文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

11月選考雑感

2009-01-10 (土) 11:18 by a-hirakawa

2009年、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

今月も勉強になりました。
ありがとうございます。

今月は、

3151 : autumn  泉ムジ ('08/11/14 23:28:44)   

3171 : 仔鹿  りす ('08/11/28 17:06:35) 

3143 : 地平線  雨宮 ('08/11/11 10:16:14) 

3146 : 祖母の葬式  シンジロウ ('08/11/12 00:39:57)  

3134 : 露光  DNA ('08/11/10 00:12:37)  

3148 : 気狂い  ぱぱぱ・ららら ('08/11/12 15:29:08) 

以上、六作品が月間優良作品に選出されました。

3151 : autumn  泉ムジ ('08/11/14 23:28:44)   
には、作者のセンスを見せ付けるだけの良質な作品であり実にスマートだ、という意見がありました。また、いとおしさを得るけれども、枯渇の部分、もっと話者の慟哭が聞こえてきていいのではないか、という意見もありました。題材、文体、構成、連の高め合い、膨らみなどに、もっと高められるはずの情感が鈍く在しているように感じる、という意見もありました。多くの意見が出るだけの、様々な魅力が随所に顔を覗かせている素敵な作品です。

3171 : 仔鹿  りす ('08/11/28 17:06:35) 
は、作品に関しても作者に関しても実に興味深い恋愛詩なのではないか、という意見がありました。仔鹿は話者自身の、溺れてしまえない、けれど逃れきれない欲望であると同時に恋愛対象としての他者であるともいえ、そこを見事に作品として昇華している、最後から三行目の「ユニット」という言葉のみ、要推敲の感があるかもしれない、という賛辞の評が提示される一方、内省についての内省を読まされた感覚だ、作風の変化にやや冗長なきらいがあるように思える、などの意見も提示されました。これからの方向性を気にさせる、先のある魅力が咲いた作品なのかもしれません。

3143 : 地平線  雨宮 ('08/11/11 10:16:14)
は、僕と妻の性格の浮きだし方が見事で、その性格が出来るに至った生い立ちなども感じさせる余白に充ち溢れた素晴らしい作品です。地平線、恐竜、太陽、壮大なものの前に不安定さを抱えた人の小ささが見事に対照化され、作品を高めています。その内実が文章の拙い部分や巧いとは言いがたい部位と合わさり詩情を昇華しているように感じます。
ちょっとしたリアルな風光描写の挿入があればよいのかもしれない、どうも作者は化けきれていない、良質さを作品化出来ていない、という意見もありました。

3146 : 祖母の葬式  シンジロウ ('08/11/12 00:39:57) 
には、父がいないことによっての小さな成功が貴重に思える、という意見がありました。母からの電話と祖母の死の切迫の距離が解りづらいところが詩情を邪魔している、という意見もありました。

3134 : 露光  DNA ('08/11/10 00:12:37)
は、巧い、導入の魅力が全体を良質に仕上げている、という意見がありました。ただし、導入から魅せる観念の流れ着く先が見えないところが気になる、どこになにを届けようとしているのか、その先をもっと表出させても良いのではないか、という意見もありました。

3148 : 気狂い  ぱぱぱ・ららら ('08/11/12 15:29:08) 
には、ナイフで切り取ったような鮮烈さがある、という意見がありました。内実には共感するけれども、書かない部分やタイトルに高まったものを感じられない、という意見もありました。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3178 : 狙われた街/狙われない街(メトロン星人)  Canopus (角田寿星) ('08/11/29 23:45:59)   
には、作者と詩の距離と読み手が入れる位置関係は見事に思える、という意見がありました。優良へと推す声もありました。誰かのせいにして、生きてゆく、その感触が良くも悪くも印象的だ、悪くはないけれども、説明が過ぎるような気がする、という意見もありました。メトロン星人を知らないと、書かれている、存在している情感がどうしても小さくなる欠点があるので、それはやはり作品としての短所なのかもしれません。それが長所なのかもしれません。

3122 : P・S ジャスミン  ミドリ ('08/11/01 13:53:22) 
は、上手くも、軽く、そして感情をつまみ出しなぞる、たたずまいの美しさが敷かれています。最後は上手く小さくまとまってしまって、もっと残せる余韻が削られているのではないか、という意見もありました。

3173 : てつづき  はなび ('08/11/29 00:21:23) 
には、このベクトルとしては悪くない作品だ、独自の作品として成りたっている出来の良い作品だ、という意見がありました。うつくしさ、日々のかなしみの、そこが印象深い、という意見もありました。他の作品と比べ、どうしても霞む部分を意識して、もっと立脚して欲しいもどかしさを感じる、という意見もありました。作者の今までの投稿作品の中では一番、良い距離で読み手とつながることが出来る作品のように感じました。

3150 : 舵取りの神  殿岡秀秋 ('08/11/14 20:37:57)  
は、優良へと推す声もありました。内容の展開に上手い部分もあるえれども、見せ方が立ち止まり説明してからの繰り返しになり、分かりやすさが奥域を出せていないのではないか、という意見もありました。前述した点、そういう書き方でそういう作品なので、その上で、もっと引き込んで欲しい、という意見もありました。解りやすさと抽象の具合をもう少し客観的に捉えても良いのではないか、作者はもっと良質に書けるのでは、という意見もありました。

3140 : 喉が渇いたのでソーダを飲んでみた  滝沢勇一 ('08/11/10 15:25:18)  
 熱帯の海に放り投げられたとき、深く深く群青に吸い込まれそうになりながら上を向いたらオレンジ色の液体のなか、気泡身体からのぼってってきらきらきらひかりが砕けたやつが降って刺さってくちのなか合成甘味料に似たひとの濃い、体液のあじがした
 夏休みを思い出した。
 残ったオレンジ色のソーダを乾いた蝉の死骸にかけた
 空き瓶は道端に捨てた
 余計に渇いた喉
この部分は実に印象的で、全体としてやりたいだろうことは解るけれども、理性的な狂気が完全な揺らぎを産めないでいるのではないか、という意見がありました。どんどん書いていって欲しい、手前の詩ではなく先にある詩をいつか描ける作者なのではないか、という意見もありました。

3132 : jazz  5or6 ('08/11/08 10:17:14)  
jazzを聴きたくなるような文章じゃなかった、という感想がなにより的を射ているとおもう、人生のなかにあるjazzの片鱗を、ほぼエピソードに頼っているという印象だ、そこからグチという感想がうまれてしまうようにも思える、という意見がありました。方向性は買うので、ここから数歩踏みこんで、作中に泥臭く心地よい波を起こしていくことを期待したい、という意見もありました。ダサい男性って感動してしまう、文章として、領域の詩作品として、拙い比喩なども引っかかる部分もあるけれども、それは二の次にしても良いのかもしれない、という意見もありました。

3119 :  言葉のない世界に  殿岡秀秋 ('08/11/01 07:47:07)  
圧倒的に見えない、予感するだけの、他者との寄りそい、それがある、という意見がありました。人との関わりにおける本質がここにはあり、この詩から膨らむものは非常に大きいが、ともすれば無難に読まれて終わってしまう言葉たちだとも思う、なにより作者の意図はそこまで伸びてはいないだろうし、仮にそうであればまったく違う書きかたをしているだろう、「予感するだけ」、けれどそうやって闇のなかで人は人と寄りそうものだ、優良に推そうか最後まで迷った、という意見もありました。「語るのではないか」と仮定的な書き方が作品世界を狭めているように感じる、比喩は決して手つかずなものではなく、多く使われてきたものなので、どこかで断定していくものが欲しく感じる、それを除けば書いていく紡いでいく合間合間の内実がどれも良質で爽快に思える、という意見もありました。

3139 : 団欒  ともの ('08/11/10 14:34:45)  
相変わらずユニークな書き手だと思う、ただ、メリハリがなく、バランスも良いわけでもない、今回の作品には、どっちつかず、という印象が拭えない、という意見がありました。作者はおそらく、言葉としての洗練よりもこういう、どこかギコギコとしながら核心に矢を向けるような紡ぎかたが合っていると思う、悪くない、という意見もありました。ところどころセンスが光っている、繋いでいく点と点も良いけれども、最終着地点を最初から決めていて、どんなに脱線してもそこへと戻しているような勿体無さがあり、狭い作品に感じる、という意見もありました。

3149 : 「 蛇。 」  PULL. ('08/11/14 09:46:40)  
力作だけれども、ちょっと収拾がつかない、乱れが面白みに繋がっていくわけでもない、という意見がありました。「そしてざらさらとしたわたしからだの中の様子を、」の部位だけ文章が乱れているように思えて戸惑った、あまり目新しくはないが、凡庸な位置にもある場所から書かれているものだが、丁寧に書かれている繊細さが内在していると思う、という意見もありました。粘度を保ったまま、全体的にもうすこし引き締めていい、斬新ではないがより高めたものを彼の言葉で再度読みたいとも思う、という意見もありました。

3176 : ダッチガール  koe ('08/11/29 08:53:26)  
放ち方が立っている、見せ方に再考が必要かもしれない、という意見がありました。

3156 :  八十八夜語り ー秋小寒ー  吉井 ('08/11/18 19:14:55 *2)  
とてもキッシュにまとめられている輝く作品だと思う、連作の一つとしてみた場合は浮いていて、そこが気になる、しかしこういう取り込み方はなかなか出来ない、という意見がありました。

3154 : 青い葡萄  小禽 ('08/11/17 08:30:09)  
には、良い短詩だと思う、さらなる成功へと狙いを強く持ってほしい、濃くも淡くも策定が中途半端な部位を再考して欲しい、という意見がありました。

 乾いた靴がまた濡れ始める頃
 少女はもう一度溜め息をついた
 外では雨が降り続いている

 柔らかな毛布が本当に好きで
この部位をもう少し高められなかったか疑問だ、けれども上手くまとまっている、という意見もありました。古いつくりで、伝統的なつくりで、寓意性を拡げていて、それはこれからをも予感させる上手さだとも思う、ただ、
 青い葡萄
この一番大切な部分を古くからある、あるいはあまりにもありきたり過ぎるどうしても過去既にあったあり過ぎた比喩としか言いようがない言葉で済ませてしまった点は大きな問題に感じる、作者自身で考えた言葉ならもったいない、という意見もありました。

3141 : そら  水瀬史樹 ('08/11/10 17:10:58)  
構成も、描写も、特に面白みはないけれども、無駄なくモチーフを伝えている点を評価したい、という意見がありました。作品を鑑賞する際に「鮮やかな安堵」を求める一つの主観が存在を高めることがあるが、そこへの提示として意味があるように思える、という意見もありました。
 かたちをうしなっちまった
ここに、ユニークで、可能性を秘めた角度でのモチーフの掴み方がある、しかし、その試みが実っているかどうかについては未完成だと言わざるを得ない、という意見もありました。作者は発想が少し凡庸なので、そこから動くものをもう少し考慮する必要があるように感じる、この作品は子どもが飽きないように読める感触に手をつける、ともっと味が出てくるのではないか、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3133 : 雨の波紋  丘 光平 ('08/11/08 21:44:28)   
 舌のうえで
に振り返させられる強度があります。最終連の余波はまとまりすぎているような気もします。一連二連を受けての三連のあり方もタイトルと共に伸び上がるあり方をもっと探せたようにも感じます。
秀逸な描写もありますが、飛躍が結実していないようです、という意見もありました。
言葉ひとつひとつの強度を、作者にはあえてもっと求めたい、作者としては推敲の余地はどこにもないくらいに、すでにギリギリと書き詰めていることが、もう書き切っていることはわかるし、他者との感覚その差異を確認する意味での投稿のような意思さえ伝わってくる、けれども、そこまでの完成が、読み手の手応えには必ずしもならない、二連目の氷の比喩ふくめて(四連での覚醒に直接関わる重要な連に思える)、ここは作者の美意識……心象風景からソネットという形へのこだわりまで……が読み手と共有しうる範囲内か、あるいは強く香るものであるか、という点にかかってくる、「庭の遠さに/雨は寄りそう」という表現は、とてもよいと思う、三連以降の語句には前半二連の流れを、言葉の選択として若干汲み切れていないようにも感じる、一気に無難になっているように感じる、本当に美しい、推したい、と思わせるにほんの一滴足りないもどかしさがある、という意見もありました。

3159 : 淀み、流れ  やす ('08/11/24 04:07:54)  
2連目は良い、1連目の「太陽」や3連目の「街」などは言葉以上に余計な距離感を生ませてしまっていると思う、惜しい、という意見がありました。もっとつき詰めていい、テーマは買いたい、という意見もありました。

3130 : 友達  笠原 秋人 ('08/11/04 18:29:43)  
生きるとはかつての自分との剥離、別離であるとおもう、がんばって脳内風景を辿っているのがわかるが、再読すると少々自己完結の感が否めなかった、という意見がありました。成功はしていないが、空気は生まれている、という意見もありました。

3128 : 蟻  寒月 ('08/11/04 12:26:14)   
「困ったじんるいである」が蛇足にも思えたが、それほど失敗ではないかもしれない、という意見がありました。

3127 : 頭ガ痛イ。  あらいらいら ('08/11/03 16:21:55 *1)
構成は良いかもしれない、文語調の言い回しはこの作品にそぐわない気がする、という意見がありました。

3172 : ハイツユカリだとか、中町コーポだとか、なんだかそんな感じの名前のついたアパート  リヅ ('08/11/28 23:40:45) 
悪くない、ただ詩の場合こういうものはプロット臭から抜けだすのが難しいかもしれない、ショートショートタイプだと思う、という意見がありました。

3158 : ブタのように生きろ  5or6 ('08/11/21 10:08:31 *7)  

3123 : 蜜柑粥  ゆえづ ('08/11/01 17:14:53) 

3174 : 降るコンクリート、夏の  滝沢勇一 ('08/11/29 00:22:18)   

以上です。

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月間訂正(Canopus (角田寿星)さん申し訳ありません)

2008-12-25 (木) 00:25 by 文学極道スタッフ

Canopus (角田寿星)さんの「狙われた街/狙われない街(メトロン星人)」が、私のケアレスミスで佳作から抜けていました。
Canopus (角田寿星)さん、閲覧者各位、申し訳ありません、深謝。

ダーザイン

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11月分月間優良作品、次点佳作作品について

2008-12-23 (火) 12:24 by a-hirakawa

申し訳ないです。平川のミスで一作品、アップされていません。
次点に後ほど追加がある予定です。

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11月分月間優良作品、次点佳作発表、投稿規定変更

2008-12-22 (月) 15:10 by 文学極道スタッフ

11月分優良作品・次点佳作発表になりました。

近日中に投稿規定が改められます。投稿掲示板の外部に誘う作品の投稿は一切認めない、採点・評価の対象となることをよしとしない作品の投稿も許可しない、というような内容になると思います。

田中名義のコラボレートハイパーリンク作品についてですが、優良該当点数を出していたかもしれませんが、選外とさせていただきました。投稿後に改変が行われ、著者たちからも辞退する旨の連絡を頂きました。あの作品はこの掲示板上では新しい試みであり、運営上の問題がひとつ明らかになりました。文学極道のサーバーの外部にあるものは可変であること、際限もなく長い物を読まされる可能性があること、不正の手段になりうること、セキュリティー上の問題などです。あの作品の件で、著者たちを責めるものではありません。以後も引き続き、通常の投稿をお願いいたします。

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10月選考雑感

2008-12-06 (土) 16:39 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございます。

今月は、

3073 : 眠り(a)  疋田 ('08/10/08 03:51:15 *4) 

3106 : Trick or Treat?  黒沢 ('08/10/28 23:55:36) 

3116 : ムルチ(『帰ってきたウルトラマン』より)  Canopus (角田寿星) ('08/10/31 23:16:40)    

3054 : カナブン  如月 ('08/10/01 16:16:13 *4) 

3082 : gloom  5or6 ('08/10/13 14:41:14)   

以上、五作品が月間優良作品に選出されました。

3054 : カナブン  如月 ('08/10/01 16:16:13 *4) 
は、今月一番美しい作品で印象的だった、という意見がありました。また、もう一歩進んで文学史に残るような傑作に仕上がる可能性が残されているように感じる、しかしその未完成的な部分が味でもあり、奥行きを作り出している、という意見もありました。本当、作者の成長には驚かされるばかりです。

3082 : gloom  5or6 ('08/10/13 14:41:14)   
は、粗もあるけれども、それを上回るだけのエネルギッシュさと覗く実力が魅力ある、という意見がありました。ストーリーはとても良く、そこへと引き込む写実や感覚も鋭敏だが、「格好悪くてもバカにされても生きていけばいい」このような直情を何度も出してしまうことが何度も読みたくなる上での楽しさを削いでしまっているのではないか、実存的だが、露出し過ぎの塩梅に感じる、という意見もありました。これから先が確かにある作品だ、という印象を選考委員一同、持ったようです。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3060 : 島の女  ミドリ ('08/10/02 19:20:38 *3) 
は、小さくも良い作品で、女も風景のように描かれている、それがとても印象的な作品だ、という意見がありました。内側を時折混ぜるので、奥を見たい欲求を確かに叩いてきています。それ以上の情感を盛るだけの余裕というか隙間というか猶予というか、遊びが、もっとあっても良いのではないか、という意見もありました。このままでも十分楽しめるけれども、もう少しシャープになれば実存大賞を取った作者の実力が活かされるのではないか、との意見もありました。笑顔で、すかしっぺの達人、と言いたい、との意見もありました。

3096 : クマの名前はヘンドリック  ミドリ ('08/10/22 17:31:13)
は、作者のいつものこのスタイルの詩とは少し違い、静謐な時間と空間が描かれている、という意見がありました。上手く、軽く、背後もあるけれども、その上で読み返していく折り重なりが足りていないのではないか、という意見もありました。

3097 : 失語  fiorina ('08/10/23 21:03:09) 
美しい作品です。前菜のようでその実、何度も振り返る引力を持つだけの強度を持った作品です。初めに放たれた読後が触手を分けて幾筋もの光を作り出して、失語、とタイトルが背離を孕んでいる部分もよいのだと思います。高潔な文章の裾野を広げ、咀嚼し尽くす世界観を織り込んでいっても良いのではないか、読後の足りなさが気になる、という意見もありました。

3074 : (無題)  マキヤマ ('08/10/08 17:51:17 *6)
は、場の空気から独立しても強度を維持できるだけの負からのエネルギーが渦巻いている作品だ、という意見がありました。

3110 : 夜中に娘がひどく咳き込み  yaya ('08/10/30 09:43:26 *1) 
愛や本能も生活には負けてしまうものです。奥深くに書かれているものは喪失していく自分を喪失していく感情の鈍磨の嘆きにまだ気づいてしまう鈍感になりきれない寂しみ、に感じます。文体より情感より内容の詩情が良質だ、という意見がありました。悪くはないけれども、リアルという事柄もシュールリアルやSFや妄想に照らし出されて現成することがある、身辺雑記を超えるものがあるのかどうか、作品の泥臭さをもう少しだけ考えていく必要があるのではないか、という意見もありました。

3091 : 朝の路傍で  丘 光平 ('08/10/20 11:47:09)
は、時間を描き出すことに長けた筆致です。三連目の奥行きをもう少し出しても良かったのではないか、朝や明るさが勝りすぎて暗い部をはっきりと浮きたてられなかったのではないか、小ささをより小さく作品へと与えてしまったのではないか、などの意見がありました。一連目と最終二行が素晴らしい、ただし作者の別の側面も作品から読んでいきたい欲求に駆られる、などの意見もありました。

3092 : めくるめく角質  ゆえづ ('08/10/21 00:32:35) 
文章が汚い、という意見もありました。粗い部位、効果的とは言いがたい部位、目につくが、それも味なのではないかと思えてくるほどに奥に潜む情感が、かすむことがない先を感じさせる作品だ、という意見もありました。個人的に、豊かな繊細さで生活を捉えている詩情を作品で高めていくことが出来るだけの作者だと感じました。どんどん書いていって欲しいと思います。

3079 : こことよそ  ぱぱぱ・ららら ('08/10/11 02:05:55) 
面白さもあるし、りあるってのはこんな物だろう 、という意見がありました。とても軽い作品で、深いテーマを扱おうとして扱えなかった感がある、という意見もありました。

3068 : 括弧の中が遺書です。  S. ('08/10/06 17:10:36)
は、意見が割れました。いい加減に書いたものを放り込んだとしか思えない、という意見もありました。縦書きにしての映え方や空白の使い方に尋常ではない上手さが光っている、という意見もありました。タイトルがこの作品を高めているかどうかについては疑問だ、()にどうしても向かう意識が情感を昇華させる部位に達せていないように押し付けてくる、という意見もありました。

3101 : 花巻  5or6 ('08/10/27 13:25:16)
は、美しい情感に満ちています。第二連、
 そこに俯いた少女を細い葉のような指で
 燃えるような思いと共に気高い少年が唇を重ね
 まだ蕾の花を守るように抱きしめていました
一行目と三行目の「ような」若しくは「ように」は要らないのではないか、短い文章に修辞上の簡単な粗が目に付くのは問題なのではないか、という意見がありました。
途中までとても良く、上質であでやかで巧みだけれども、四連の
 少年の思いが
 届いた気がしました
から急激に面白さが逃げていくように思える、それは迷いの情が負に働いてやわらかな道のりからはみ出て形をとどめなくなることから始まっている、という意見もありました。最後までもう少し上質なままでも良かった惜しい作品だ、という意見もありました。多くの粗を乗り越えて優れていると感じさせる力のある作品だ、という意見もありました。

3066 : 秋の散歩  鈴屋 ('08/10/06 00:07:20) 
眼前の切り取りから始まり内実があって眼前の切り取りで終わる、情感と実存を高めあう作者の得意なスタイルにアレンジを加えた魅力ある作品です。一行目の切り取りは吸引力があるけれども、内実の展開の遅さや古風さの中途が高まりを足りなくしてあるのではないか、という意見がありました。最終二行の冒険は成功しているけれども、全体が粗く、踏み切りの件などは勿体無さ過ぎるのではないか、という意見もありました。

3059 : ビオトープ  ゆえづ ('08/10/02 17:12:07) 
一連目と二連目に突き刺さっている陳腐にも感じられる言葉を少し取って、最終連にかけてを、もう少しだけ選んでいくと上質な作品になったのではないか、という意見がありました。まだ未完成だけれどもその向かう先が見え、そこに魅力がある、という意見もありました。個人的に、とても気になる作品でした。輪郭を曖昧にさせる塗り重なろうとも見えてくる感情がとても柔らかで魅力的に感じました。

3062 : 非詩  はらだまさる ('08/10/03 22:47:12) 
言葉の跳躍とイメージの連鎖や雑学に惑わされてしまう、返信部分の方が面白く情感ある文章のようにも感じる、という意見がありました。真剣さや、詩作品として向かいあったであろうことから伝わる情熱は飛びぬけている、という意見もありました。もう少し、隙間があっても良いのではないか、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3085 : アンニュイな空に  雨宮 ('08/10/14 10:46:57) 
良質な部分がとても多い作品です。日常のどうでも良い生活の中に細い感性が情感へと触れて詩作品としてわずかながらに立っているのだと思います。
場面転換が時間的にはとてもゆっくりとしているのだけれども思考の反射で素早くつなげていっているので、情感が多い部分をつないで、
 わたしもあの、
 空のような奥行きが欲しかった
 子供の頃から
 そう願っていた
 わたしは未だに子供であった
このように情感が少ないような削いでしまうような部分も目立たせずに書かれてはいます。
 テーブルの上にあるチラシを手に持ち
 滑らかな質感を確かめてから
 紙から翼に変えてやる
このような小さな情感が作品の等身に合っていて、
 朝の光に照らされたナイフの鋭角な反射だけを
 頭の中に持ち出して
 家を出る
最後まで堆積させていき、読後に残るものを形成しているように感じます。
 わたしの腕と手は
 翼を作れても
 翼にはなれないことが
や、前述した情感が少ない部分はもう少し言葉を選んでも良かったのかもしれません。
そしたら、もっと伸びあがれたのかもしれません。
後、
 ポケットに入れておいた
 ナイフを机の上に置いてから
では、普通の方の普通の日常での細い捉え方が面白い側面が少しだけ狂気に寄りました。前にもう少しだけ何かあっても良かったのかもしれません。
構造があるところは良いけれども、それ以上の上質さは、ないように感じる、という意見もありました。

3113 : 鳥葬  はらだまさる ('08/10/31 16:39:15) 
二連目の、
 積み藁に火を放ち、
重複が重ねる巌は効果がないのではないか、とか、三連の小ささが効果的ではないとか、最終行だけ切れが悪く余韻をかぶせられていないとか、多く疑問を感じるけれども、
 冬が勃起する
は現代俳句的でもあり、それだけで十分通用する詩がある、という意見がありました。冗長な場合が多い筆者にしてはわかり易く、且つ行間も生きており、空行や改行に語るものがある良い詩だけれども、ありきたりで強い神話のモチーフが短い作品を刺し貫いているのはきつく、膨らんでいかない、という意見もありました。作者の作品は作りこまれていて、熱量や完成度も評価すべき位置にあるけれども、奥深い感動が作品自身に少ない欠点が目立つ、という意見もありました。

3107 : 傍らに明かり  結城森士 ('08/10/29 11:05:50)  

3064 : ミュウとオムレツバーガー  はるらん ('08/10/04 03:38:12)  

3072 : 海の瞳  草野大悟 ('08/10/07 23:27:03)   

3056 : (無題)  マキヤマ ('08/10/01 18:51:15 *1)   

以上です。

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