  
今回の端的な写実能力は、買いたい、という意見がありました。ど変態だ、でも誰でも変態だと思う、狂人になれない自分と行動との狭間が上質に浮かんできたが、書き切れていないように感じる、という意見もありました。

3180 : [開封後はお早めにお召し上がりください。]  香瀬 ('08/12/01 09:18:55) 
職人技が冴えており、追随する感性が気になった、という意見がありました。もう少し別の方向でもよい気がする、詩を書こうとして現代詩と呼ばれている既存の詩に捉われていないか、そこから侵食する自分が今回は小さいのではないか、という意見もありました。この作品は作者でなくて良いし、作品に今までにないものがあるわけでもない、壊滅も無く誕生も無いのではないか、一作品としては弱いのかもしれない、という意見もありました。
芸術家のたどり着く先を見届けたい気にはさせられます。
もう少し変な作品を読みたいな、という気にもさせられます。

3214 : 影の樹  殿岡秀秋 ('08/12/17 23:17:00)  
こういう血で書いたような作品こそ優良を獲って欲しい、という声がありました。良質な作品だけれども、古風な部分が少し抑えつけているように感じる、という意見がありました。汲んでいきたくなる核が絶え間なく湧かせていっている、支流があり過ぎたところが気になった、最終二連は解りやすいながらも詩情が秀でている、という意見もありました。

3179 : 終わらない詩  丸山雅史 ('08/12/01 00:22:48 *3)  
詩情の量では凌駕するものがあって、決して上手いとは言えない文体がまた、味となっている、という意見がありました。作者の不器用さと詩の関係性が見事な世界を産んでいるように思える、という意見もありました。推敲後、明らかな間違いと思われる点は変更されてよくなったけれども、修正前の方が人間が出ていたように感じる、という意見もありました。

3220 : 最後の朝食  yaya ('08/12/22 18:41:20)     
一連三連は上手く、夢と現実の境目に振り回される感触や熱がはみ出した時の思考のもつれた温度が共感を建てるくらいに伝わってくる、二連の最後二行は回らない思考の中で上手く移行していく感度を渡せているので、その他をもっと壊しても良かったのではないか、という意見がありました。
もう一歩先にいけそうな作品だと感じる、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3181 : 風葬  雨宮 ('08/12/01 12:40:48)    
二連目が良質だけれども、創作の創作を見せてしまっている感覚あり、まとまりが作者自身の綴りをすぼめているのではないか、という意見がありました。立体感がなく、作品から受け渡されるものが堪えきれなくなる弱点があるのではないか、という意見もありました。

3219 : 時は時を選ばずに、琉球アサガオ  はるらん ('08/12/22 02:23:32)  
作者にしては珍しく詩情があり、隙があることがきっちりとした印象からはみ出していて悪くない、けれども、作品としてもう少し結実するためのバランスを考えても良いのではないか、という意見がありました。

3187 : (無題)  高橋 ('08/12/03 19:10:34) 
悪くない、前半部分中間部分にもう少し魅力を加味できるように感じる、飲み込み魅せていくには、もう一歩手前の場所にあるように感じる、という意見がありました。

3230 : 交渉  ゼッケン ('08/12/29 14:22:15)    
軽い作品だが奥域をいくらでも広げていけそうな点は貴重、まとまりが気になった、という意見がありました。

3188 : ゼンマイとして動く詩とそのネジを巻く手  右肩良久 ('08/12/04 00:37:12 *1)     
だんだんと伸びていく詩情と贅が悪くない作品だ、作者は何故タイトルに手品の種を明かすような綴りを冠するのか不思議だ、という意見がありました。

3229 : しずか  はなび ('08/12/29 09:10:55)    
悩ましいけれども、悪くない、という意見がありました。作者は、ひらがなでわかりやすくかいていくことにむいているのでは、という意見もありました。

3225 : 父と子で観る映画  殿岡秀秋 ('08/12/25 22:32:55)   
冗長な点が残念だけれども、こういう血で書いたような作品は大切にしたい、という意見がありました。

3234 : 「未明」に  田崎 ('08/12/31 23:03:48)  

3224 : 八十八夜語り ー除夕ー  吉井 ('08/12/25 21:34:59 *2)   

3209 : ★ l'etoile noire  はなび ('08/12/13 22:10:34)  

以上です。

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12月分優良作品・次点佳作発表

2009-01-21 (水) 05:07 by 文学極道スタッフ

12月分優良作品・次点佳作発表になりました。

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