- 文学極道 blog - http://bungoku.jp/blog -

文学極道の火は点滅する荒野の街と暗い海の彼方を越えて 光冨(みつとみ)

Posted By 文学極道スタッフ On 2016-04-03 (日) @ 22:38 In 未分類 | Comments Disabled

 ご存じの通り、文学極道は現代日本における主要詩投稿サイトの一つである。文学極道にわたしが出会ったのは十年くらい前であろう。2005年くらいか。まだ正式オープンではなく、試験的な目立たない掲示板で創始者のダーザインと知り合ったわずかな投稿者たちが、まさに革命前の盛り上がりをみせていた。ダーザインこと武田聡人は、いまはない詩学社から分厚い詩集『永遠なんてなかった』を上梓しており、また地下ネット掲示板「あやしいワールド」の有名人でもあった。いわばネット詩のアングラから生まれたのが、文学極道であった。以後、文極と略す。
 当時の主な発起人は、いとう、たもつ、石畑由紀子、Aya-Maidz.、蛍、ダーザイン、榊蔡(S.S.)であった。
 文極は本来ネタ(嘘)とマジ(真実)が交錯する世界であるはずだったが、意外と発起人をはじめ投稿者たちが真剣にとらえていて、ダーザインとみつとみ(光冨)は、その微妙な違いを認識していた。
文極の主な投稿者たちは、ケムリ、一条、りす、軽谷祐子、ミドリ、光冨郁也、コントラほかであった。
 文極は月間選考と年間選考を行う。年間選考においては、創造大賞、最優秀抒情詩賞、実存大賞、新人賞ほかを授与する。わたし自身が編集発行する詩誌「狼」13号(光冨郁也編集発行)に文学極道特集を、文極(ダーザイン主宰)と共同企画で、またうおのめ倶楽部協賛(大江眞輝主宰)にて、編むこととなった。
「狼」13号の表紙には「文学極道特集―インターネットから活字媒体へ詩を発信する―」という題で、また「詩はもっと刺激的で、面白く、感動的なものではないか。ネットからの爆撃!」と見出しが掲げられた。
「ネットからの爆撃!」という文章は、その前に行われた活字媒体詩人の野村喜和夫、和合亮一ほか各氏による「ネット詩爆撃」の反撃として意識されたものであった。
 そのころは、ダーザイン氏を先頭に反現代詩手帖、反活字媒体という旗印が鮮明であった。いわば罵倒上等、喧嘩殺法のような過激さがウリの文極であり、「芸術としての詩を発表する場、文学極道です。糞みたいなポエムを貼りつけて馴れ合うための場ではありません。」で始まり、「日頃より糞便垂れ流しのような下らないポエムを書いていない、高い志をもった皆さん、どうぞ気張ってご参加ください。」の一文で終わる自分たちこそが正当な現代詩派であると名乗りをあげたものだった。
 あのころの熱情をわたしはいまも忘れてはいない。

2005年年間各賞は以下の通りだった。
創造大賞:ケムリ 次点:一条 りす
最優秀抒情詩賞:みつべえ 軽谷祐子 守り手 丘光平
実存大賞:ミドリ 鈴川夕伽莉 光冨郁也
新人賞:コントラ
最優秀レッサー賞:ミドリ
年間最優秀作品賞:一条「鴎(かもめ)」
選考委員特別賞:
浅井康浩(いとう選)(石畑由紀子選)
声(たもつ選)
Canopus(角田寿星)(Aya-Maidz.選)
佐藤yuupopic(蛍選)
フユナ Nizzzy(ダーザイン選)

このなかでケムリ、ミドリはそれぞれダーザイン退任後、歴代の代表となった。またコントラ、浅井康浩、光冨郁也は後に発起人となった。
ここで名前を挙げた詩人たちは、活字媒体にはいかず、ほとんどが主としてネット詩にとどまっていたようだ。光冨は元々活字媒体にいたので、違うのだが。
ケムリ、ミドリ、一条らは、文極で詩を開花させた詩人たちであった。
後の平川綾真智代表代行はすでに活字媒体で活動しており、文学極道ではひとりの投稿者であった。

2006年、2007年の年間受賞作品のアンソロジーは『文学極道№2』として、文極企画発行で上梓された。以下は各賞受賞者である。

【2006年】
殿堂入り・稀代の鬼才に殿堂入りの栄誉を贈る…一条
文学極道創造大賞 
―― 新しい文学を創造した者、最もイマジネーションを炸裂させた者に
受賞…コントラ
受賞 … りす (三井 晶)
文学極道最優秀抒情詩賞 ―― 最も美しい抒情詩を書いた者に•受賞 … fiorina
受賞 … 軽谷佑子
受賞 … 中村かほり
文学極道実存大賞 ―― 人間・人生が良く描けていた者に•受賞 … まーろっく
受賞 … Canopus(角田寿星)
文学極道新人賞•受賞 … ヒダリテ
文学極道最優秀レッサー賞•受賞 … ミドリ
文学極道エンターテインメント賞•受賞 … ミドリ
文学極道年間最優秀作品賞•受賞
… ikaika 「Storywriter,Poemwriter,Songwriter,Hatenanikki」

選考委員特別賞
浅井康浩 いとう 選
T.T / みつとみ (光冨郁也) 石畑由紀子 選
丘 光平蛍 選前田ふむふむAya-Maidz. 選
葛西佑也 / riala平川綾真智 選
苺森ダーザイン 選
樫やすお (klo)ケムリ 選
* 2006年10月より選考委員に就任 (以前の選出作品一覧)

【2007年】
殿堂入り 稀代の鬼才に殿堂入りの栄誉を贈る…一条
文学極道創造大賞 
―― 新しい文学を創造した者、最もイマジネーションを炸裂させた者に•受賞 … 宮下倉庫
受賞 … りす (袴田)
文学極道最優秀抒情詩賞 ―― 最も美しい抒情詩を書いた者に•受賞 … 浅井康浩
受賞 … 泉ムジ
次点 … ピクルス
次点 … 紅魚
文学極道実存大賞 ―― 人間・人生が良く描けていた者に•受賞 … 軽谷佑子
受賞 … みつとみ (光冨郁也)
次点 … 葛西佑也
次点 … いかいか
文学極道新人賞•受賞 … 兎太郎
文学極道最優秀レッサー賞•受賞 … ミドリ
次点 … ひふみ
次点 … 菊西夕座
次点 … Canopus(角田寿星)
文学極道エンターテインメント賞•受賞 … 該当なし
次点 … ベイトマン
次点 … Canopus(角田寿星)
次点 … ミドリ
文学極道年間最優秀作品賞•受賞 … 宮下倉庫 「スカンジナビア」
次点 … りす (袴田) 「赤い櫛」
次点 … 軽谷佑子 「SPRINGTIME」
次点 … 一条 「milk cow blues」
次点 … 泉ムジ 「corona」
次点 … 兎太郎 「地蔵盆」
次点 … さちこ (藤坂知子) 「繋音」

選考委員特別賞
Ar いとう 選
ふるる 石畑由紀子 選
草野 (草野大悟) 蛍 選
さちこ (藤坂知子) ダーザイン 選
夕美 Aya-Maidz. 選
凪葉 / シンジロウ 平川綾真智 選
吉井 ケムリ 選
蝿父 望月遊馬 選
田崎 前田ふむふむ 選
はらだまさる / 午睡機械 稲村つぐ 選

あれから十年経った。コントラはアメリカに渡り、ミドリは名前を変えて、投稿を再開し、ケムリは文極から姿を消した。いとうとダーザインは沈黙をしたかに見える。榊蔡(S.S.)は小説を中心としながらも詩を書いていたが、文極には現れなくなった。
一条(彼も投稿しなくなった)と田中宏輔は殿堂入りをはたし、ケムリ代表が顔出しをしなくなってから平川代表代行が、数人のスタッフとともに文極を支えていた。
平川の勧めがあり、今回、光冨が代表となることとなった。内々の話は1年前くらいからあったが、いろいろな事情で延びてしまっていた。
文極を改革したい気持ちもあり、すこしずつより良い方向にしていくつもりである。新しいスタッフたちが協力をしてくれているので、これからも戦う力のある文極でありたい。そのつもりで、なれ合いではない、志をもって詩を書いていただきたい。それだけがいまのわたしに言えることである。すべての発起人・スタッフと受賞者・投稿者と閲覧者に感謝と敬意をもって。わたしの文極の原点は、ダーザインと榊蔡(S.S.)との出会いであり、あの狂気にも似た熱情であった。思えば、十年という年月はあっという間であったが、当時文極はネット詩の先鋭であろうとした。今現在は、ネット詩の中核でありたい。
また今後の文極の企画であるが、電子書籍として文極叢書を作っていきたい。近いうちに、受賞者・発起人・投稿者の電子書籍出版を募っていきたい。
いずれ文学極道の火はネットから発信され、リアルに点滅する荒野の街と暗い海の彼方を越えて日の出へと拡がっていくであろう。


Article printed from 文学極道 blog: http://bungoku.jp/blog

URL to article: http://bungoku.jp/blog/20160403-488.html